表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

不思議な森のお話

作者: 十夜海

完全童話系を書いてみたくて書いてみました。

ただ……風邪がひどく……かなり短いはなしになってしまった。

よろしくお願いします。


ある森に大きな体の熊がいました。彼の名前はルーファ。

いつもいつもルーファは思っていました。


ーー僕はどうしてこんなに、臆病なんだろう。

いろんなことが怖いんだ。

熊だけにくまったな?なんて、一人で言っていたって、笑ってくれる友達なんていないのに。


「ああ、つまんないな。なんで僕はこうなんだろう。」


見た目は怖いから中々近くに寄ってくれる動物達はいない。

そんな見た目のせいで、話しかけてくれる動物がいない。

でも、だからって自分から話しかけるなんて怖くてできない、情けないほど臆病で怖がりなルーファなのでした。


「ああ、つまんないつまんない。……さみしいなあ。なんで、こんなに僕はダメなんだろう。」


ルーファは毎日そう思っていました。


でもそんなある時、森の外れで小さなアライグマを見かけました。


「俺様に逆らうやつは、殴ってやる」

「俺様と遊ぶんだ!」

「こんなもの、俺様には似合わない。」


などなど、みんなにはっきりと喋っている小さなアライグマをルーファは尊敬してしまいました。

周りは、苦笑いしているのを熊はみんなが笑顔になっていると勘違いまでして。


ーーすごいな、アライグマくんは。あんなに小さな体なのに、みんなにはっきり喋ることができるなんて。

僕もああなれたらいいのに。

今と正反対になれたら幸せなのに。


「本当に?本当になりたい?本当にそう思う?」


そんな時、光る羽のある小さな人が現れ言いました。


「き、き、き、君はだれ?な、な、な、んで……。」


ルーファは驚いて木の影に隠れてしまいました。


「本当に、臆病な子だね。僕は森の妖精だよ。

明日の満月の晩なら君のお願い叶えてあげる。」

「ま、ま、ま?んげつ?」

「そう、満月の晩にどんぐり池に来て?君のなりたい君にしてあげる。」

「あの、あの。」

「じゃあね?臆病な怖がり熊くん。ふふふ、よく良く考えてね。」


バイバーイと手をふり、妖精は飛んで行ってしまいました。

ルーファは思いました。


ーー『お願いが叶う』って?

本当に?

ならなら、僕はアライグマくんのようになりたい。

そうしたら!きっときっと……。

明日、どんぐり池に行こう!


ルーファはウキウキしました。

なりたい自分になれることに。

思わずスキップまでしてしまったルーファは、木の陰から出てきたきつねさんにぶつかってしまいました。


「イタタタ……。」

「あ、あ、あ、あーーー。」


ルーファはびっくりして、木の陰かに身を隠してしまいました。


ーーぶつかったのに。謝らなきゃいけないのに。


「あれ?大丈夫だよ。だから、出ておいでよ。僕はランサーだよ。君は?」


ーーせっかく名前を聞いてくれたのに。でも、でも。


ルーファは大きな体をガタガタと震わせてしまいます。


「ごめんね?僕が悪いのかな?どこか痛かった?」


ランサーは、膝を擦りむいていました。それでも、自分ではなくルーファを心配してくれます。


ーーどーしよう。血が出てるのに。僕はどーして。


「……ごめんね?嫌われちゃったのかな?僕は大丈夫だよ。君も大丈夫だといいんだけど。あ、これね?さっき取った木苺なんだ。半分あげるね。」


ランサーは、そっと木苺をハンカチの上に置いて立ち上がりました。


「じゃあね。よければ食べてね?」


じゃ、とランサーはそこから歩いて森の奥へと消えて行きました。


「ま、ま、まっ……て……。」


慌てて出た声は小さく、ランサーには届きませんでした。


「なんで?僕はこうなの。もしかしたらランサーくんがお友達になってくれたかもしれないのに。」


ルーファはとても悲しくなりました。自分が嫌になりました。


ルーファは、家に帰る時も道からを這っていた蛇くんを見て震え、いたずら子リスが上から木のみを落としてきたのを見ては震え、そんな自分が本当に嫌でたまりませんでした。




ーーーあくる日の朝。


「今日は、どんぐり池に行こう!遠いからお弁当を持って……昨日もらった木苺も持って行こう。」


ルーファはそう決めて、出かける準備をしっかりとしてどんぐり池にむかいました。


どんぐり池までは、少し遠くてたぶん着くのは夕方。


ーーでも、ちょうどいいよね?満月って言ってたもん。夜ってことだよね。


テクテク、テクテク歩いて行くと昨日みたアライグマくんがいました。


「おい、ランサー。それよこせよ!」

「ライタくんは、これが食べたいの?」

「食べたくなんかない!でも、おれがもらってやるよ!」

「食べたいならわけてあげるよ?でも、食べないならもったいないよ。」

「うるさい、うるさい、うるさい。よこせ!」


アライグマくんは無理矢理、ランサーくんからカゴを奪い取ると、中のものを地面にぶちまけました。

それは、昨日もらった木苺でした。


「なーんだ。木苺か。いーらね!」


そう言ってアライグマは、木苺を踏みつけながら笑って行ってしまったのでした。


ーーアライグマくん、ひどいや。でも、なんかなんか……すごい。


「はあ、もったいないな。」


ぐちゃぐちゃになった木苺をランサーは丁寧に拾ったあと、土を掘って埋めました。


「ごめんね、せっかく摘んだのに食べることができなくて。」


ーーランサーくんはアライグマくんに怒ってないのかな?

