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猫憑き少女とタソガレ探偵喫茶

猫憑き少女とタソガレ探偵喫茶

作者: 島田莉音


最近、忙しく連載中の作品が不定期になっているのに申し訳ありません‼︎

ちょっと息抜きで、こんな感じの(非)日常系(多分、ほのぼの)探偵喫茶モノを書いてみたかったんです……。

取り敢えず、忘れないように短編で概要っぽいのを掲載させて頂きます。やる気や著者の余裕、リクエストがあれば連載版にチャレンジしようと思います。

よろしくどうぞっ‼︎






どこにでもある様な平凡な町。




子供達は学校帰りに楽しそうに笑って、主婦達は夕飯の準備に取り掛かり、仕事終わりの人達が疲れた顔で家に帰る。

そんな夕暮れ時の光景。

平凡で、普通な町並みはどこか突飛つするものもない。

ただ、鮮やかな茜色に染まっているその光景は当たり前だけどどこか綺麗で。



夕暮れ時。

もう少し経って、世界が黄金に染まれば黄昏時。



それはお伽噺のような噂。

黄昏時の路地裏には、人には解決出来ない悩みを解決してくれる探偵がいる喫茶店が存在するという。

しかし、その喫茶店は人ならざるモノ達の憩いの地。

気をつけなくては、食べられてしまうのだとか。



この町に細々と伝わる、都市伝説のようなもの。

そして、人には解決できない悩みを抱える者達が縋るしかないお伽噺ハナシ



そうして、彷徨って彷徨って……。

やっと辿り着く。

日差しの届かない路地裏の、古びたアンティーク調のお店。

出入り口の茶色の扉に、小さくかけられたネームプレート。



〝タソガレ探偵喫茶〟




スローペースのジャズの音楽と漂う珈琲の匂い。

茶色をベースとした店内にはカウンター席とテーブル席があり、シンプルな内装ながらも落ち着いた雰囲気があって。



そしてそこには……探偵と、妖と、猫憑きがいるのだ。









「聞いてよぉ、有人ありひと君っ‼︎」


長く伸びた真っ黒な髪に、野暮ったいカーディガン、ブラウス、スカートを着た女性がカウンターに腰掛けながら大声で言う。

カウンター内にいた黒髪黒目の、バーのマスターのような格好をした青年は呆れたように溜息を吐いた。


「煩ぇ。大声出すな、他の客の迷惑だ」

「あたしも客なんだけどっ⁉︎」

「失恋相談しに来た奴が客だと?」

「まぁまぁ。落ち着きなよ、有人」


黒髪の青年……有人を宥めるのは、白いシャツに黒のショートエプロン、黒のズボンを履いた白髪金眼の美青年。

人ならざる美しさを持つモノ。

彼は彼女の隣に座って微笑んだ。


また・・失恋したのかい?口裂け女・・・・さん」

「………うわぁぁぁあっ‼︎さり気なくスメラギさんも失恋の心を抉ってくるぅぅぅ‼︎」


柔らかく微笑んでいるのに、不気味さえ感じさせる笑顔はどこか腹黒そうで。

有人はギロリッと白い青年……皇を睨んだ。


「おい、皇。余計に煩くなっただろーが」

「おや?傷つけたつもりはないんだけどね」

「この腹黒ドS野郎」

「あははっ。褒め言葉として受け取っておくよ」


にやりと腹黒そうな笑顔を浮かべる皇を見て、辟易とした顔をする有人。

だんだんと収拾がつかなくなってきたそんな中、からんからんっ……とドアが開いた音がした。



中に入って来たのはセーラー服にパーカーを着た、黒髪黒目の可愛らしい顔立ちの女子高校生。

だが……彼女の身体には、ゆらゆらと揺れる猫の尻尾と耳が存在した。



「あれ?里子さとこさん、どうしたの?」

「もぅ、みーちゃん聞いてよっ‼︎この女心の分からない男達がぁぁぁっ‼︎」


里子と呼ばれた口裂け女は、彼女の元へと走り寄ろうとする。

しかし、それよりも先に有人は「《縛》」と呟いた。


「ぎゃあっ⁉︎ちょっと有人君‼︎」


その一言で里子は動けなくなる。

ジト目で彼女は睨むが……有人は気にする様子もなく答えた。


「煩い。今、美琴みことに抱き着いたら仕事にならなくなるだろ。大人しく待ってろ」

「えっと……ごめんね、里子さん。すぐに着替えてくるから。そしたらお話聞くよ」

「うぅぅぅ……みーちゃん、待ってるわぁぁぁ……」


美琴はそのまま裏手に回って、その場から去る。

それを見ていた里子は、さっきとは打って変わって落ち着いた様子でカウンター席に頬杖をついた。


「みーちゃんがここで働き始めてもう二ヶ月だっけ?直ぐに辞めると思ってたのにねぇ?」

「そうだね。彼女は猫憑き・・・とはいえ普通の女の子だ。有人もよく辞めさせないね?」


ニヤニヤと笑う妖達に、有人は呆れたように溜息を吐く。

そして、静かに答えた。


「仕方ないだろ。間違えて・・・・俺の式神にしたんだから」

間違えて・・・・ねぇ〜?天才陰陽師の有人君が初めてミスったんだもんねぇ〜」

「いやいや。存外、本当に間違えて・・・・しまったのかもしれないよ?猫さんが可愛いからって」

「………テメェら…喧嘩売ってんなら買ってやるぞ。まとめて祓ってやる……」

「「ごめんなさーい」」


楽しそうにケラケラと笑う妖達を尻目に、有人は大きな溜息を吐いた。
















この喫茶タソガレは、人ならざる者、人には解決できない悩みを抱える者、あるいは……不思議な縁を持つ者が集う。


叶わぬ恋と知りながら恋をする妖や。


何故、自分がここにいるかが分からない死者。


不思議な現象に悩まされる者。


または、この喫茶店を利用しようと画策する者。


様々な何か・・を抱えた者達が集まるのだ。



そんな喫茶店を営むのは、今だに裏社会で暗躍する陰陽師達の中でも群を抜いて優秀であった……元陰陽師の探偵と。


長い、永い刻を経て……探偵の行く末を面白がり、好奇心からこの喫茶店で働く(遊ぶ)腹黒大妖怪と。


………そして……とある理由から猫憑きとなり……その探偵の式神となった高校生の女の子。










この町には噂がある。



黄昏時の路地裏には、人では解決出来ない悩みを解決してくれる探偵がいる……喫茶店があると。




これは、このタソガレ探偵喫茶で起きる……不思議で、優しい……様々な黄昏えんの果てに繋がる物語。






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― 新着の感想 ―
[一言] ゆったりとした雰囲気のあるシーンが、文章から伝わりました。こんなところで珈琲を飲んでみたいですね。続き期待しています。
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