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能力と妖力(4)

「これは茨の道だよ。一度進めば、もう戻れない。この道は文字通り、生き地獄かもしれない。それでも、この話の続きを聞くかい」


 溢れんばかりの威圧とともにユキから成された提案は、伊佐薙の夢を叶える第一歩でもありながら修羅への入り口でもあったのだった。


 依然として目の前でちょこんと座っているチワワの姿をした那肋も、目を逸らすことなくまっすぐ伊佐薙を見ていた。その目からは"お前にその覚悟はあるのか"という問いが透けて見えていた。

 伊佐薙は耐えきれずに目線を落とした。


 ユキはその様子を見て、少しずつ威圧を解いていった。

 少し、悪いことをしたかな。彼の生い立ちを考えれば、彼が能力を強く恨むのも自然な流れだ。その感情が飛躍して"この世から能力を消したい"という考えにも行き着くのも、なんとなく分かる気がする。

 

 それを今、僕は遠回しに否定し、諦めるように促してしまった。勿論、この道が茨の道だということは嘘じゃない。この警告だって、紛れもなく彼を後悔させないためのものだ。

 しかし―――彼が本当にこの夢を叶えたかったのなら、僕がすべきだったのは彼の背中を押すことだったんじゃないか。彼の希望を断つのが正解とは言い切れないんじゃないか。


 ユキが目を細めて悔いを感じていると、伊佐薙は下を向いたまま両手を顔の前に持っていき、突然勢いよく自分の頬を叩いた。軽快な音が部屋に鳴り響き、妖怪二匹は目を見開いた。


「ごめん、少し日和った。あれだけ強かったユキから出た言葉だったからかな、説得力が段違いだった。でももう大丈夫。暗い顔してごめん」

「いや―――僕は別にいいんだけどさ」ユキは頭を下げている伊佐薙に向けて手を振った。


「俺、やっぱり能力を消したいよ。それがどんな道だろうと、俺は俺と同じような思いをする人間を、これ以上生みたくない」伊佐薙は拳を握りしめて、唇を噛みしめた。


「俺がこのタイミングで能力から解放されたのは、なにかの運命なんじゃないかと思う。ここで走り出さなきゃ、きっといつか後悔する。俺は、このチャンスを逃したくないんだ。だから頼む、ユキ。俺に道を示してくれ」


 ユキは伊佐薙の十数年の重みを改めて感じ、重たい首を縦に振った。そしてユキが口を開こうとしたとき、ユキの言葉よりも先行して低い声が部屋を覆った。


「たとえ、あのおばあとお別れすることになってもか」


 那肋は前足に力を込めた。それにより足元の掛け布団が那肋の前足に皺を寄せる。

 伊佐薙は那肋の目を見ると、次は目を逸らすことなくまっすぐ答えた。


「勿論。元より、俺が何かしらの戦いに身を投じるなら、安全のためにもおばあとは関係性を断つべきだと思ってたよ」その言葉を受けて、那肋は姿形を変えて普段通りの邪狼の姿に変化した。

「簡単に言ってくれるなよ、小童。それはお前の判断だろう。お前はあの老婆の寵愛を受けている。そのありがたみを、今お前は踏みつけにしようとしているのだぞ。己が夢のため? 大層な言葉を並べてくれるがな、私には感情が先行しているだけの発言にしか聞こえん。陳腐、そのものだ」


