33.決戦前
小生たちが緊張してことの成り行きを見守るように、難民キャンプの住人たちや、騎馬民族のお供たちも固唾を飲む様子で、ドドドと騎馬民族の長のやり取りを見守っていた。
最初のうちはドドドも騎馬民族の長も、距離を取って話し合っていたが、とりあえず最初の話はまとまった雰囲気を感じた。
やがて騎馬民族の長は座り、枝を拾って地面に何かを書き始めた。
ドドドも隣に腰掛けると、長が書いていることを眺めている。
ドドドの口が動くと、メイプルセイバーも近づいて長の書いていることを眺めた。そして何か言葉を口にし、長も頷きながら笑っている。
その様子を眺めていた騎馬民族のお供たちは、とりあえず安心した様子でお互いを見て雑談をしていた。まだ馬には跨っているが、武器に手をかけていた最初の頃のような緊張感はない。
やがて、ドドドと長の話もまとまったらしく、ドドドは前脚の膝を上げ、長も手を差し出して握手をしていた。
メイプルセイバーも、長の護衛役の戦士と話をし、戦士もまた満足そうに頷いている。雰囲気はとても和やかで笑い声すら聞こえてきそうだ。
まもなくドドドとメイプル、長と護衛役の男性はそれぞれの場所へと戻り、小生たちはドドドたちと再開することができた。
「おつかれさま。お父さんに姉さん!」
「話し合いの結果、村の周りを1周することに決まりました。向こうは5頭立て、我々は私とアルフレッドさんで挑みます」
小生は上手く交渉してくれたと思いながら頷いた。メイプルを使わせて貰えれば、こちらが負けることはまずない。
「君の背に乗れるのなら、ステークスワイドは使わんぞ!」
その言葉を聞いたメイプルは、しっかりと小生を見て頷いた。
「光栄なお言葉です。身が引き締まります!」
ドドドも、満足そうに頷いた。
「当然だ。我が子供達に1着以外は似合わん」
ブラウンスポットが悲しそうに遠くを見ていたが、ドドドはしっかりとその様子を見ていた。
「お前も他人ごとのような顔をするなブラウン。この雑木林に住んでいる時点でお前もうちの仔だぞ!」
「は、はい……肝に銘じます!」
反射的に返事をしたブラウンを見て、サイレンスアローは笑いながら言った。
「姉さんまじめ。ブラウンまじめ。スピカまじめ。母さんまじめ。僕はヘンタイ!」
「それはタイヘンだね、お兄ちゃん」
スピカオブアムアスがボケると、サイレンスアローは更に追い打ちをかけた。
「そしてお父さんも……」
そこまで言ったサイレンスアローだったが、さすがにドドドの凄みのある笑顔を見て固まっていた。
「なんだ。怒らないから言ってみなさい」
「いや姉さんは、お父さんとお母さんに似たんだなぁ〜って……」
「ほほう。では、お前は誰に似たのだ?」
「天の守護神と大地の女神の元に産まれた、伝説の一角獣……」
「それは大きく出たな」
「……から数えて、10000代のちに生まれた……単なるウマです」
小生と、メイプルと、ブラウンと、スピカはコケたが、ドドドはまだコントを続けるようだ。
「……隔世遺伝はしていないのか?」
「しょうもないところばかりマネするのが、子供というものです」
「つまり、私のせいか……」
「責任をとって、あと10頭は弟か妹を作りましょう」
「やかまし!」
きれいにツッコミも決まったところで、小生たちはレースに出走する準備をはじめた。
メイプルセイバーに跨がって北門の前まで行くと、騎馬民族の戦士たち5名が、筋骨隆々な馬たちに跨がっている。
【相馬眼】で確認してみたら、5頭はいずれもレアかレアマイナスという、ユニコーン予備軍のウマたちだ。
それ以上に、乗り手の戦士たちから流れ出るオーラには凄みがあり、歴戦の戦士と呼ぶに相応しい実力がありそうだ。
「距離は2400メートルだったな」
戦士の1人が話し掛けて来たので、小生は頷いた。
「この東門の中心からスタートして、同じ場所に戻ってくれば2400メートルになる」
以前2200メートルだったのは、当時はここに門がなくショートカットできたからだ。
昔は2150メートルほどだったので少し同じ場所を走る必要もあったが、今はぴったり2400メートルである。
「下見をさせてもらうぞ!」
戦士たちはバラバラにスタートすると、各々がウマを操りながら入念にコースの下見をしていた。
小生もまた、メイプルと共に村や雑木林の周りを調べてみた。
「とても、走りやすいですね」
「ああ。だからこそ注意が必要だ。条件はむこうも同じだからな」