アライグマくんが強いから?


ふうとため息をついて、ランサーもいなくなりました。


ーーアライグマくんみたいになれたら、みんなと仲良くなれるのかしら?


テクテク、テクテク。


途中でお弁当を食べて、またテクテクテクテクと森の奥へと歩きます。

ルーファがようやくどんぐり池に着いたとき、あたりはうっすらと暗くなりはじめていました。

ゆっくりとお月様が登りはじめます。

お月様の下には虹がいつも見えます。

お月様の器のように。

どんぐり池に映る虹は、反対に見えました。


ーーお月様が虹の帽子をかぶってるみたい


ルーファはそう思いました。


「やあやあ、きたね?ちょうどいい。池をのぞいてごらん?

自分のなりたい自分にをおもって。」


昨日会った妖精が話しかけてきました。


「わ、わかった。」


ルーファは、妖精の言う通りにしました。

なぜって?

ずっと、話すのが怖かったから。

ならさっさと済ませてからなら、『なりたい自分』だから、お礼が言えるとおもったのです。


ルーファは、言われたとおりになりたい自分を思いました。


ーーアライグマくんみたいにはっきりと言うことができるように!


するとどんぐり池が光りました。

次の瞬間、アライグマくんになっていました。


ーーえ?アライグマくんだ。


「おい、お前。それをこっちに貸せよ!」


ーー僕が言っているの?


ルーファは、不思議でした。たしかに自分はアライグマくんなのに、勝手に口が動くのです。

そして、簡単に暴力を振るうのです。


「痛いよ、やめてよ。これは、大切だからだめ。やだよ。」

「よこせよ!」


無理矢理、木の実を奪い取るとリスを蹴飛ばしました。


「ライタくん、だめだよ。これをあげるからそれはリイくんに返して。」

「うるさいやい!」


優しいきつねのランサーくんも蹴飛ばしました。


ーーどうして?僕はこんなんじゃない!ただ、みんなと!


「ライタなんて大っ嫌い!」

「ライタなんて、いらない!」

「ライタなんてでてけ!」


森の動物たちが口々に言います。


「みんな、酷いこと言っちゃだめだよ。」

「ランサーくんが一番、ひどくされてるじゃない。」


ランサーは傷だらけでした。

優しいきつねのランサーは、ひとがよく、いつもアライグマのライタに酷い目にあっているのです。

みんなが言う言葉から、それがルーファにもわかりました。


ーー嫌だ。みんなに嫌われるくらいなら……!

アライグマくんは強いんじゃないんだ。こんなんじゃ!

もとの熊に戻りたい。


そうルーファが思ったとたん、夢から覚めるようにルーファは、ルーファでした。


ーー夢?


あたりは暗く、お月様はすでになく虹も消えていました。


「真っ暗。怖いよ。怖いよ。」


妖精もいない真っ暗な池は、暗い暗い鏡のようでした。

池の中から声がします。


「なりたい?ねえ?おいでよ。」


ルーファは、怖くなりました。


「僕は、僕でいい!」


ルーファは、初めてはっきりと意見が言えたのです。


パリンっという音がして、明るい月の光が戻ってきました。

そして、ルーファは思いました。


ーー怖くても怖くても、お礼を言う。もう、遅いかもしれないけど。でも。


ルーファは決意しました。


ーー真っ暗な森の方が怖い。

ーーはっきり言うことができても乱暴してみんなに嫌われることの方が怖い。


だから、怖くても話しかけてみようと。




そして。




「あ、あの!」

「熊さん。僕は美味しくないよ?」

「ちがっ、あの。この前はごめんね。あと木苺をありがとう。まだ、あるの。一緒に食べない?」


きつねのランサーは目をまん丸にしてから。


「ふふふ、いいよ。僕はランサー。君は?」


ランサーが名前を聞いてきます。

そして、今度こそ逃げずにルーファは答えました。


「僕はルーファ。熊のルーファ。あ、あの友達になってくれる?」

「うん、もちろん。」


ルーファはようやく友達ができたのでした。



以後、ランサーや森のみんながアライグマくんにいじめられることはなくなりました。

自分より大きな熊のルーファを見て、アライグマのライタも乱暴するのはやめたようです。


ルーファはあれから妖精に会ったことはありません。

あれが夢だったのか、魔法だったのかもわかりません。

でも、誰かになってもそれは『誰か』でしかなく、自分ではないと気がついたルーファはもう自分以外の誰かになろうとは思いません。


ーー相変わらず怖がりだけど、でも一つずつがんばろう。


ルーファはそう思うことにしました。それにルーファには優しい友達ができましたから。




そんな不思議な森でのお話なのです。









……童話になってますかね。

どうなんでしょう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