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吸血の勇者〜自分を疎んじていた家族により最凶最悪の迷宮に追放された少年魔術師は、唯一無二の職業と固有魔術の力で最強へと上り詰める〜  作者: シャイ
第二章

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第38話 未知なる敵

「サーナちゃんっ……!」


 グズる少女の頭に手を置き、サーナはその大きな瞳を覗き込んだ。


「大丈夫っすよ、ファビア。またすぐ来るから」

「ホント……?」

「ホントっす」

「約束だよ?」


 ファビアが小指を差し出してくる。


「はい。約束っす」


 自然と笑みを浮かべながら、サーナは自分の小指をからめた。


「気をつけるんだよ」

「お姉ちゃん、じゃーねー!」

「また来いよー!」

「バイバーイ!」

「ホントにまた来てねっ!」


 村長のエミリーと、ちょっぴり生意気だがそこも含めて可愛らしい子供たちに見送られ、サーナはカリパ村を出た。


 レオが監獄迷宮に転移してから三ヶ月、サーナがページ領を出てロット領に来てから二ヶ月半ほどが経つ。

 サーナはAランクになっていたが、相変わらずカリパ村の依頼は受け続けていた。

 ゴブリン退治とその後の子供たちとのじゃれあいがワンセットだ。


 人によっては時間の無駄だと思うかもしれない。

 サーナだって焦る気持ちは(つの)るばかりだ。


 しかし、サーナにとってカリパ村は安息地であり、精神安定剤だった。


 また来る、というのも嘘ではない。

 近々、また訪れるつもりだ。


 しかし、次にカリパ村の地を踏むのは、少なくとも半月は先のこと——

 の、はずだった。


 背後で甲高い悲鳴が聞こえた。

 サーナは振り返った。


 ファビアが、地面に仰向けに倒れていた。

 その胸には水色の矢が突き刺さり、溢れ出た血液が服を赤色に染めていた。


「……はっ? ——ファビア!」


 結界でカリパ村の皆を囲ってから、全速力で村に駆け戻った。


「ファビア⁉︎」

「ファビアちゃん⁉︎」


 エミリーが、子供たちがファビアに声をかけるが、大きな瞳が彼らを見つめ返すことはなかった。

 サーナが戻るまでのたった十数秒の間に、赤色の面積は着実に広がっていた。


 足音が聞こえる。


 見たことのない生き物だった。

 全身が水色で、人のような形をしている。


「外……した」


 サーナは息を呑んだ。

 ——今、あの人のような見た目のやつがしゃべった? 聞き間違いか?


