PR ハーフサキュバスと妖精剣士たち 出立、再び
第三章、開幕します。
メイプルたちがド派手に出立した日の夕方近くのこと。
ハーフサキュバスの上級冒険者こと、アニス・レイグリッドは、ラベルへ帰還した。
あの日、大急ぎで親戚たちの住処へ向かった彼女が見たのは、すでにもぬけの殻となった洞窟だった。
エルナがここを見つけてしまったのだろうと考え、最悪の事態を想定して顔を青くしたが、本人は気が付いていなかった。
何とか転移の跡を感知して追った先で、親戚や友人たちから熱烈な歓待を受けたまではよかった。彼女たちから、エルナらしき冒険者は逃げたと聞いて、もうここに用はないと帰ろうとすると、従姉に笑顔で引きとめられてしまった。帰りが遅くなる予感がしたものの、友人の生存と、重要な情報を教えてもらった手前、やれる範囲で手助けをしようと思ったのだが……。
その後、引っ越し完了の手伝いをさせられたり、姪っ子たちを始めとする子どもたちから昔話や冒険話をせがまれて話したり、引っ越し先の安全確保のために戦わせられたり、いい加減にいい人を見つけなさいだとか姉たちにからかわれたりと、忙しい毎日だった。
気が付けば二、三日くらいだろうと踏んでいた滞在は、七日にも及んだ。昔から知る従姉たちは嫌いではないし、しばらく見ないうちに大きくなった姪っ子たちが顔を覚えていてくれて、懐いてくれているのも悪い気はしなかった。滞在が長引いた要因の一端は、アニス自身にもあった。
「これじゃあ逆に、エルナから心配されちゃうわね」
独り言をこぼし、親友が自分の帰りを心配して待っている姿を想像して、首を振った。
「私のことを信頼しているから、たぶん、そこまで心配はしていないかも」
ともあれ、彼女が無事でよかった。今はそれだけを喜ぼう。
帰ったら、うんとハグしよう。それくらいは、エルナも許してくれるはずだ。きっと。
疲れを表に出さず、軽くため息をついて門を潜ろうとしたところで、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「あれ、アニスじゃん!」
「ん?」
振り返ると、シーフの少女ナンナや、彼女のチームであるフリージアたちが少し驚いた様子でアニスを見ていた。
「久しぶりっ! どこに行ってたのよ?」
「ちょっとジョギングに」
「いや、ジョギングでこんな長期間、留守にはしないと思うが……」
剣士アナの静かな突っ込みを無視して、アニスは門を潜ろうとする。門番たちも戻ってきたアニスの言い分に首を傾げているが、彼女は気にしない。
そんなことよりも、エルナに自分の無事を知らせる方が先だ。
それに、色々と聞きたいこともある。エルナなら知っているかもしれないのだ。
あの子は優しいから……きっと……。
だが、アニスの想いは、崩されることになる。
「あ、そうだ。エルナから伝言があるんだけれどさ」
「何?」
「えぇと、『保護した商人の兄妹を送り届ける旅に出るので、しばらく戻れないけれど、心配しないで』って――――」
「……ぇ?」
ぐりんと体ごと振り返ると、フリージア以外の三人が顔を引きつらせて一歩退いた。
「本当。エルナちゃんは、ハルキさんとカエデちゃんっていう商人さんを助けるために旅に出た」
「あ、セイジュさんも一緒なんですよ。なんでも、かなり遠い場所なんだそうです」
無表情無感動を貫くフリージアが淡々と、勇気を出したディーがしっかりとした口調で説明すると、アニスもどこか危なげな気配を消した。
代わりに、探るような目つきになり、フリージアたちの前に立った。
「ねぇ、そのハルキとカエデって、どんな人たちなの?」
ハーフサキュバスにして、上級冒険者アニスが再びラベルを出立したのは、それから数分後のことであった。
お読みいただきありがとうございました。
次回で100話……頑張るぞいっ!(ぇ
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