 那肋は憤怒を露わにしていた。これは伊佐薙をいじめるためではなく、ただ伊佐薙にこの決定の重みを分かって欲しいという一心だった。

 ようやく普通の人間になることができ、ついでに妖に対抗する手段さえも手にした。今後は妖に追われたとしても返り討ちにすることができるだろう。


 その権利を手放す理由など、普通に考えたらあるはずがない。お前はただこの家で人間として生き、人間としての幸せを享受しながら死を待てばいいのだ。


 能力がなくなったことで本当の意味で人と関わることができるかもしれないし、もしかするとここが安全だと分かった母親が戻ってきてくれるかもしれない。

 今までは能力のせいで希望が見えなかったかもしれないが、これからは希望に溢れた人生が待っているかもしれないのだ。


 それをこの人間は、一時の感情で捨ててしまおうとしている。その事実が、那肋にとって無性に心をざわつかせるのだった。


「那肋、そこまで言わなくてもいいんじゃないの。彼の人生だろ」ユキは那肋を睨んだ。

「当然、決断するのはこいつだ。それに文句はない。私はただ、落ち着いて考えろと言っているのだ。さっきまでの伊佐薙は、不意に力を手にした者が陥りがちな過ちに、足を突っ込もうとしていた。私はそれを止めたまでだ」


 那肋はユキの静止をもってしても、自らの意見を変えるつもりはなかった。

 伊佐薙は未だに黙り込んでいる。これで引き下がるのなら、やはりこの道を進めるべきではない。

 那肋がため息をついたとき、伊佐薙は落ち着いた声で話し始めた。


「那肋の言うとおりだと思う。俺だって、おばあのことは大好きだよ。妖のせいで父さんが死んで、母さんが出て行っちゃった後、おばあはそんな俺のことを常に心配してくれてたし、はちゃめちゃに可愛がってくれてた。今回みたいに服を汚して帰ってきた時だって、おばあは嫌な顔一つみせたことなかった。何も言わずに笑って出迎えてくれて、温かいご飯を出してくれるんだ」


 そう話す間にも、伊佐薙の目には涙が少しずつ溜まっていた。

 それでも声だけは震わせないように、伊佐薙は喉に力を入れた。


「それに、俺のことを愛してくれてたのは両親もそうだったんだ。おばあに聞いただろうけどさ、母さんが出て行ったのだって、所謂パニックみたいなものだったんだ。決して、妖を連れてきた俺を憎んでたとかではない。俺がそう断言できるほどに、彼らもおばあと同じくらい、俺にとって暖かい存在だった。みんなみんな、大好きだよ」


「ならば尚更―――」

 那肋が口を挟んだのも気に留めず、伊佐薙は握りしめた拳で自分の太ももを殴った。


「だからこそ! 俺は彼らと"俺のまま"接することができなかったのが死ぬほど辛かった―――! いつだって、俺と彼らの間には能力という名の壁があって、俺は大好きな人とまともに話をすることすら叶わなかった。十数年、そんな風に能力を恨んできたんだ。その大きさ、お前らに計り知れるか。想像できるか」


 伊佐薙の涙ながらの訴えに、二匹は声を出せずにいた。

 妖にとってはたったの十数年。しかし人間にとってはそれは色濃き十数年なのだろう。

 それを踏まえても、想像し得ない。それが二匹の答えだった。


「そりゃあ、他の能力者がどいつもこいつも俺みたいな能力を持っていて、同じような被害に遭っているとは思わないよ。能力だって千差万別だ。でも、昔からニュースで見かける能力者達は、誰も彼もがその能力に振り回されてる。見るからに苦しんでる。そんなニュースを見る度、俺は一人で歯ぎしりしながら思うんだ。能力なんてなくなってしまえばいいのに、って」


 伊佐薙は深呼吸して、過呼吸気味になっていた心肺機能を抑えた。

 そして改めて、決意をもって言葉を振り絞った。


「だから、俺は能力を消したいんだ。半端な覚悟からじゃない。全人類を救いたい位の覚悟で、この夢を遂行したいんだよ。これでも俺の意思が(やわ)いって言うなら、俺は自分の力だけで勝手にやらせてもらう」


 伊佐薙は自分でそう言っておきながら、自分自身の想いの強さに驚いていた。


 きっと多重面相が表に出てこなくなったからだろうな、自分の心が晴れ渡っているように感じる。無意識のうちに押さえ込んでいたような想いが、今ならそのままの形を保って自分の表面に出てくる。