「老いぼれ、狙った。外した」


 ——違う。


 その人型の生命体は、明らかに人間の言葉を発していた。

 その水色の瞳はエミリーを見ていた。


 サーナは彼女を背に隠しつつ、APD(エーピーディー)に触れた。


「何者っすか」


 相手の黒目が、サーナの全身を舐めますように行き来する。


「俺、わからない。けど」


 その口元が、ニヤリと孤を描いた。


「嬉しい。洞窟、退屈だった。けど、お前、強い」


 その手がサーナに向けられる。

 矢が飛んできた。

角状結界(シールド)】を貫通した。


「なっ……⁉︎」


 咄嗟に回避行動をとったこと、そして結界で勢いを殺せていたことにより脇腹をかすめるだけで済んだが、衝撃は大きかった。


 今の【角状結界】は決してヤワなものではなく、魔力もしっかり込めていた。

 矢は貫通力に優れるが、それでも突破されるとは思わなかった。

 簡単な魔術を使える魔物ならいるが、ここまで高性能なものは聞いたことがない。


 しかし、その正体を推察している余裕はなかった。

 すぐに次弾が飛んでくる。


 サーナは回避を選択した。

 受け止めるためには相応の【角状結界】を生成する必要がある。

 魔力消費の観点から、避けられるものはすべて避けたほうが良い。


 横に跳び、着地と同時に走り出した。

 すでに【身体強化(アクセラレート)】は発動している。


 一気に距離を詰め、【並魔剣(クレセント)】で斬りかかった。

 高性能の魔術を使えるということは、肉弾戦はそこまで得意ではないのだろうと予想しての攻撃だったが、


「なっ⁉︎」


 あっさりと腕で受け止められた。

 その太さは見かけ倒しではなかったのだ。


「お前、強い!」


 拳がみぞおちに迫ってくる。

 ギリギリのタイミングで【魔鎧(アーマー)】を発動した。

 衝撃により後方に吹っ飛ばされるが、魔力の(よろい)で体を包んでいたため、ダメージは最小限に抑えられた。


 体制を立て直す間もなく、矢が飛んでくる。

 横に跳ぶが、再び脇腹をかすめた。


「ちっ」


 思わず舌打ちがもれる。

 遠距離も近距離も上回られている。


 サーナはAランクだが、Aランクの魔物に苦戦を強いられた記憶はほとんどない。

 この人型生命体がSランクレベルであることに疑いの余地はなかった。

 もしかしたらSSランクかもしれない。


操縦弾(ドミネーション)】を放つ。

 防御しようとした腕に当たる直前に軌道を変え、後頭部を狙う。


 虚をついた攻撃だったはずだが、巨体に似合わない俊敏(しゅんびん)な動きで回避された。

 魔力の塊が地面に衝突し、クレーターを作る。


「お前、面白い!」


 矢を放ちながら迫ってくる。

薄円斬(スラッシュ)】を生成した。


「むっ?」


 途中で斬撃性が高いことに気づいたのだろう。

 防御しようとしていた腕を引っ込め、人型生命体は回避した。

 ちっ、顔をかすめただけか。


 畳み掛けるように【薄円斬】を放つ。

 それ以上のダメージを与えることはできなかったが、距離を取らせることには成功した。


 チラリと後方に視線を送る。

 エミリーと子供たちの顔には不安や焦燥が浮かんでいた。

 エミリーの腕の中にはファビアがぐったりとしていた。


 サーナの中から焦りや怒りがスッと消えていく。

 固有魔術【自己支配】により、彼女の意識は目の前の敵を速やかに排除することだけに向けられた。


 生半可な攻撃で倒せる相手ではない。


「——こっちも相応のリスクは背負う必要がありそうっすね」


 サーナは剣をオーソドックスな【並魔剣】から、強度を自由に変えられる【汎魔剣(ブロード)】へと持ち替えた。




◇ ◇ ◇




 ※サーナが攻撃的になったことでダメージ与えられるようになったけど、サーナもまた傷が増えるように。最後はサーナの奥の手の【操縦薄円斬】を皮一枚で避けられ万事休す?


 人型生命体の攻撃がサーナを襲う。

 結界で防ぐが、その表情に余裕は感じられない。


 サーナの全身はすでに傷だらけだった。

 致命傷は避けているのだろうが、多少の傷は負ってでも相手にダメージを与えることを優先しているのだ。


 その甲斐があって人型生命体にも細かい傷は増えているが、サーナの旗色が悪いのは戦闘経験のないエミリーの目にも明らかだった。

 おそらくは地力に相当な開きがある。


 本当は逃げてほしかった。

 サーナはこんなところで死んで良い器じゃない。


 それでも、エミリーの口から「逃げて」という三文字がついて出ることはなかった。


 今さら、若者を犠牲にしてまで生き延びたいなどとは思わない。

 それでも、肌を寄せ合っている子供たちのことを考えると言えなかった。


「お前、強い。楽しい!」

「くっ……!」


 言葉通り、テンションが上がっているのか、敵の攻撃はどんどん鋭さを増すばかりだ。

 息つく暇もない攻撃で、サーナのバランスが崩れた。


 その隙を逃さず、敵はサーナのみぞおちを蹴り飛ばした。

 後方に吹っ飛ぶ。


「お姉ちゃん!」

「サーナちゃん⁉︎」

「だ、大丈夫っす」


 サーナはすぐに立ち上がった。

 人型生命体の足止めをしつつ、こちらを振り返った。


「あいつは、必ず私が倒すっすから」


 そう告げるサーナの瞳には、強い覚悟が宿っていた。

 格上だというのに、人型生命体のことをまったく恐れていなかった。

 頼もしいはずなのに、エミリーはなぜか危うさを感じた。


 サーナが【汎魔剣】を片手に人型生命体に向かっていく。


「神様……!」


 どうかサーナちゃんを助け、ファビアをお救いください——。

 エミリーがそう願う眼前で、サーナが再び吹っ飛ばされた。

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