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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第二章 サキュバスとエロ漫画野郎とクッコロさん
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EP2 サキュバス一行とクッコロさんと破壊神 さぁ、冒険に出かけよう

第二章終幕です。

 冒険者ギルドのエントランスに着くと、何人かの冒険者と、数名の受付嬢さんに見られた。

 その中に受付嬢サンダースさんがいて、目が合うとほほ笑んで手を振ってくれたので、目礼しておいた。

 うーん、フリージアたちはいないが、いつでも出発できるように挨拶はすませているから、よしとしよう。アニスさんへの伝言もそのままにしてある。


 さて、いざギルドから出ようとしたところで、正体を隠すためにマントを頭から被ったリアさんからストップがかかった。


「全員、ここからは隠蔽魔法は使わずに進め。そうでないと訓練にならんからな」

「わかりました」


 冒険者ギルドのドアを開けると、少し過ぎたラベルの街並――中央広場の様子が道路の先に見えた。


「敵の位置情報を見せるわ。リア、それくらいいいでしょ?」

「ふむ、お前はそれが使えたのだったな。事前に止められなかったことだし、今回はまぁよしとしよう」


 俺たちの見ている景色の中に、薄く赤い丸がいくつも出現した。距離やどこに隠れているかが何となく把握できる。構造把握が使用されているようで、目の前の建物に隠れている奥の建物の位置や形もわかった。


「見逃している可能性は?」


 セイジュさんがエルナと共に周囲に目を向ける。もうすっかり慣れたようで、これくらいでは驚かなくなっている。ようこそセイジュさん、非常識側が常識(こっち)の世界へ。


「万が一っていうこともあるけれど、もしそれくらいの手練れがいるなら、そいつをどうにかして突破するわよ。試練なんだから」


 メイプルはそう言って俺の背に負ぶさり、左肩(定位置)から顔を出した。


「じゃあ、街の人に見られず、迷惑がかからない程度に、派手に行くわよ!」

「「「おぉ!」」」

「うむ、全力で出発するといい」


 俺たちは身体強化を施すと、建物から跳躍した。その瞬間、現れる黒マントたち。隠蔽魔法を使った奴も察知できるし、仕掛けられた魔法トラップもわかった。

 駆け出すと、刺客たちも並行して動き出した。


「ドロケーってやったことある? 私、あれで捕まったり、捕まえられなかったりしたこと、一度もないのよね」

「地味に凄いなお前」

「と言う訳で、指一本でも触れられたら、その回数掛けるスクワット十回ね。聖域魔法の設定、少し変えておくから」

「はっ! ならメンバー全員(Squad)でノーミスクリアするだけだ」

「うむ、その通りだ!」

「セイジュさん、来ます!!」


 様子を見ていた刺客の何人かが、聖域魔法による近寄りがたさが薄まったのを感じたようで、魔法を撃ってきたり、接近して来たりする者たちが現れた。

 それを、俺たちは危なげなく躱し、駆け抜け、魔法や武具で相殺していく。刺客たちが、少し驚いていた。その視線の先にいるのは、俺やメイプルではなく、エルナだ。

 刺客たちは、エルナを捕まえて人質にでもして俺たちを止めようとしていたのかもしれない。だが、そうは俺たちが、何よりエルナが許さない。


「ふふふ、男子三日ならぬ、女子、数時間会わざれば括目してこれを見よってね!」


 邯鄲の夢システム(仮)で、リアさん直々に鍛えられたというエルナは、最初こそ動きが少しぎこちなかったが、すぐに滑らかに走るようになっていた。俺が見てもわかる。昨日までの彼女の動きとまるで違う!