 伊佐薙はそんな当たり前の感覚に、ひっそりと心を躍らせていた。


 伊佐薙が一通り言い切ると、那肋はふいっと背中を向けてその場で身体を丸めた。

 するとみるみるうちに身体が縮み、気付くとまたチワワの姿に戻っていた。


「そうか。分かった。試すような事をして悪かったな、お前の覚悟は十分に伝わった。後はユキに任せる」


 そう言うと那肋は目を閉じた。寝たわけではないだろうが、これで自分の仕事は終わり、といった表情だった。

 伊佐薙がほっとしていると、横からバトンを渡されたユキが椅子のキャスターを使って伊佐薙の近くに寄った。


「じゃあ、僕の方から茨の道の説明をさせてもらおうかな」


 息をのんで身構えている伊佐薙に反して、ユキは表情も変えずに簡単に内容を話し始めた。


「さっきも言ったように、僕らは能力を消すことに直接協力できない。これは拒否じゃなくて、不可能という意味でね。だから僕は君にある機関を紹介しようと考えてる」


 ユキは「ええっと、紙紙―――」と言いながら辺りを見渡すと、伊佐薙の机から何かの裏紙を手に取り、同時に怪訝そうな顔で隣に置いてあったシャーペンを手に取った。

 数秒シャーペンを凝視し続け、適当にベッドに置いた紙に線を引くと、要領を把握したようで紙に文字を書き殴った。


 少しして「よし」と頷いたユキは、その紙を伊佐薙の顔の前に着きだした。

 そこには"十剣神威"と汚いながらも大きな字で書かれていた。


「その組織は十剣神威(じっけんかむい)って言うんだ。漢字はこれね。この組織は、いわゆる三力奇譚専門の対処機関と言ったところかな。妖力、数式、能力。十剣神威はそれらが原因で起きた事件を片っ端から解決している。まあ、解決といっても、主に事件を起こした三力の使い手を捕らえたりする位のものだと思うけどね」


 十剣神威―――伊佐薙は記憶を巡らせた。そんな機関、ニュースでは聞いたことがない。しかも大体三力奇譚は警察が対処しているっていうのが共通認識のはず―――

 伊佐薙が顔をしかめていると、ユキが慌ててフォローを入れた。


「ああ、大丈夫。ちゃんとした機関らしいから。詳しいことはよく分からないけど、国にも認められているらしいし。(れん)とは違うから、安心して」

「煉は知ってる、あの三力狩りの犯罪組織でしょ」伊佐薙は声を上げた。


 煉―――それは言わずと知れた犯罪組織だった。三力の使い手を見るや否や、彼らはその使い手に選択を迫るという。自分たちの家族になるか、ここで死ぬか、と。

 しかし実際のところその実態は謎に包まれており、一般人からすると、その回答の果てどころか、彼らが本当に実在しているのかすら怪しいような、いわば伝説の組織なのだった。


「あれってガセじゃないんだ」伊佐薙はあからさまに驚いていた。

「うん、僕もその構成員と一回やり合ったことがあってね。煉のことはそいつに聞いたんだよ―――って、そうじゃなくて、今は十剣神威についてね」


 ユキは話の軌道を修正すると、ジェスチャーを交えて説明を続けた。


「十剣神威は、一人の人間が発足した組織でね。その人間は組織の名前の通り、強力な十人の三力使いを集めているんだ。三力使い、というくらいだから、その中には勿論妖もいるよ。そんな十人の力を用いて、三力奇譚を解決するって感じ」

