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吸血の勇者〜自分を疎んじていた家族により最凶最悪の迷宮に追放された少年魔術師は、唯一無二の職業と固有魔術の力で最強へと上り詰める〜  作者: シャイ
第二章

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第43話 今後の処遇③ —帰還—

 馬車の窓から外に視線を向けると、田んぼや畑が一面に広がっていた。

 玉ねぎや人参が植えられている。


 昨日の夜、マッテオから手紙の返事が届いた。

 直接レオの話を聞きたいということだった。

 領民を混乱させないため、レオには変装をしてきてほしいと書かれていた。


 話し合いの結果、彼にはサーナの帰省に付き従う騎士という体で同行してもらうことにした。

 彼自身の発案だった。


 ロット領からベージ領までは馬車で半日とかからない。

 朝イチで出発したので、昼ごろにはイヴレーア家に到着できるだろう。


「レオ、緊張してるっすか?」


 サーナは前に座る紫髪の少年に尋ねた。

 イヴレーア家の騎士服に身を包んでいる。

 袖が少し余っていた。


「まぁな」


 レオは短く答えた。


「大丈夫っすよ。ベニートも他のマンチーニ家の人たちも変わったし、フラさんは元より、ソフィさんや父上たちも絶対にレオのことを受け入れてくれるっすから」

「おーん……」


 サーナが励ましても、レオの表情は晴れない。

 普段の彼は緊張や不安とはおおよそ縁がないが、今回ばかりは仕方ないだろう。


 生還した以上はマンチーニ家に顔を出す必要があるが、侍女のフランチェスカ以外の人間は保身のためにレオを切り捨てた者たちばかりで、ベニートに至っては監獄迷宮に追放した張本人なのだ。

 気分が乗らなくて当然だろう。


 しかし、それだけではないとサーナは確信していた。

 彼の表情が曇っている一番の原因はおそらく、吸血の勇者の力だ。


 彼はその大きすぎる力を制御できていない。

 自らが危険な存在だと誰よりも自覚している彼は、皆に受け入れてもらえるか心配なのだ。


 レオはよく、能天気だの自由奔放だのわんぱくだの能天気だのと言われる。

 サーナもその通りだと思う。


 しかし、そういう人間はえてして案外もろいものだ。

 暴走した直後、自分が生きてはいけないと思った、と言っていた。


 自分がちゃんと彼のことを見ていてあげなければ——。

 ぼーっと窓の外を眺めているレオの横顔を眺めながら、サーナは密かにそう決意した。




 表向きはサーナの帰省なので、堂々と正門からイヴレーア家に入った。

 騎士団副団長のエドアルドが出迎えた。

 チラリとレオに目を向けたが、何も言わなかった。


 屋敷に入ると、他の騎士や付き人とは別行動だ。

 サーナとレオはエドアルドに連れられ、小会議室に足を踏み入れた。


 中には四人の男女がいた。

 マッテオ、ピエトロ、ニコロ、ソフィ。

 事情を知る重鎮(じゅうちん)勢揃い、といったところか。


 サーナに続いてレオが姿を見せると、彼らは一斉に息を吐いた。

 いくら情報として知っていても、いざ実際に彼を見るとこみ上げるものがあったのだろう。


 ソフィが立ち上がり、ゆっくりとレオに近づいた。


「お帰りなさい、レオ君。私はもう少し早く帰ってくると思っていましたよ」

「それはさすがにきちぃな」


 レオが苦笑した。

 少し肩の力が抜けたようだ。


 一つ笑いが生まれたことで、場の空気も軽くなる。

 さすがはソフィだ。


「いや、でも本当によく帰ってきてくれた。パオロも喜ぶだろう」

「ご無事で何よりです」

「えぇ、本当に。まさか監獄迷宮から生還なさってしまうとは……」

「先程お姿を拝見したとき、思わず声が出そうでした」


 マッテオ、ニコロ、ピエトロ、エドアルドが次々と声をかけた。


「何かいろいろ心配とか迷惑かけちったみてーだな。すまんねぇ」


 レオが頭を掻いた。

 ニコロやマッテオがいるこの場では、彼は本来なら敬語を使うべき立場だが、そんな今更なことに触れる人間はいない。


「まぁ座ってくれ。レオ君も、サーナも」


 マッテオに勧められるまま、並んで腰を下ろす。


「それぞれ積もる話もあるだろうが、それは後にしよう」


 マッテオが居住まいを正した。

 全員の顔が引き締まった。


「早速レオ君に話を聞かせてもらいたいところだが、その前に一つだけ伝えておくことがある。レオ君、今後の君の処遇については、ひとまず様子見ということが決定した」

「……えっ? 詳しい話を聞かねーでいいのか?」


 レオが眉を寄せた。

 意外に思っているのだろう。


 サーナも同じ気持ちだった。

 マッテオたちは情に厚いが、同時に情に流されずに冷静な判断ができる人たちだ。

 詳しい話を聞いてから今後の方針を決めるのだろうと思っていた。


「我々としてもそうするつもりだったが、昨日、そういう命令が出されたんだ。国防軍最強魔術師の呼び声高いガブリエーレ様から」

「げっ」


 サーナは顔をしかめた。

 ガブリエーレとは緘口令(かんこうれい)を出してきたときに顔を合わせている。

 いけ好かない、横柄な男だった。


「そんな顔をするな、サーナ……そういうわけで、我々の方針はすでに決定している。だからと言うわけではないが、すべて包み隠さず話してほしい。我々としても協力は惜しまない」


 マッテオの言葉に全員がうなずいた。


 サーナはレオの背中に触れた。

 視線が交差した。

 うなずき合う。


 深呼吸をしてから、レオは口を開いた。

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