俺の幼馴染は?
俺は息を吸うことさえ忘れて、彼女の美貌に目が釘付けとなっていた。
サラサラとした美しいブロンドヘアーに、きらきらと輝くヘーゼル色の目、白く透き通るな肌、目鼻立ちは整っていて、非の打ち所がない。
彼女は俺のことをどうやら知っているようだ。だが,当の俺は彼女のことを知らない。
どうすればいいことやら。
無視するのは失礼だなと思い、とりあえず英語で挨拶をしてみた。
「Good Morning! How are you doing?」
わざわざ英語で挨拶したのは、もしかしたら彼女は無理をして日本語で挨拶してくれたのかもしれないと思ったからだ。もしそうであるならば、お互いある程度しゃべれるであろう英語で会話するべきだ。
彼女は一瞬キョトンとする。そして次の瞬間、腹を抱えて笑い始めた。
「急にどうしたの航、英語で挨拶なんてしちゃって」
彼女は涙をぬぐいながら、必死に笑いをこらえながら聞いてきた。
「冗談を言ったつもりはないんだが、君は日本語での会話は大丈夫なのか」
「航こそ大丈夫?変なものでも食べたんじゃない?そもそも英語ってもう少数民族でしか使われてないんだけど。それより、早くしないと学校遅れちゃうよ」
彼女は俺の手を取り、走り始めた。
それにしても大胆だな。いきなり男の手を握るんなんて、幼馴染の晴香でさえしなかったのに。
彼女のすぐ斜め後ろを走る俺のところからは、彼女の表情は見えない。しかし、なんとなくだが彼女は笑っているような気がした。
しばらく経ってから分かったのだが、彼女は俺の幼馴染でアリス・ソロ。両親は共に東ヨーロッパの出身で、生まれは日本のようだ。
彼女は、数年後テニスの四大大会の一つウィンブルドン選手権で優勝し、後にグランドスラムを達成した数少ない女子テニス選手の一人となるのだった。