「え、人数制限があるってこと? それとも、一人加われば十一剣神威とかになるの?」

「いや、発足した人間が厳選した十人で終わりじゃないかな。でも大丈夫、噂によるとまだ一つ席が埋まっていないらしいんだよね。最後の一人だから慎重になってるとかで」

「ええ、それってつまりハードルが上がってるってことなんじゃ―――」


 心配そうな顔を浮かべる伊佐薙を前にユキは適当に笑うと、少し考えた末に「まあ、伊佐薙なら大丈夫だよ。多分」と苦笑いで付け加えた。


「とにかく、概要はこんなもんかな。というより、これ以上のことを僕らはあんまり知らない。だからこっから先は十剣神威に聞くしかないね。

 それで、なんで僕がこの組織を紹介しているかってことなんだけど」


 ユキは話を一旦区切ると、前屈みになって両の手を膝の前で組んだ。


「さっきも言ったけど、この組織は常に三力奇譚と向き合ってる。その中には能力が引き金となった事件も多く含まれているらしい。僕が紹介する理由は、ズバリここだ。

 伊佐薙は、まず数多くの能力に触れてみるべきだと思う。その中で"能力とは一体なんなのか"を調べるんだ。その為には、実際に三力奇譚に関わるのが一番の近道だと僕は考えた。そして―――」


 ユキは息を吸って、目に力を込めた。


「最終目標は、能力の"起源"を知ることだ。それが分かれば、能力の発生を断つことも夢じゃないと思うよ」


 伊佐薙はユキの話すことに呆気にとられていた。能力の起源だなんて考えたこともなかった。

 伊佐薙は金魚のように口をパクパクさせていた。


「それで―――本当に能力を断てるの?」伊佐薙の問いに、ユキは天を仰いで唸った。

「うーん、確実に断てる、とは言わない。けど、可能性は高いと思う。というのもさ、能力って意外と最近に生まれたものなんだよね。まあ妖力と数式に比べたら、だけど。ねえ、那肋」


 ユキが顔を向けると、那肋はゆったりと顔を上げて壁を見ながら記憶を辿った。


「うむ、まあそうだな。何年前、とかではなくとも、ここ何百年の話ではあるだろうな」那肋はけだるそうに答えていた。

「ほらね、だから僕はまだ尻尾が掴めるんじゃないかと思ったんだよ。だって原因が分かればさ、それを断つこともできる気がしてこない? どう?」


 ユキは自信ありげに胸を張っている。


 確かにほぼ能力に関する知識がない中で、ここまでよく考えた方だと思う。伊佐薙は純粋に感激していた。

 しかし疑問は尽きない。伊佐薙はユキに尋ねた。


「そういうアプローチで能力の消滅を目指すのは分かったんだけどさ、それが茨の道だっていうのはどういうことなの? そりゃ三力奇譚に首突っ込むんだから危ないってのは分かるんだけどさ」


 ユキは伊佐薙の言っていることがしばらく理解できなかったようで、伊佐薙を見て目を丸くしていた。

 少しして内容を理解したユキは、呆れた表情を浮かべて伊佐薙を諭した。


「伊佐薙。三力奇譚を舐めない方がいいよ。三力奇譚は、基本的に自分の持つ力を使って本気で悪事を働こうとする存在が引き起こす事件のことを指すんだよ。それに首を突っ込むってことは、いつ死んでもおかしくないってこと。だから十剣神威にいる連中も、基本的には身内がいなかったり、生い立ちが壮絶だった奴らばっかりなんだよ。

 それだけ、危ない仕事なんだ」


 伊佐薙が表情を険しくして発言を悔いていると、那肋も伊佐薙に釘を刺すように言葉を足した。

 

「そういう連中を()すということは、それだけ恨みを買ったり嫌な関係ができることも覚悟するべきだろう。たとえ一つの仕事を終えた後でも、一度そういう仕事に首を突っ込んだが最後、常に命を狙われる可能性があると考えていい。それこそ、今のユキのようにな」


 それを聞いていたユキは「まあ僕は追われてる理由が全然違うけどね」と手を広げてひょうきんに笑った。


 しかしその例えで、伊佐薙は那肋が言いたいことが分かった気がした。

 ユキがこれだけ追われていても無事でいられるのは、それだけユキが強いからだ。適当な刺客が来ても、ユキは軽々といなすことができる。だからユキは"追われる身になる"ことができている。