 それを確認した刺客たちは、ハンドサインやアイコンタクトでアプローチを変えた。先ほどよりも連携を強くし、不意打ちや仕掛けた罠への誘導など、あらゆる手を惜しみなく出してきた。


「ウインドッ!」


 しかし、エルナの風魔法が刺客たちの接近を許さない。威力や、恐らく精密さも向上しているようだ。渦巻く風が、入れ代わり立ち代わりするように動いているように見えた。これは中々近づけないだろう。エルナ、やっぱり凄いよ。


「よっ!」


 魔法が阻害されそうになったら、メイプルが使用者たちを空高く舞い上げさせた。そいつらはしっかりと鍛えられた刺客の中の刺客らしく、驚いた様子を毛ほどにも感じさせない。が、魔法阻害を無視して魔法攻撃を受けたことに強い疑問を抱いてはいるらしい。危なげなく屋根や歩道に着地して、メイプルを凝視している。

 と、ここでいい加減、街の人たちも屋根上の騒動に気付いてきたらしく、何事かと声が上がり始めた。


「あはははっ! 見られてるわよ!」

「だろーな!」


 刺客さんたちが街の人たちに見られないように動こうとするが、地上に落とされた者たちを、近くにいた者たちが軽い悲鳴や驚きを以て出迎えていた。

 すぐに物陰に隠れたり、屋根に飛びあがって復帰してきたが、中には怒りの感情で動いている奴もいた。わかりやすい。セイジュさんに魔法で狙撃されて崩れ落ちた。


「まだ若手のようだな。これから精進してもらおう」

「あ、はい」


 セイジュさんの情け容赦のない判定に頷きつつ、ジャンプして数メートル先の屋根に着地しながら駆け抜ける。

 すると、シャーリィの宿屋の屋根が見えてきた。彼女たちの一家とも、昨日のうちに挨拶を済ませているが、一つ、約束があった。


「あ!」


 眼下から聞こえてくる女の子の声。店先に出たシャーリィが、他の街人たちと同様に俺たちを見上げていた。

 彼女との約束。それは、街を出る際、もう一度顔を見せること。その際に、俺たちがシャーリィを驚かせることだ。


 その約束は、どうやら無事果たされたようだ。

 シャーリィは目を丸くして、エルナを見ていた。そして、一緒に並ぶセイジュさんや俺、メイプルに、口を開いて……


「エルナさーん! みなさーん!! いってらっしゃーい!!」


 シャーリィが大きく手を振りながら、大声で見送ってくれた。

 エルナは……いや、顔を見るのはやめよう。こらメイプル、お前も回りに集中しろ、今更だけど。


「元気でね、シャーリィ」


 届かない声音で言いながら、エルナは妹分に向かって振り返る事なく、手を挙げて応えて見せた。


 その間に、俺はシャーリィに向けて魔弾を撃っておいた。それを見た刺客の一人が彼女を庇うために動いた。おっ、すげぇ、アレに反応したぞあいつ! だが、刺客はメイプルの放ったチェーンよって身動きを阻害される。シャーリィ自身は、気づかないうちに俺の魔弾を受け……何事もなく手を振り続けていた。束縛された刺客がぽかーんとしている様子が見えた。


「すまん、それ、魔除けだから!」


 チェーンに俺の声を伝わらせると、刺客は俺を見上げ、シャーリィを見て、またこっちを見て、驚かせるなと言いたげに肩を竦めると、おとなしくその場に座り込んだ。メイプルがチェーンを外してやったようだが、その時には彼or彼女の姿は建物の影に隠れて見えなくなった。いい人、だったな。うん。


「暗部としてはどうなのかしらね?」

「今回は我々、逃走する目標の捕縛訓練も兼ねている。目標を追いかける際に、被害者が可能な限り出ないようにするのも仕事の一つだ。結果的には失敗だったが、魔法に気付けたことは評価できる」


 セイジュさんの好意的な評価を聞きながら、俺ももう少し改良を加えようと思った。


 そして、シャーリィとの約束が果たされた今――――――――。


 加減する必要はなくなった。


「メイプル、アレを使う」

「えぇ、よくってよ」


 わぁぁぁと叫ぶことなく、それをイメージする。

 ただし、発動はまだだ。

 代わりに、速度を上げる。もう振り返る必要はない。刺客たちの間に、初めて大きな動揺が走った。こちらの動きを捉えられた者は、数えるほどで、そいつらもセイジュさんのウインドで吹き飛ばされていた。魔法阻害は魔弾でぶち抜いておいた。


 そして、アッと言う間に門前にたどり着いた。一般人に紛れた刺客たちが少なからずいるが問題ない。

 俺がようやくそれを解放したその瞬間、視界に入っている刺客が全員動きを止めた。彼らが驚いている間に、セイジュさんが門番に手続きを行い、メイプルとエルナが牽制し続ける。


