先生達のお話
「ラック先生これからどうしますか?」
一人の若い女の先生がラック先生に質問をした。
「さあ。分からない。まだ上で揉めている最中だ。もう本当に最悪だよ」
「ですよね。まあしょうがないですけど」
「そうだな。取り敢えず上からの連絡を待つか」
「そうですね」
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・・・・・・それから暫くして。・・・・・・
ラック先生宛に学園長から今後の予定についての手紙が転移魔法で届けられた。
「ようやく来たか、たっく、本当は俺が転移魔法で直接向かえばいいのだがな。魔力がないししょうがないか」
ラック先生はそう悪態を付いた後、今動ける先生と増援に来てくれた人を集めた。
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5分程で生徒たちの護衛に回っている先生以外を全て集めた。
「さてと。じゃあ皆集まったな。今から学園長から来た手紙を読み上げる」
「えっと。何々、今回のキングベヒモス出現による魔物暴走は突発的なものとする。幸い死者は出ていない為、こちら側としてはこの森林合宿を最後までやり遂げれると判断をした。又、今回のベヒモス戦で負傷した先生は救護班に直してもらい仕事を続行せよ。
だってさ。以上終わり。うんクソッタレタ学園長め地獄に落ちろ」
ラック先生はそう言って手紙をびりびりに破り捨てた。
「ちょっとラック先生気持ちは分かりますが。今は落ち着いてください。それよりも今後のことについて話し合いをしましょう」
先生方が慌ててラック先生を宥めに行く。
「ああ。そうだな。すまなかった。冷静さを欠いていた。いやでもさあ。言わせてほしい今回の件Sクラスそれも俺が担当している特別優れたSクラスが合ったからこそ死者ゼロで終わったけど。もしも今年入ってきたSクラスが例年と変わらなかったらかなりの人数が死んでいるぞ」
ラック先生はそう叫びながら頭を掻きむしった。
実際その通りなのだ。Sクラスといっても年によって強さの違いはある。基本的には大貴族や王族が優遇されがちで、優秀という事で入ってきてもいきなりベヒモス相手に立ちまわれるレベルの優秀な人間はいない。ようはベヒモス相手に戦えて倒せるような超絶優秀な人間が入ってきている今年はかなり異常なのだ。
「そうですか。確かに今年入ってきてくれたSクラスの人たちだけでベヒモス1体を討伐していますからな。あれは随分と助かりました」
「ん?待てよそういえばラック先生が助けに来てくださったときに一緒にSクラスの生徒が居ませんでしたか?それもメチャクチャ強い」
「ああ。いたぞ。正直言ってアイツが居なかったらキングベヒモス戦でも大分ヤバかったし、他で暴れていたベヒモス討伐も魔力的問題で不可能だったかもしれない」
ラック先生のその言葉を聞いて教師一同少し言葉を失った。
何故ならそれは、たった一人の生徒が英雄であり自分達の圧倒的格上であるラック先生と肩を並べて戦えるほどの強者だという証明だったから。
「おいおい。急に静かになるなって。アイツが居なければ生徒も教師もベヒモスに殺されていたかもしれないんだぞ。後で礼を言っておけよ」
ラック先生はいつもと変わらない感じ飄々とした様子でそう言った。
それは余計にその生徒の強さを強調させ、自分達の無能さを弱さを思い知らされるような発言であり。場の空気は余計に静かになってしまった。
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「あのう。そう言えばラック先生キングベヒモスの死体はどうしたんですか?」
その沈黙の中一人の若い女性の先生がラック先生にそう問いかけた。
「それはだな。消し炭にした。俺の最大奥義で一切何も残さずに消し炭に変えた」
「そうですか。それは凄いですね」
「だろ、まあそのせいで大分魔力を消費してしまったんだがな、まあいいや。それよりも今後の事についての話を再開させよう」
「そうだな。俺もそれが良いともう。今回のベヒモス事件は運が悪かったけど運が良かったという事で割り切ろう。過去は過去だ、今からは今後の未来についての話し合いを始めよう」
スキンヘッド先生がそう言いきると。他の先生も今後について話し合わなければと空気が変わった。
「よし。じゃあ話し合いを始めますか。まず最初にSクラスの事だな。これは正直言って放置で良いと思う。まずそもそも論として今回来ているSクラスが俺の担当している一年だけというのがあるからな。まあその理由は進級試験に落ちて人数がゼロだからっていう酷い理由なんだが。それはいいや。というわけで戦闘力あるSクラスにそこまで力を割くわけにはいかないでの放置。その他のクラスにいつもの倍しっかりと戦力を割り当てて行きますか」
「ラック先生それは。流石に危なくないですか?一応今年のSクラスには王子様に勇者様に貴族様方のご子息という絶対に守らなければならない人がいるんですよ」
