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25話 お菓子な殺害宣言

ザフト連邦編、クライマックス!


『――私のスカフが余所の泥棒猫に奪われないようにするために決まっているだろう?』


 『妄執の魔女』の名の通りねっとりとした感情を曝け出すゼラフ。




「もう十数年ほどは姿を隠してたっていうのに……どうしてこの国にやって来て僕の前に姿を現したんだ?」


 その矛先であるスカフ王子は毅然と言葉を返す。




「…………」


 アラファは感心する。

 おばあさん……ゼラフの雰囲気は私でも分かるくらいにヤバい。そのドロドロとした感情は端で聞いていてもキツいのに、当事者であるスカフ王子はよく耐えれて…………いや、違うわね。


 見るとスカフ王子の身体が細かく震えている。


 十数年ほど前……おそらくスカフ王子が夜になっている子供状態と同じ頃に、このゼラフと出会ってトラウマと呪いを植え付けられた。それと向かい合って平然としていられるはずが無い。


「王子……」


 誰にも聞こえない音量で呟くアラファ。何か出来ることも見当たらずただただ見守るしかない。




「まあまあかっこつけちゃって。かわいいわねぇ、スカフ」


 ゼラフは王子の震えを見抜いている。


「うるさい! 質問に答えろ!!」


「はいはい分かってますよ、スカフが求めることにはなーんでも答えてあげますからねえ。

 私がこのザフト連邦に来たのはもちろんかっこいいスカフの姿を見るためよ。もう本当に暗躍する姿かっこよくて陰から見るだけのつもりだったけど、色々話したくなっちゃってついこうして姿を現しちゃったわ」


 どこまでも自分本位でしかない理由を述べるゼラフ。


「そうか。堪えようのない馬鹿で助かったよ」


 スカフ王子はマギニスの横に出て腕を前に出して構える。




「王子」

「全く予定にも無かったけど好都合だ。ここで魔女を殺す。魔法でサポートする、頼めるかマギニス?」

「もちろん」


 マギニスもすぐに刺突を繰り出せるように構えて。




「その構え……ああ、あのときスカフと一緒にいた子供かい。震えてばっかりだったのに立派になったねえ」

「黙れ……!!」


 いつも冷静沈着なマギニスが声を荒げる。

 スカフ王子だけじゃなくてマギニスさんもゼラフと因縁が……? って見てる場合じゃ無くて。


「ちょ、ちょっと王子! 物騒ですよ、そんな――」


 アラファは王子の腕を掴んで止めようとするが。


「離れていろ、アラファ。これは僕らの問題だ」


 冷徹な声と共に振り払われる。




「ひっひっ、スカフからそんな真剣な眼差しで見られてゾクゾクしちゃうねえ」

「その減らず口もこれまでだ」

「そうだねえ、名残惜しいけどこれで終わり。元々『豊穣の精霊』の力が強いこの地で事を起こすつもりは無いのよ」

「……何が言いたい?」

「言ったでしょう、話したくなっただけって。とりあえず今日のところは満足したから――」


 ゼラフの変調に対して迅速にマギニスが動き出した。

 魔法で生み出した風に乗って高速で駆けてゼラフに対して突きが放たれるが――。


「――またね、スカフ」


 お別れの言葉を述べると同時にゼラフは、現れたときと同様にいきなりその姿が消えて、マギニスの突きは空を切ったのだった。






ーーーーーーー




 その次の瞬間のこと。


「たくさん話せて楽しかったわねえ」


 精霊祭の行われている広場からおよそ10kmは離れた森の中にゼラフの姿はあった。




「本当は今日でさらっちゃいたいくらいだったけど……いいえ我慢よ、我慢。十数年前はそれで失敗したんだから」


 感情を落ち着けるゼラフ。




「それにもう一つ収穫はあったんだから」


 ゼラフがスカフたちに語らなかったもう一つの目的。


 それはアラファだった。




「なーんかスカフがお気に入りの女の子がいるって聞いて『浮気!?』って思って調べたけど……どうやらあのお嬢さんはスカフに気が無いみたいだし」



『ほうほうその態度……まさか惚れてたりしないのかい?』

『そんなの無いですって』



「スカフの方もあんな態度だったし」



『離れていろ、アラファ。これは僕らの問題だ』



「うん、どうやらただのメイドだったみたい。早まって殺さなくて良かったわねえ」


 ゼラフは安堵する。




「久しぶりに仲良く談笑してやっぱり私にはスカフしかいないって思えたわ。色々障害はあるけど……愛なんてそんなものよ。絶対に乗り越えないとねえ」


 ゼラフは今一度自分の思いを確認して――また次の瞬間その場から姿が消えた。




ーーーーー




 場所は戻ってゼラフが消えた祭りの会場。


「後もう少しだけでも早ければ……」


 マギニス剣が掠りもしなかったことを悔やむ。 


「……それでも一歩前進だ。やっぱりやつは僕に執着したままだった。これからも追い込みと誘き出しを兼ねて活動を続けていこう」


 スカフ王子が労いの言葉をかける。




「…………」


 そんな中アラファは何も出来ないでいた。

 『僕らの問題』……って、確かに私は何も知らないけど……。




「色々と聞きたいことはあるんじゃが……とりあえずみんな無事で良かったぞ」


 デニサ村長が大きく息を吐きながら平穏を喜ぶ。


「……すまないね、ヤコブ村長。この祭りの場にふさわしくない揉め事を起こしてしまって……」


 スカフが愉快な王子モードに戻ろうとするが。


「茶化すな。それよりも今の出来事を説明してもらおうか」


 ブロスはその逃げを許さない。




「……そうだね。巻き込んでしまったみたいだし必要か。

 改めてまとめると僕は十数年ほど前あの魔女、ゼラフにより呪いを受けた。効果は夜になると子供の姿に戻るというものだ」


「子供の姿……じゃと?」

「そうか……だから『真昼の王子様』……」


「神出鬼没のゼラフを追い詰めるためには王国だけの力では足りない。各国の協力が必要だと思った。だからその一歩として今回ザフト連邦と国交を結んだ。

 各国連携して追い詰めてゼラフを捕らえて――殺す。

 そうしないと……僕の人生は止まったままだからね」


「殺す……」


 殺害を宣言するスカフの横顔をアラファはただただ見ているだけだった。


ザフト連邦編、完


次回から王国に戻ります。


ブクマ、評価、感想などもらえると執筆の励みになるのでよければよろしくお願いします。


新章の準備のため一週間休みます。再開は6月23日の昼頃予定。

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