表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/8

1 もし、やり直せたら……。

「初恋の幼馴染。~浮気した彼女を壊そうとしたら俺までおかしくなった話~」の続編です。


 樹君、恵奈、そして私。私達三人は同じアパートで幸せに暮らしていたが、その幸せは長続きしなかった。恵奈の病気は治ったのだが、樹君の記憶が正常に戻ったかと思えば、またおかしくなるという事を繰り返しだした。


 “けーちゃん”がいると樹君を刺激してしまうのだから、私達がいなければ良いのかとも思ったが、本人が離れたがらないのと私達のサポートがなければ生活に支障をきたす事もあり、結局三人での生活は続いていた。


 この生活ももう限界が見えてきている。


 恵奈と慧…二人の“けーちゃん”がそう感じていたある日……




 三人で買い物をしていると、魔法少女のコスプレをした女の子に話しかけられた。



「あなたたち、大分変った人生を歩んでるみたいね?占ってあげるよ。」



 三人とも占いは別に嫌いという事はなかったので、せっかくだからと話にのる。



「元々あった流れが歪んでいるのを感じる。この時計を持っていって。」



 何故か私に置時計を渡してきた。



「その時計は時間を戻す魔法の時計。きっと役に立つよ!」



 この上なく怪しいけど、なんとなくその時計が助けてくれるような気がした私は、礼を言って三人で帰宅した。


(結局占ってもらってないじゃない。)


 時計には現在の年月日が表示され、試しにと前日の日付にしてみる。



(戻るわけないか…。当たり前だよね。)



 特に何事もなくその日は終わった。



 翌日目が覚め、いつものように恵奈と私が朝食の支度をしていると奇妙な違和感を感じる。



「ねえ。昨日もパンだったから今日は違うのにしない?」


「昨日は焼き魚だったよ。忘れちゃったの?」



 それは一昨日の話。昨日は確かにパンを食べた記憶が私にはある。



「今日の日付は?」


「7月18日だけど…。」


「今日って三人で買い物行く予定だった?」


「そうだけど…。慧、本当に大丈夫?」



 え?


 まさか慧まで…?


 そう言われ、恵奈に心配されてしまったがそれどころじゃない。



「まさか、時計の話は本当だった…?」



 恵奈には大分心配をかけてしまったが、その日を過ごすうちに私は確信した。


(あの時計は本当に時間を戻してくれる。恵奈の浮気が発覚したのは確か、入学してから最初のゴールデンウイークだったはず……。)


 そうして再び、魔法少女から時計を貰った私は……日付を戻した。






 2021年4月7日


(恵奈と樹君は既に付き合い始めているはず。)


 先ず、恵奈に連絡をした。


 でも私の考えは甘かった。


(返信がこない…。私、こんなに嫌われてたんだね……。)


 だが、これで諦める訳にはいかない。私は学校終わりの恵奈を待ち伏せした。何度も通い一緒に住んだアパートだ。道順が分からないはずもなく、恵奈に会う事が出来た。


(これで話が出来る!)


 私は勢いで恵奈に話しかける。



「恵奈!」


「なんでここに居るの?」



 彼女は険しい目つきで私を見てくる。



「お願いだから話を聞いて。用件が済めばすぐに帰るから。」



(親友にこんな目で見られるのはキツイな……恨むよ、過去の私。)



「じゃあ用件をどうぞ?」


「あのね、もうこっちから連絡とかはしないから、彼に手を出さないで欲しいの。」



 今の私は樹君も恵奈も大好きだ。この話が上手くまとまってしまえば、三人で過ごした幸せな日々はもう二度とやっては来ないだろう。


(でも、私がここで二人から離れれば…二人はきっと上手くいく。)



「それって慧の幼馴染の彼の事?」


「そうだよ。」


「そっか。そんなにも……。」


「わかってくれる?」



 彼女はふふっと笑って続ける。



「じゃあ尚更彼に手を出さなきゃね。そんなに嫌なんでしょ?」



 私は失敗した事に気が付いた。恵奈は私を憎んでいるのだ。三人で暮らした日々の記憶が私の判断を鈍らせた。



「樹君の為なの!お願い!そんな事したら絶対に後悔する事になるから!」



 瞬間、ピリっとした空気に変わった。



「ねえ?何でいっくんの事を知ってるの?」



(しまった…。)



「調べてたの?何するつもりなの?そんなに私に嫌がらせしたいの?ねえ?」


「ち、ちがっ…」


「何が違うのよ!!」



(少し考えれば分かることだったのに…。今の恵奈は私を憎んでる。私の言う事なんかまともに取り合ってくれるはずもなかった。)



「帰って!もう話す事なんてない!!」



 私は帰らざるを得なかった。



(前回こんな出来事はなかった。もしかすれば、流れが変わるかも。)



 元々楽天的だった私は、愚かにもそう考え日々を過ごす。




 そうして運命の日がやってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なんか蚊帳の外になってる慧の幼馴染みも気になるのよな 自分に執着してた彼女が、いきなり自分を切り捨てて浮気相手カップルと3人で同棲したら混乱したり割って入ったりするだろうし 浮気以外はマトモ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