1.パーティー追放
「私のパーティーから脱退してください」
そう言いながら、違約金の入った袋を突き付けてきたのは、リーダーのダンゲルだ。
歳は小生よりも5歳ほど若く、冒険者街で最も早くAランクチームの長になった遣り手である。
「ちょっと待ってくれ! どうして急に!?」
そう質問すると、ダンゲルは小生を見下してきた。
「年上のひとに、こういうことを言いたくはありませんが……使えないんですよ。それも物凄くね」
使えないという言葉は、小生の心に深く突き刺さった。
確かに、自分でもパーティーメンバーと比べて劣っているという自覚はある。あるからこそ、改めて他人から言われると堪えるものだ。
「使えない……か……」
「これから我がチームは、下層の強力なモンスターと戦うことが多くなります。偵察も、荷物運びも、戦いも中途半端なアルフレッドさんでは……足手まといなんですよ」
その話を聞いて、小生は痛いところを突いてくると感じた。
なんでも出来るビーストテイマーと言えば聞こえはいいが、鳥を使えば敵の探知漏れをし、牛を操っても荷物を十分に運べず、熊や虎を操っても戦いが厳しくなるとオーラ切れを起こしている。
「オマケに【最高レアリティのスキル】ですよ……なんですか、自分の獲得スキルのレベルを下げるって。しかも8割のスキルポイントしか返って来ないのでは全く使えません」
ため息と共にダンゲルは笑った。
「冒険者、向いていないんじゃないですか?」
「わかった。今まで世話になったね」
そう言いながら、コインの入った袋を取るとドアが動いた。入ってきたのはまだ10代中頃という、冒険者になりたての少女だった。
彼女は、慣れない様子で受付に向かうと、係の女性に話しかけた。
「あの、すみません……ダンゲル隊長はどちらですか?」
「ダンゲルさんならあそこだよ」
彼女は小生にも一礼すると、ダンゲルの前に立って深々とお辞儀をした。
「待っていたよリリィさん。ようこそダンゲル隊へ……」
そう言いながら、ダンゲルはこちらを見た。
「せっかくだし、アルフレッドさんにもご紹介しましょう。あなたの後釜となるビーストテイマーです」
その言葉を聞いてリリィは不安そうな顔をした。恐らくだが、経験の差があると感じたのだろう。
ダンゲルも察したらしく、笑いながら言った。
「リリィさん。例えばですが、貴方は偵察用の鳥を何羽操れますか?」
「8羽ほどです……」
その言葉を聞いて、小生は驚愕した。
27歳にもなって使役できる数は未だに5羽。しかも天候やダンジョンの瘴気の濃度によっては3羽程度となる。
話を聞いていたダンゲルも、満足そうに拍手した。
「エクセレント!」
「え……?」
「いや、まだ若いというのに素晴らしい! 30近くになっても進歩もなく、3羽程度しか使えないビーストテイマーも珍しくありません!」
その言葉を聞いたリリィはオロオロとしていた。ダンゲルが、小生に嫌味を言っていることを理解したのだろう。
ダンゲルは、お構いなしに言った。
「書類を見ましたが、動物の遠隔操作範囲も、操作できる数も、持続時間もリリィさんが上です!」
近くで食事をしていたダンゲル親衛隊の少女2人が、歓声を上げながら拍手していた。よくぞ言ってくれたと言わんばかりだ。
「涙ぐましい努力を続けても、3流は3流なのです……1流になるべく生まれてきた者にとっては何もしていないのと同じ」
これ以上、ダンゲルになじられてはたまらない。と思いながら受付嬢に話しかけた。
「今日付でギルドを辞めさせてもらう。書類を用意してくれ」
「わかりました」
怒りで手が震えていたため、書類を書くのに手間取っていると、ギルド長がやってきた。
「おっ、役立たずのアルフが遂に追い出されたか」
小生は、内心ではかなりイライラしたが我慢した。
相手はギルド長室で女を囲っているだけの役立たずギルド長だ。殴る価値もない。
「お望み通り役立たずは脱退します。後はよろしく」
そう、嫌味をいいながら書類を押し付けると、ギルド長は「確かに」といいながら受け取った。
すると、追い打ちをかけるように受付嬢が言った。
「では、メンバーの入れ替えを評価し……チームダンゲルはSランクパーティーに昇格します」
その言葉を聞いて全身の力が抜けた。
ギルドの内情に詳しいはずの受付嬢さえ小生を役立たずだと思っていたのなら、もうここにいる意味はない。
ひそかに協力してくれていた小鳥にだけ別れを告げると、小生は足早にギルドを去った。
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