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7.除霊の儀式

 村長や村人たちは、メイプルの指示通りに村の前にある道を整備してくれた。

 特に村長は、メイプルがユニコーンだったことに驚いていたが、村がどういう状況に置かれているかも理解しており、率先して陣頭指揮を執ってくれている。

「い、言われた通りに村の前の道を整えました」

「距離はちょうど1600メートルでしたね」

「はい。スタートから100メートルほどでカーブになり、400メートルほど……」


 何をしてもらったのかといえば、馬同士でのレースができるように村の前に伸びる道を整えてもらったのである。

 コースを大雑把に説明すると……

 スタートから100メートルで、第1コーナー。

 第1コーナーは400メートルほど。

 次は正面の直線コースとなり500メートルほど走れば第2コーナー。

 第2コーナーから400メートルで最後の直線になり。

 最後の直線は200メートルだが、高低差2.5メートルの上り坂がある。という具合だ。


 足元はもちろん泥道で、ところどころに水たまりがあり足場はあまり良くない。ここを走り切るには、最短距離を走ればいいわけではないのが難しいところだ。


「アルフレッドさん。そろそろ乗ってください」

「わかった」

 小生がメイプルセイバーに跨ると、悪霊たちも次々と集まってきて目の前で凝縮しはじめた。

 それは見る見る黒い霧から実体化し、黒毛のウマのような姿になっていく。村人たちも冷や汗を流しながら言った。

「しゃ、シャドーホース!」

「そ、それもこんなにいるなんて……」


 小生もまた息をのんでいた。

 この村に病を広げ人々を苦しめてきた霊魂が、まさかこれほどまでにいるとは、確かにメイプルが急いで浄化しないと手遅れになると言っていた理由もよくわかる。

「こいつら、人の生命力を吸って……ここまで強大になったのか」

「ええ。悪霊によって命を奪われた者が悪霊になる。それを繰り返せば村は滅びます」


 その直後に声が響いた。

「はっはっはー。久しぶりに自由に動ける体だ!」

「暴れたくてウズウズするなぁ!」

「よせ、ここで騒ぎを起こせばせっかくの御馳走がお預けになるぞ!」

 リーダー風のシャドーホースがいうと、一同は渋い顔をしたまま舌打ちをした。

「わかってるよ」

「さっさと来いよ幽霊騎手!」


 シャドーホース11頭の背には、青白い素肌の戦士や女性が跨った。

 彼らは軽々とシャドーホースたちを操ってコースを下見している。その足元からは力強い地響きを響かせており、手強そうだ。

「…………」

 この11頭の中で1番にならないと、メイプルは角を奪われてしまうのか……

 お馬のレースのことは詳しく知らないが、11人のライバルを全て抜かさないといけないと考えると、このレースの難しさがわかった。


「あ、あの……」

 何かと思って振り返ると、そこにはウマに跨った村人が3人いた。恐らくは自警団の人たちだろう。

「我々も助太刀します!」

「訓練でよくこの辺りのコースなら熟知しています!」

 メイプルセイバーは、悪霊たちに聞いた。

「彼らも参加して構いませんか?」

 悪霊たちは、ニヤリと笑うと次々と頷いた。いけにえが増えたことを喜んでいる雰囲気だ。



 まもなくクジで内枠1番から外枠15番を決めることになり、メイプルセイバーは14番。自警団員たちは、それぞれ3番、8番、12番となった。

 村長がハンカチを出す。

「では……」

 参加した15頭と15人はもちろん、レースを見守る100人以上のアーダン村の住人たちは、生唾を呑みながら村長の動きに注目していた。


 彼の指がハンカチから離れていく。

 地面に付くと同時に、除霊の儀式が始まった!

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