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奴隷の華  作者: ねづみ
1/1

芽吹きの章

更新遅いです。

書いていくうちに設定が変わる可能性もありますので、20話くらいまでは生暖かい目で見守って下さい。その間に固めていきます故…

「回り込め!ネズミ一匹も逃すな!」


賑やかな城下町の仄暗い裏通り

荒くれ者やはみ出し者の集まる王都の暗部

その一角に聳え立つ、ひと際目を引く派手な建物

それが娼館『シャンバラ』である


舞台の上で煌びやかな踊り子たちが舞い

私を買ってと、男たちに愛想を振りまき色香で惑わし愛を囁く


今まさに、一人の少女が破瓜の儀式を迎えんとしている時


それは起こった


「レガーロ王国第二王子ヴェント・テラ・レガーロ様の直轄治安部隊による強制捜査だ!おとなしくしろ!」


突然の出来事に客も踊り子も慌てふためき

煌びやかな装飾や食器類が怒号と共に飛び交う


「な…なに?」


色素の薄い金髪に黄金の瞳

緩くウェーブのかかった腰まで伸びた髪を揺らめかせ

一人の少女、アントスがぼんやりとした明かりを頼りに辺りを見回す

今しがたまで自分の上に覆いかぶさっていた汚らしい男は、アントスのことなど目もくれず我先にと一目散に逃げ出していた


何事かと乱れた衣装を整えながら、するりとベッドを抜け出し

外の様子を伺おうと扉に近づいた瞬間


バンッ


何人もの兵士が武器を構え部屋へ押し入ってきた

慌ただしい足音が左右に割れ、ゆったりとした足取りの一陣の風が吹き抜ける


「この部屋で最後か」


「はっ!店主を含め経営陣は全て捕縛致しました!ここで働いていた娼婦や奴隷はいかがいたしましょう」


突然の事に尻もちをつき床を擦りながら僅かに後ずさりするアントスを一瞥し

兵士は自らの主へ頭を下げる


「捨て置け。我が国で奴隷制度は禁止されている。必要ない」


兵士の主と思わしき幼さの残る少年は、その深碧の瞳でぐるりと室内を確認し

部屋を出ようとマントを翻した瞬間、ただ一点を見つめて静止した


掃き溜めには似合わぬ艶やかな黄金の瞳が、彼を捉えて離さなかったのだ

――美しい――少年は素直にそう感じたが、黄金の瞳の持ち主は違った


「どいう事…あなた達誰よ…みんなをどうしたの!?」


何が起こったのか微塵も理解できていないがそれでも、自らのテリトリーを土足で踏みにじられた事だけは確かに理解した少女は

勢いよく立ち上がり近くの兵士へと食ってかかった


大柄の兵士はそんな少女を汚いものでも見るかのように目を細め見下し

威圧的に言葉を発する


「この違法娼館の経営陣は一人残らず逮捕した。明日からここはただの廃墟だ。お前たち商品は殿下の慈悲により見逃してもらったのだ、自由の身だぞ?その無い頭を下げて殿下に感謝しろ」


「……慈悲…?自由…だと?」


少女は両手を強く握りしめその目を怒りで曇らせた


「ふざけるな!何が自由だ!私たちの様な奴隷落ち、娼婦崩れがこの国でどうやって生きていけると?一体誰がこんな私を雇うというの!?私たちの居場所はここにしかなったのに!!返せっ!!!」


今にも噛みつきそうな勢いの少女は、近くの兵士に取り押さえられ

力づくで後ろ手に組まされ膝をつく

膝をついてもなお少女の瞳は、前髪の間からまっすぐ殿下と呼ばれた少年を睨みつけていた


睨まれた少年は目を逸らすことなく、ゆっくりと少女に近づき

金色のふわふわとした前髪を指先で払いその瞳を光の下へ引きずり出す

一瞬の静寂、ぶつかり合う視線


少年は不敵に笑うと少女の顎を掴み無理やり上を向かせる


「俺が雇ってやろう。今この瞬間からお前は俺の物だ」


「………は?」





柔らかな風が吹き、今、運命が芽吹く









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