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21話 お菓子な選択肢


 時を少し遡り、精霊祭前日。


「三つ目は『フルーツタルト』よ!!」


 菓子職人ブロスに教えるレシピとして三つ目の選択肢を示すアラファ。


「『フルーツタルト』ってどういうお菓子だ?」

「クッキー生地を器みたいにしてクリームを乗せてその上に色んな果物を敷き詰めるって感じよ」


 どうやらまだこの世界には存在しないレシピのようで解説するアラファ。

 フルーツタルトもアップルパイと同様にアラファの特に好きなお菓子の一つである。つまり三つ目の選択肢はアラファの趣味として上げた部分が大きい。




「色んな果物……」


 それを聞いてブロスは冷静に考える。


 アラファの様子からしてその『フルーツタルト』に自信を持っているのはよく伝わった。

 問題があるとしたら色んな果物を使っているという点。

 果物戦国時代のザフト連邦でそれをするということは自分の村の果物に自信が無いということを表す。あいつの暴走、アップルパイを使って覇権を取りに行くことを防ぐためのお菓子なのにそれでは意味が無い。

 やはり自分の村の名産モモでアップルパイを上回るべきだと考えて――。




「私がここにある材料で作れる中で一番美味しい自信があるわよ!!』

「……っ」


 無邪気に言ったアラファのその言葉が刺さった。


 そうだ、考え方が歪んでいた。


 覇権を取るためだとか、アップルパイを上回るとか……どうでもいい。

 お菓子はお菓子だ。そこに勝手に人間がごちゃごちゃと思惑を乗っけて……そうじゃないだろ。

 祭りの当初の理念からしてそうだ。精霊への感謝を伝える場だ。争いをする場所じゃない。

 だったら俺が作るべきお菓子は一つ。みんなにおいしいと思ってもらえるお菓子だ。




「三つ目の選択肢で行く」


 ブロスは決断する。


「そう『フルーツタルト』で良いのね?」

「ああ。どうか俺にレシピを教えてくれ」


 頭を下げるブロスにアラファはパンと手を打って。


「よーし、じゃあ作り始めるわよ」


 そうして二人は作業に取りかかる。




「私が生地の部分を作るから、クリームの部分をお願いしたいんだけど」

「ああ、どうやるんだ?」


 アラファが教えることをグングン吸収していくブロス。

 菓子職人だけあって初めてのレシピでもコツを掴んでよくやってるわね。ノーナ後輩よりも手際が良いわ。


「昼食会でゼリーが出てたからゼラチンがどこかにあるでしょう?」

「ああ、ここだな」

「うんうん良いわね。地味に王国じゃ手に入らなかったし特務室にも欲しいわね……」

「でもゼラチンを何に使うんだ?」

「ナパージュといってね、果物に塗って艶を出すために使うのよ」

「そんな方法があるのか……」


 生地とクリームを合わせて焼いてから冷やしてその上に果物を敷き詰めてナパージュを塗りまた冷やして――。


「完成!!」

「これが『フルーツタルト』か」

「さて時間が無いし奉納品として数がいるんでしょ? じゃんじゃん作っていくわよ!!」




 そうして二人は朝方までフルーツタルトを作り続けて、現在はモモの村のスペースに立っている。




「うーん想定外ね……絶対においしいのに」


 クレーマーを追い払った後にしょんぼりするアラファ。

 『フルーツタルト』は自信作だ。食べてもらえれば絶対に満足させられるのに、そもそも食べてもらえない。

 よく分かってなかったけどザフト連邦の状況とか色々考慮した方が良かったかしら……。




「……アラファ。何をしているんだ?」


 そんなときにスカフ王子が目の前に現れる。


「あっ、王子! ちょうど良いところに! 『フルーツタルト』作ったんですけど食べませんか!?」


 アラファは早速勧めるが。


「はぁ……君ってやつは……」


 眉間に手を当て顔を逸らして大きくため息を吐く王子。

 ん? どういうことだろう。お菓子が好きな王子のことだからすぐに飛びつくと思ったのに。

 アラファが疑問に思うその横で。




「デニサ……いえ、ヤコブ村長」

「……ブロス・キーニア。そこにあるお菓子は一体どういうつもりで作ったんですか?」


 幼き頃からの仲で、今は分かたれた二人が再会を果たしていた。


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