表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/49

やめればいいじゃん。え?本気で言ってんの?


 そんなわたしも、貴族令嬢の端くれ。じつは婚約者もいる。

 この世界、だいたい、十五、六になると婚約が決められる。

 わたしの婚約者はアンディ・ブランドン。同い年の十八才。ブランドン伯爵家の跡取りだ。そこに嫁に行く。


 嫁に行って伯爵夫人としてのおつとめを果たす。

 「おつとめ」とはなんぞや。

 領地経営のおてつだい(書類や伝票の整理)とか、貴族同士のお付き合いとか。たとえばお茶会や夜会。


 へえ。

 事務仕事ならいい。若いころ営業事務やってたし。どっちかっていうと、ひとりでもくもくと作業するほうが好き。電卓叩いて集計とるとか。

 まだエクセルなかったし。


 人づきあいはなるべくご遠慮したいなぁ。

 なんかね、子どもたちが小学生のころ、子ども会とかPTAとかでのもめごとやらなすり合いやらで、すっかり人づきあいがいやになってしまった。

 

 ほら、もめるじゃない。役員決め。仕切ろうとするボスママがいたり、それの対抗勢力がいたり。「激しい舌戦」という名のケンカがあって。

 けっきょく、どのグループにも属していないわたしみたいなのが押し付けられるのだ。

 だれもわたしのいい分なんか聞いてくれない。


「仕事で時間が取れないんですけど」

「そんなこと言ったらキリがないでしょ!」

 精一杯のお断りも一刀両断。

 いや、あんたたちさっきそう言ってやらないことになったよね。

 なんで、あんたたちはよくて、わたしはダメなの。


 いかに押し付けられたといっても、やらなきゃいけないことはやるしかない。

 勝手もわからず、ほうほうのていでやっているのに、ボスママのチェックが入る。


 なんでだ。

 押し付けたくせに、ああだこうだと文句をつけてくる。

 なんでだ。

 いい訳でもしようものなら、格好の餌食になる。


「親切にアドバイスしているのに、その言いかたなんなの?」

「引き受けたんだから責任もってやりなさいよ」

「子どもたちのためなのよ」

 取り囲まれて喧々囂々。


 やってるじゃん。


 夫に愚痴れば

「たかがPTAだろう。いやならやめればいいじゃん」

 やめれないから困ってるんだよ。子どもの立場だって危うくなるし。仲間外れにされるかもしれないし。

 そんなことになるなら、わたしが我慢するしかないんだよ。

「くだらねぇ」

 夫のこの一言は、わたしの心を折るには充分だった。


 中学に行ったらなくなるかと思ったのに、今度は部活の父母会でおなじことが起きる。

 まだ続くのか、これ。


 いっそ、なくしてしまえばいいのに。毎年思った。


 そんなこんなで、人間不信というか、人間嫌いになってしまった。

 結論。

 むかしからの友だちがいれば、それでいい。ママ友なんていらん!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