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転生者に最後の挨拶を。

作者: GT86くん

どうも、亡くなった人の残された側の人の物語とかこれから前を向いて進んでいく感動系が好きです。転生系でもこんなことが起きればな、と思っております。

転生 最近よくこの単語をみる。 異世界転生であったりだとか、死んだら物語のキャラに憑依転生してたりだとか。ようは生まれ変わりである。


しかし、そんな転生した彼 彼女たちは死んでから神に会い、親に何も言わず旅立つのは少し可哀想ではないか?


これは最後の挨拶をプロデュースするお話。





【氏名】 山本タケル

【死因】転生トラック

【転生先】異世界ファンタジー







俺はあの時、トラックに轢かれなぜか白い空間にいる。なんだここは?これが俗に言う神の空間なのだろうか。 なるほどあれは巷で噂の転生トラックと言うやつか。


別段あれは珍しいものでは無いな。某漫画サイトでもトラックが来た瞬間に【ハイハイトラックトラック】とか【い つ も の】とか騒がれてるものだ。こんな神からしたらポピュラーなものなのかもしれない。死因にポピュラーがあっていいのかは別として・・・。 いいのか?それで。


そんなことを考えてくると突然、幼女が姿を現す。


「いやぁ、すいません遅くなりまして。」

うわっ。とても、幼女、です。・・・

いや、そんなことはどうでもいい。たしかにいきなり現れたのは5歳児程の幼女だが、人が死んでから来たのだ。神とかそんなたぐいだろう。


「はい、そうですね。神とかそんなたぐいですよ。名はないですが」


え?この考え筒抜けなの? え?マジで?俺が愛車を【たん】読みで密かに呼んでたこともまさか・・・

「いや。あなた車に【たん】をつけて呼んでたんですか・・・。てそんなことは置いといて。ワタクシ!最後の挨拶を担当させていただきます!どうぞヨロシク!」


あ、はいよろしくお願いします。にしても元気いいな。で最後の挨拶ってよく心霊写真に出てくるあれ?


「はい!大体アレです!そうですよ!で、いきなりですが誰に会いたいですか?」


いきなりなんだな・・・。まぁ、でもおじいちゃんかなぁ。車直したばっかだし。俺がこんな車バカになったのだいたいあの人のせいだしね。


「そうですか。わかりました!ではいってらっしゃいませ!」


え?で、この穴なんですか?


「タケル様!ボッシュートです!」


嘘だろおおおおおおおおおおおお。







ーーーーーーーーーー


「タケルのやつ、俺よりも早く逝きやがって・・・」


今日、孫のタケルのお通夜が終わった。お葬式だったりそんなのも終わり。タケルは焼かれて骨になった。 遺体の方はトラックに轢かれたのにとても綺麗だったという。それが救いだった。誰しも孫がぐちゃぐちゃになったのを見たくはないだろう。しかし、あいつは良い奴だった。長年乗ったワシの車を廃車にするって言ったら血相を変えて「俺が乗る!」ってその後も自分で整備して。


その車もこっちに置いて。そのままとは・・・。さて、この車とも最後じゃし。ドライブにでも行くか。


そう思ってから30分。一向にカギが見つからない。カギと言っても現在の車に多いスマートキーではなく。昔の車のキーなので差し込み式の奴だ。しかし、スペアは都会の孫の家にあるし、キーホルダーが着いたいつも使っていたやつがあったはずなのだが。


「ない・・・」


そう、【ない】のだ。孫が引き出しに入れとくなとそのまま触らぬまま置いていたはず。しかし、引き出しには雑草のような草。


「おや?どうしましたじいさん。」

「あぁ。車のカギを探しとってな。ここにあいつが入れたはずなんだが草しかなくてな」

「ん?あぁ、あんたこれ草じゃないよ。花ですよこれ。ダイヤモンドフロストっていう。」


「ダイヤモンドフロスト?」

「えぇ、たしか花言葉が」


きみにまた会いたい。


その時、玄関のドアが開く音がした。一瞬泥棒かと思ったがそんな悪意はなく、心が安らぐ。それは孫が来た時と同じ開け方、力加減だった。 まさか。と思い。ワシの車に行く。


「あなた、どこに?」

「あぁ、大バカ野郎が来てる。とても馬鹿なヤツがな。最後になるかもしれんから挨拶してくる」

「そうですか。」






外に出ると、風はなく意外と心地よい外気温だった。そして月明かりに照らされたワシの車を見るとひとりでに運転席のドアが空いていた。


そうか、やっぱりお前か。


そして、ワシも助手席に座り込む。


そしてここになって静かな車内で色々なことを思い出す。


お前が小さい頃によくこの車で出かけたなぁ。 あの神社の桜もよかった。墓参りに行くか?と聞いたら笑顔で行く!と。墓に着いたら着いたであんなに走り回って墓で迷子になるし。お前が足を捻挫した時、学校への送り迎えもしたっけ。


そんな思い出に浸りながら最初の一言をボソリと呟く。

そこには誰もいないはずなのに、エンジンキーだけがしっかりと差し込まれていた。


「エンジン、かけてくれないか?お前が治してから、つけてないから」


誰もいない。そう、誰もいないはずなのだ。しかし、途端にキーが周りエンジンがかかる音がし、エンジンがかかる。

6気筒セダン独特の低い音を車内に響かせ。車のメーターなどに電気の光が灯る。

しかし、どんな奇跡か。エンジンがかかると運転席には孫がいた。


「ほんとに死んだんだな」

「うん。ごめん。」

「ほんとにお前はバカなヤツだ。勉強しろと言ってもゲームばっかり」

「あ、あの時はいいだろぉ。勉強は別でしてたって」

そう、昔の話をされて苦笑いで孫が返す。

「ほんとに・・・」


「ほんとにッバカなやつッ・・・。」

「うん・・・」

不思議と言葉が出てこない。どうしても伝えたいことがあるのに。涙がそれを邪魔をする。ワシはなんでこんな時に泣いてるんだ。あの時言えなかった事を言うチャンスが来たのだ!ここで言わねば次は来ないであろう。孫はどこかへ旅立つのだろう!ならばここで、今ここで言うのだ。


「タケシッ!車、ありがとうッ。」

「じいちゃん。」


そうあの時言えなかったのだ。ワシも用事があったし。孫も久々に友達と会う予定があった。礼は帰ってきてからでいいと。そう思っていたが例は言えなかった。孫はその帰りに事故にあった。

「なぁ、じいちゃん。俺さ。こんなにも車好きになれたのじいちゃんのおかげだよ。だからさ、これだけ言いに最後にここに来たんだ。」


「じいちゃん、今までありがとう」


そう言ったあとエンジンが切れた。恐らくガス欠だろう。

もとより整備して知り合いのトラックに運んでもらってガソリンスタンドに行く予定だったのだ。ガソリンは全然入ってない。


エンジンが切れたと同時に孫の姿は消えた。あれが現実だったのか。もしくは疲れきった老人が見た夢なのか。今となってはわからない。


しかし、キーホルダー付きの車のカギはしっかりとハンドルに突き刺さっていた。

ちなみにおじいちゃんの車のイメージはトヨタ マークIIの最終モデルです。たしか型式はX110だったと思います。ググってみてください。

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