秋の気分
秋も深まってきており、日中はまだ暖かいが夜は冷える。というわけで、夕飯には温かい物を。
「おでんでいいよね」
「ああ」
気のない平坦な返事。週始め、週終わりと定番に出してくれば、夫はまたか、という気分なのだろう。私は好きなのだが。
土鍋に大根、卵、こんにゃくと用意して。
「練り物は何入れる?、ちくわとか」
その弾力と、出汁に合う旨味がちょうどよく。
「ああ」
「はんぺんは?」
ふわっとした食感が絶妙で。
「いいヨ」
「かまぼこも?」
「まかセル」
「つみれ、すじ、さつま揚げ、ごぼう巻き…」
「スキニシテイイカラ」
くどかったかもしれない。でも、それぞれが、それぞれともに合うおでんだね。
グツグツと煮込み、蓋の穴から隙間から蒸気が噴き上がる。煮え加減は目で箸で、漂う香りは鼻で確認、味は御覧じろ。程良く時間を経れば、それで出来上がり。
「いただきましょう」
見計らったのか、のっそり夫も席に着いていた。
器によそおう、さあ召し上がれ。今日のおでん。
「ヤッパリ、キブンジャナインダナァ」
何、違いが分かるのか、雷でん。
箸で摘まみながら零しかける夫に、ネタに走りそうで留める私。
愚痴りつつも食す、口いっぱいに食す。アツアツに、二人して秋の夜長を温まった。