 つまり、この道を進めば自分は常に警戒を解けないような生活になり、同時に強さも追い求め続けなければならないということなのだろう。それが自分の精神に与えるダメージの甚大さは、想像に難くない。

 伊佐薙は、ようやく自分が進もうとしている道の険しさを自覚した。


 心を決めようとしている伊佐薙を見て、ユキはすっと立ち上がって伊佐薙の背中を叩いた。


「でも正直なところ、あの鬼神の力さえあれば大抵の問題はなんとかなると思ってるよ、僕は。君は既に感覚がおかしくなってるだろうけど、君が出会ってきた妖はどいつもこいつも上澄みだからね。そんな怪物を僕らは相手にしてたんだよ。無論、僕と那肋もね。

 それに、もしこの道を進むというのなら僕らも伊佐薙の強化に力を貸すよ。特訓もそうだし、装備も調えてあげられる」


 ユキはそう言って再び席に着くと、両手を広げてその中心に氷で何かを形作ろうとしていた。

 気付くとユキの額には角が生えており、部屋は一瞬で凍てつくほどの寒さになった。


「寒っっっ! 何してんの」伊佐薙が叫ぶと同時に那肋も煙たそうにユキを見つめていた。

「大丈夫、これは獄氷じゃない。冷気から作り出したただの氷さ。それより、氷を見てて」


 伊佐薙は掛け布団を深々と被ると、その氷の目を凝らした。

 氷は初めは山の妖にゴツゴツとしていたが、段々と大地のように平たく広がってゆき、最後には空飛ぶ大きな大地のように形を成した。

 

 地表と思われる部分にはいくつかの建物のようなものすら建っている。

 器用なものだな―――伊佐薙は目を見張っていた。


「色々と話をしたからね、伊佐薙の覚悟は十分理解したけど、決断はもう少し後でもいいと思ってる。でも、正直なところ僕らはあまりここらに長居したくないんだよ。だからとりあえず、伊佐薙の強化を進めたいと思います」ユキはびしっと指を立てた。

「え、でもそれって、俺が十剣神威に行くってことと同義だよね」

「今更ではあるけどね、伊佐薙の強化はどちらにせよしてあげようと思ってたんだ。特に、装備の部分ね」


 ユキは自分の羽織りに手をかけて、それを脱ぐと同時に伊佐薙のベッドに広げた。

 伊佐薙を獄炎から守ってくれた羽織り。今見ても不思議と頼れるオーラのようなものがにじみ出ている。


「まずはこれ。これは伊佐薙にあげることが決定しております。僕より、伊佐薙の方が必要だろうしね」

「いいの? でもこれ大切なものなんじゃ―――」伊佐薙がその羽織りに触れずらそうにしていると、ユキは声を高らかに笑った。


「いいんだよ。僕がいいって言ってるんだから、気にしないの。それで、もう一回この氷見て」


 伊佐薙と那肋がその氷に目をやると、那肋はすぐに何かに納得したように声を漏らした。

 ユキが浮いている氷の地表に指を立てる。そこには屋台のようなものが広がっていた。


「僕らは伊佐薙の助けになるものを、いくつかこの屋台で買おうと思ってるんだよ。その羽織みたいなのをね。そういうのがないと、伊佐薙は今後鬼神になる際に毎回身につけているものがボロボロになっちゃうし、怪我も絶えないだろうから」

「それはありがたいけど―――この屋台ってどこにあるの? ってかこの氷塊はどこを再現しているものなの?」


 ユキはそう言って首をかしげる伊佐薙に対して、不敵に笑った。


「数多の妖が跋扈(ばっこ)する空間。地獄ほど統制が取れておらず、全国の魑魅魍魎(ちみもうりょう)が溢れかえっている空間。その名は黄泉(よみ)。基本的に、生者は死なないと行けない場所さ」


 



突如行き先を告げられた伊佐薙。その場所は黄泉。

伝承でしか聞かないような死者の都にて、伊佐薙は何を見るのだろうか。


次回、鬼神として(1)


お楽しみに。

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