13.密猟者のかく乱
夜がやってくると、メイプルたちは近所の馬たちと集まって眠りはじめていた。
小生もそろそろ休もうかと思ったとき、真っ先に眠ったと思っていたサイレンスアローがクビを上げて周囲を見渡している。
「どうした?」
「お兄さん。念のために聞いておくけど、人間の知り合いとか連れてきてないよね」
「ああ、メイプルの背に跨がってきたからな」
彼はすぐに立ち上がった。
「はい。コソドロ密猟者さまのご来店です!」
コイツのボキャブラリーは、しびれるものがある。
「何名様だ?」
そう父親ドドドが聞くと、サイレンスアローは鼻の穴を大きく開いて、険しい顔で答えた。
「7名様です。特別室の許可を!」
「お父さんたちでやっつけてくるから、お前はここにいなさい」
「僕の分ないの〜?」
「ない!」
そう言いながらドドドが立ち去ると、サイレンスアローは渋い顔をした。
「こうして父さんたちは、夜遊びに出掛けるのであった」
「せめて、夜勤といいなさい」
ドドドが立ち去ると、メイプルセイバーは困り顔で言った。
「サイレンスアロー。あまり父上を困らせてはいけませんよ」
「いやいや姉さん。お父さんにかかれば、密猟者のような恐ろしい存在も夜遊びの相手でしかない……ということなんだよ!」
おお、さすがは弟君だ。
普段はふざけているように見えても、ここぞというところでしっかりと父親をリスペクトしている。
「密猟者をやっつければ、キレイな牝馬たちにモテるなんて、これっぽっちも考えてないと思うよ。多分、恐らく、そう推定できる……うん!」
前言撤回。やはり弟君だ……
「どうして、だんだんと自信がなくなっていくように言うのですか?」
「お父さんは今日も元気!」
「意味深な発言までしないでください」
弟君のいった通り、ドドドは1時間ほどで戻ってきた。多少の汗はかいていたが、特にケガをした様子もない。
「今、戻った」
「お帰りなさい」
「7人のうち1人を見失った。その辺に潜んでいるかもしれないから、気は抜かないでくれ」
「わかりました」
フォレストドリームとメイプルセイバーが微笑んでいると、サイレンスアローは再び口を開いた。
「ところでお父さん?」
「なんだ?」
サイレンスアローはニヤッと笑った。これはどう見ても悪巧みをしている顔だ。
「砂浴び……しないの? 汗をかいたあと、これをしないと眠れんとか言ってたじゃないか」
「あ、ああ……そうだな。どうりで落ち着かんワケだ」
その直後に、その牡馬の上に名前とグレードが現れた。
【ハリボーデー 牡ウマ13歳 レア度UC 総合霊力15 飛行✕ 変身✕ 治療△ 調薬✕ 除霊✕ 特殊能力:別の術者の影響下にあり】
その直後に、聞き覚えのある声が響いた。
「お前たち、騙されるな! そいつは偽者だ!!」
新たに牡馬が現れると【相馬眼】が仕事をした。
【ダバマックス 牡ウマ10歳 レア度UC− 総合霊力15 飛行✕ 変身✕ 治療✕ 調薬✕ 除霊✕ 特殊能力:別の術者の影響下にあり】
「お前たち! 無事か!?」
【ヤジウーマ 牡ウマ14歳 レア度UC 総合霊力20 飛行✕ 変身✕ 治療✕ 調薬✕ 除霊✕ 特殊能力:別の術者の影響下にあり】
混乱するメイプルセイバーやフォレストドリームを尻目に、サイレンスアローは言った。
「処分品の詰め合わせセットとかを買うとあるよね。同じようなハズレばかり溜まっていく……」
「他人ごとみたいに言っている場合ですか!」
サイレンスアローの視線が厳しくなった。
「ペネトレーション!」
そう言いながら目と角を光らせると、3頭のオス馬たちは、辺りを見回していた。
「あ、あれ……?」
「俺たちは、一体?」
「……???」
どうやらペネトレーションという能力には、偽りのものを打ち消す効果があるようだ。
今までは混乱していたメイプルセイバーやフォレストドリームも、穏やかな表情であたりを見回している牡馬たちに話しかける。
「貴方がたは、悪い魔法使いにだまされていたのです」
その一言で、牡馬たちも我に返ったようだ。
「助けて頂いたんですね。ありがとうございます」
彼らは、フォレストドリームに一礼するとバラバラの方向に帰っていった。
メイプルセイバーも、険しい顔で言う。
「胸騒ぎがします。父上はご無事でしょうか?」
とりあえず、今は結果を待つしかないだろう。
空を見ると、月が雲に覆われて見えなくなった。
【作者からのお願い】
ここまで読んでいただきありがとうございます。
おもしろい!
サイレンスアローよ……もっとふざけろ!
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