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8話 三馬鹿との対決

 温泉で体を清めた一向は、そのまま山脈を拠点に魔物を狩っていた。


 キリ山脈の奥深くの洞窟に、全太は魔物の骨の上に横たわりグウグウ眠っている。


「ガオラス……うめえ……もう喰いきれねえ……」


 寝言を呟いた全太の肩を、ポーラは軽くたたく。


「全太……朝ですよ。起きなさい」


「……んあれ? ガオラスの肉は?」


「いつまでも寝ぼけてないで起きなさい!」


「チクショー! ポーラ! 今すぐガオラスのいる所に案内してくれ! 俺はガオラスが喰いてえよお!」


「調子に乗るんじゃあありません! あなたはまだ各地に散らばる神力の玉を一つも集め終わっていません!」


「タマなら二つあるぜ」


「そのタマじゃありません!」


「まあいいけどよー。本当にガオラスの野郎は美味いんだろうなー? 大してうまくなかったらポーラでも許さねえからなあ!」


「とととっ……ととと当然です! ガオラスの肉は美味しすぎて一口食べただけで舌がトロットロになるくらい美味だとの事です!」


「……ならいいけど、嘘だったら腹いせに暴れまくってやるからな」


「…………」


 平静を装いつつも、ポーラは内心穏やかでは無かった。

 世界を余裕で破壊できるアリエルに、二度も打ち勝つ程の力を持つ全太が腹いせに暴れたら……世界は跡形もなく破壊されてしまうかも知れない。

 何とか策を考えておかなくては。


「ガオラスの話してたら腹減って来たなあ。アリエルーーー! 飯作ってくれえええええ!」


「アリエルなら山菜を採りに出かけていますよ」


「そっか。じゃあ俺朝飯前に腹ごしらえしてくるぜ」


「いってらっしゃい」


 全太は散乱した魔物の白骨を踏みつけながら、洞窟の出口へと向かって行った。




「お前が全太か!」


 洞窟の入り口で全太を待ち受けていたのは、皮鎧を身に着け腕組みする生意気そうな少年だった。

 その傍らには黒ローブの少女と、図体の大きい少年を侍らせている。


「ああ! 全太なら俺だぜ!」


「何だこいつ! 一番ヤバい所は何か靄みたいなのが掛かっていて見えねえが……どう見ても全裸じゃねえか! この変態野郎め!」


「変態って何だ? 喰えんのか?」


「兄貴……こいつ変態な上に完全な馬鹿ッスよ!」


「オデロもそう思う」


「俺は馬鹿じゃねえええええええ!」


「こんな馬鹿でも一応英雄だ! 倒せば名を上げるチャンスだぜ!」


「だから俺は馬鹿じゃないって! お前ら喧嘩売ってんのか?」


「黙れ! 伝説の勇者の血を引くこのアレス様が直々に成敗してやる!」


「兄貴! 頑張ってくださいッス!」


「オデロも応援する」


「キャシイ! オデロ! 俺に任せておけ! 一撃でやっつけてやる!」


「喧嘩ならいくらでも買うぜ! 掛かって来やがれ!」


「よっしゃあああ! 死ね全太あああ――グハアアアアア!!」


 アレスは全太の鉄拳をみぞおちに受け、派手に吹っ飛ばされた。

 茂みに頭から突っ込んだアレスに、腰巾着の二人が心配そうに駆け寄って行った。


「兄貴! 大丈夫ッスか!?」


「いってええええ! クソオオオオオオオ!」


「何だよ……偉そうにしてた割にてんで弱いじゃねえか」


「うるせえ! 俺は最強なんだぞ! 伝説の勇者アレス様だぞおおおお!」


「兄貴……泣かないでくださいッス」


「オデロ、逃げた方がいいと思う」


「……仕方ねえ! 今日は調子が悪かったみたいだから引いてやる! だが憶えとけよ全太! お前をブッ倒すのは俺だからな!」


「おう。次はもっと強くなってから来いよ」


「兄貴―! 待ってくださいッス!」


「憶えてろおおおおおお!」




「何だったんだあいつら……まあいっか」


 逃げるように走り去っていく三人組を見送りながらも、全太はいつも通り山を駆けずり回り、獲物を探して行った。


「俺と勝負しやがれええええええええ!」


 しかし、中々勝負相手は見つからない。

 そんな中、全太の人間離れした鼻腔に微かな香りが入り込む。


「ん? 何かいい匂いがしやがるな!」


 臭いをたどって行った全太が見つけたのは、木に垂れ下がる大きなハチの巣だった。


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