表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血の勇者〜自分を疎んじていた家族により最凶最悪の迷宮に追放された少年魔術師は、唯一無二の職業と固有魔術の力で最強へと上り詰める〜  作者: シャイ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/84

第25話 監獄迷宮での生活⑧ —元気でな—

 ——なら、キアーラの想いとか感情って、なんなんだ?


 レオの不躾(ぶしつけ)ともいえる質問を、ミアはたしなめなかった。

 キアーラを成仏させるには、必ず聞き出さなければならないことだったからだ。


 霊は、本来なら現世に存在してはいけない。

 この世のものではないそれらは、存在するだけで世界のバランスを崩す。


 世界のためにも、そしてキアーラ自身のためにも成仏してもらう必要があった。


 それは理解しているのだろう。

 キアーラは特に気を悪くした様子もなく答えた。


「私には心残りがあります。あの怪物ともいえる生命体の存在を世間に知らせること。そして、逃げ切れなかったことを仲間に謝罪すること。けど、後者はもういいんです」


 キアーラは少し寂しげに笑った。


「仲間には向こうでしっかり謝りますから……お願いしたいのは前者なんです。どうか、私たちが全滅する、勇者アレッシオが負けるほどの存在がいたということを世間に伝えていただけませんか?」

「わかった」

「えっ?」


 即答したレオに、キアーラが目をぱちくりさせた。


「ん? 俺、なんか変なこと言ったか?」

「い、いえ、そんなことはありませんけど……」


 キアーラが口ごもった。


「俺はどっちみちこの迷宮を出るからな。そんときに、やべぇやつがいたって皆にいえば良いんだろ?」


 簡単に言ってのけるレオは、自分が監獄迷宮を抜け出せることを確信しているようだった。


「ま、まぁ、そうですけど……でも、この迷宮からの脱出はそんなに簡単じゃありませんよ?」

「わかってら。ここまでに五層以上は登ってきてっからさ」

「……えっ?」


 ミアとキアーラは思わず顔を見合わせた。


「ちょ、ちょっと待ってレオさん。それって、ここより五層以上も下にいたってこと?」

「あぁ。しゃべるヒュージ・リオンとかいて、結構キツかったぞ」

「結構キツかったぞって……」


 ミアは、思わず目の前の少年をまじまじと見つめてしまった。


 キアーラも二の句を継げないでいる。

 監獄迷宮の恐ろしさを知っている彼女だからこそ、余計に衝撃が大きいのだろう。


「……もしかしてレオさん、【第一の扉(ファースト・トリガー)】を解放できるんですか?」

「あぁ」


 キアーラのおそるおそるといった問いに、レオはあっさりとうなずいた。

 元勇者パーティーの少女は、口をあんぐりと開けて固まった。


 しかし、ミアは驚かなかった。

 彼が【第一の扉】を解放する瞬間を目撃していたからだ。


 ……ん? ちょっと待てよ。


「れ、レオさん」

「ん?」

「レオさんって、戦うときにはすでに【第一の扉】を解放していたよね」

「おん」

「で、途中からもう一つギアを上げたよね」

「おん」

「……もしかして、あのとき【第二の扉(セカンド・トリガー)】解放してた?」

「おう」


 レオはあっさりと肯定した。


「マジか……」

「信じられない……」


 今度こそ、ミアとキアーラは絶句した。




◇ ◇ ◇




「レオさんの髪色ってさ、【第二の扉】解放するとき毎回水色に変化してんの?」

「えっ、髪色変わってんの?」

「……まさか、気づいてなかったの?」

「人前で使うことなんかほとんどねーからな」

「いや、前髪で気づくでしょ。目の上まで伸ばしているんだから」

「あっ、そっか。ミア頭いいな!」


 漫才のような掛け合いを聞いて、キアーラはようやく冷静さを取り戻した。

 そういえばアレッシオも髪色が水色に変化してたな。

 子供心を散々くすぐられたものだ。


「にしてもなんで色が変わるんだ?」

「知らないよ。私、【第一の扉】も解放できないし」

「……えっ?」


 キアーラはミアをまじまじと見つめてしまった。


「えっと……どうしたの? キアーラちゃん」

「み、ミアさん。扉を解放できないんですか?」

「えっ? うん」

「でも、レオさんが【第二の扉】を解放する前までは自然に連携できていたんですよね?」

「おう」


 レオがうなずいた。

 キアーラが彼に向かって尋ねたからだ。


「ということは、ミアさんは【身体強化(アクセラレート)】だけでレオさんの【第一の扉】と同じくらいの実力を出せる……ということですか?」

「あっ、そうじゃん。すげーな、ミア!」

「い、いや、私は結局なにもできなかったし……」


 ミアが頭を掻く。

 照れているようだ。


「信じられない……」


【第二の扉】は、歴代最強の呼び声も高かった勇者パーティーですら、勇者アレッシオしか届かなかった領域だ。

 それを解放できるレオも、そのレオの【第一の扉】解放時に【身体強化】のみで匹敵するミアも、どちらも規格外という他ない。


「ま、そういうわけだから、やべぇやつに遭遇しねえほうが良いんだろうけど、万が一戦うことになってもなんとかなるさ」


 先程と異なり、レオが優しい手付きでキアーラの頭を撫でてくる。

 子供扱いされているようで不服だが、同時に安心感を覚えていることもキアーラは自覚していた。


 レオがアレッシオより強いのかどうかはわからない。

 それでも、安心した。


 この人ならあの怪物に勝てるかもしれない。

 そう思えた。


 その安心感と信頼は、勇者アレッシオに抱いていたものとは別種のものだった。


 アレッシオにも絶大の信頼を置いていたし、安心して命を預けられた。

 だが、それは人間性を含めてのもの。

 彼は自分の強さも弱さも知っていたし、だからこそあの一瞬でキアーラを逃す判断ができた。


 対して、レオは自分が負けるなどとは考えたこともないだろう。

 真の強者しか持ってはいけない傲慢(ごうまん)さ。

 それを、レオから感じた。


 体が宙に浮くような感覚を覚えた。


 ミアが髪と同じオレンジ色の瞳を見開いた。

 端正な顔が(ゆが)む。


 キアーラは視線を下げた。

 元から透けていた体がさらに薄くなっていた。


「どうやら、そろそろ時間みたいです」


 レオとミアに向かって深々と頭を下げた。


「改めて、本当にありがとうございました。お二人なら必ずここを出られると信じています」


 二人がなぜ監獄迷宮にいるのかは知らない。

 それでも、こんなところで野垂れ死ぬタマではないだろう。


「私が言えたことではないですが、どうか死なないで。健康で長生きしてください」

「おう、お前も元気でな!」

「げ、元気でね?」


 キアーラは吹き出した。

 死人に対する別れの言葉ではないだろう。


 最後に、この人たちに出会えてよかった——。

 暖かい気持ちになりながら、キアーラの魂は消滅した。

「面白い!」「続きが気になる!」と思った方は、ブックマークの登録や広告の下にある星【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくださると嬉しいです!

皆様からの反響がとても励みになるので、是非是非よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