「まあ。それはそうなんだが。そんなことを言えば他のクラスだって貴族の子供はいっぱいいるだろ。というかほぼほぼ貴族の子供だぞ。誰か一人でも死んだら大問題だ。まあもちろんSクラスにいるメンツも殺されたらヤバいが、あのクラスには俺がかなり信頼している最強のカードがあるからな。多分キングベヒモスレベルの問題が起きても大丈夫だろ」
「そうですか。キングベヒモスレベルの問題が起きても大丈夫ですか。・・・分かりました。ラック先生の言葉を信用します」
先生方は少し不安に思うが。先ほどの言葉を考えてそう結論を出した。
「そうか。それはありがたい。じゃあそういうことで決定と、はい解散」
ラック先生が手を叩いてそう言った。
それに対してストップをかけた人がいた。
「ちょっと待ってください。ヤバいですヤバいですヤバいですヤバいですヤバいです。今探知スキルで確認したんですけど、この森の奥で魔物の大軍が襲ってきています」
探知スキルに長けた若い男の先生がそう言って発狂をする。
「は?待て待て待て。マジか?」
「はい。それも1万を超える大きな魔物暴走です」
「マジかよ。キングベヒモスの次は大規模魔物暴走ですか。どうなってんだよ。これは流石に俺一人じゃあ無理だな。かといってここにいる全員で挑んでも殲滅できるかどうか。というか監視の人がいなくなるから生徒の安全とかも考えたら全員で行くなんてのは無理だな。え?これどうしようか」
・・・・・・・・・・・
ラック先生の言葉に沈黙が走る。
まあ無理なのだ。今この状況で1万もの魔物を相手にするのは。そんな戦力はないのだ。
「これは中止して生徒全員を逃がすしかないかな?」
とある先生がそう言った。この判断は正しい。ただし魔物が逃がす時間を与えてくれるのであれば。
「それは難しいと思います。多分この魔物暴走は後1時間以内にここに襲い掛かってきます」
1時間という時間は長く感じるがかなり短い。何百人といて、いろんな所にばらけている生徒たち全員を集めて遠く離れた所にある馬車に乗せて避難させるという一連の流れを行うには最低でも3時間はないと不可能であるからだ。
「じゃあ誰かが囮をするか?」
「無理だろ。そんなことをしても焼け石に水だ。その囮が一瞬で殺されるだけだ」
「そうだな。クソッタレ。もういっそのことを俺ら教師陣だけ逃げるか。俺らだけだったら簡単に逃げられるだろ」
八方ふさがりな状況で一人の先生がそんな馬鹿なことを言い出す。しかしそれは事実であったし賛同する人も少なからずいた。
この状況で逃げだせば確実に罪に問われるだろう。しかし。今ここで生徒たちを守るために残ってもかなりの高確率で死ぬ。もし運が良く生きていても、生徒何十人か犠牲を出せば罪に問われて最悪死刑だ。
「そうだな俺達だけで逃げるか」「ああ。それがいいかもな」「どうせここにいても死ぬだろうし」「それに、この数の魔物です。逃げたとしても姿を現さなければ死んだとして処理されるかもしれませんしね」「他国にでも逃げれば無事そうだな」
何人もの先生がそんなことを言い出す。空気は完璧に良くない方向に流れてしまっている。
「なあ。もしかしたら。この1万という魔物暴走を全員無傷で処理できるかもしれない」
突如ラック先生がそんなことを言い出した。さっきまで自分には無理だと言っておきながら。
「何かいい案でも浮かんだのか?言っとくけど半数程で特攻して魔物暴走を食い止めるなんて馬鹿な案は無しだぞ」
1人の先生がそんな素晴らしい案など存在しないと疑いの声を上げる。
「いいや。そういうのではない。というか俺以外誰もいらない。皆生徒たちの護衛に付いていてくれ」
「は?ラック先生さっき一人で魔物暴走を止められないって言っていたじゃないか?なのにどうして一人で止めれるなんていえるんだ?」
「ああ、違う違う。俺一人じゃなくて、俺とSクラスにいる最強のカードの二人だ。まあこう見えても俺結構強いし、アイツが手伝ってくれるなら以外何とかなる気がしてさ」
ラック先生はいつものように飄々とした態度でそう言った。まるでそれに絶対的な自信があり成功するかのように。それを見て皆何か反論する気にはなれず全てをラック先生とラック先生の信頼している人物にまかせるという考えでまとまった。
「じゃあ。ラック先生そういうことで後はお願いします」
さっき逃げ出そうとしていた先生がそう全ての責任をラック先生に擦り付けるように言った。
「ああ。分かった。ほら今度こそ解散だ解散。早く生徒の監視・護衛に戻れ」
ラック先生はそう言って手を叩いて皆をせかして戻らさせた。
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そして全員がいなくなりラック先生が一人になる。
「さてとじゃあ少しだが魔力も回復してきたしリクトの所に向かいますか」
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補足説明
皆はラック先生がキングベヒモス1体だけを相手にしていたと勘違いしています。
ラック先生は一応リクト(主人公)の事を考えてリクトの名前を出さないようにしています。
当たり前ですけど先生方も人間です。自分の命が危なくなれば見捨てようと考える人もそりゃ出てきます。
次回
リクトの超絶無双回です。お楽しみに。