 ロールが使っていた魔眼だ。

 威力・効果を調整して、視界に居る敵対者の動きと魔法発動を止めるだけに留めている。目は魔眼使用を悟り辛くさせるために、光らせていない。


「晴樹の目を見て狂うがいいわ!」

「誰が狂○の瞳と申したか」


 馬鹿やってる俺たちの近くで、リアさんは一人、腕を組んで成り行きを見守っているが、たまに飛んできた刺客側の流れ弾を見ただけで消し飛ばしていた。破壊神すげぇ。

 飛ばした刺客さんが密かに震え上がっていたので、精神回復弾を撃ちこんで落ち着かせておいた。ついでに催眠魔法も込めておいたので、命中した途端に崩れ落ちたのを、近くにいた仲間が回収していた。


「よし、出るぞ!」


 セイジュさんに言われ、門を走り抜ける。


「ハルキ君、アレを使ってくれ!」

「了解しました!」


 その時、出口の向こうに、大人数の黒マントと、ゴードンが姿を現した。

 一瞬、視線が交差した。


「来い!」


 と言われた気がしたので、笑顔でこう答えた。今朝、セイジュさんから聞いたからな。


「祝ってやるぜ色男」


 祝福の言葉と同時に、それは完了した。


 ゴードンたちは動かず、カウンターで出迎えるつもりだったんだろう。その場に突っ立ったまま、しかし自分たちの身に起きた異変に気が付いて目を見開いていた。全員、頭からすっぽりと半透明の網を突然に被せられ、それだけで指先一つ動かすことが取れなくなったのだ。

 仕掛けは簡単、ゴードンたちの足元地下深くに、ロール特製重量センサを展開・設置したため、反応して魔力の網が頭上から落ちてきた、それだけだ。


 これが俺の新たな……いや、この世界に呼ばれた時に本来与えられるはずだった力。

『罠使い』、その初歩罠の応用だッ!!

 それじゃ、後は頼むぜセイジュさん!


「フィーネと幸せにな。ウインドッ!!」


 セイジュさんも祝福の言葉を投げかけ、風魔法で彼らを吹き飛ばした。大空に舞うゴードンと刺客たち。

 ゴードンの顔は晴れやかだった。


「行ってらっしゃいませ、姫様」


 彼の口元が象る言葉に、セイジュさんはニヤリと笑い返した。


「えいっ」


 メイプルが出口付近に仕掛けられた刺客側の魔法やトラップを全部破壊したところで、俺も設置していた罠を全て戻して、門を飛び出した。


「うむっ、合格だ」


 リアさんがそう告げると、メイプルが聖域魔法を元の威力に戻した。これでもう、刺客は近づいてくる事ができない。


 そのままメイプル変装エリアと名付けた辺りまで来ると、隠蔽魔法も発動して、追跡の心配はなくなった。足跡? メイプルがそれを残すとでも?


「ようやくまともな旅に出られるわね」

「いや、これからもっとまともじゃない旅が始まるんだが」


 これまでも十分理不尽なこと尽くめだったが、この先には更なる理不尽が待ち受けているに違いない。主に魔王とか邪神とかのせいで。


「まっ、気長にやっていきましょうよ。セイジュやリアも本格的に仲間になったことだし」

「あぁ、改めて、これからよろしく頼むぞ!」

「私は仲間と言うよりも、監視者に近い気がするがなぁ」

「それでも構わない。旅は道連れ、と言うだろう」


 楽しそうなセイジュさんの笑顔に、肩の力が抜けた。

 そうだな。落ち込んでいてもしょうがない。そう思わせてしまう彼女は、やはり王女なんだろう。


「あ、そうだ。エルナはさ、セイジュさんが王女だって知ってたのか?」

「えぇ。師匠があんな感じだし、修業に身分なんて関係なかったからね」

「そうだぞハルキ君。それに私たちは邪神討伐のために旅する仲間だ。王女だとか、そういう身分はここぞと言うときにだけ活用するものだ」


 ここぞと言うときがない事を切に願うぜ。


 しかし、セイジュさんやリアさんと、こうして一緒に旅に出ることになるとはな。世の中、何があるかわからないものだ。

 それとも、これも貴女の導きですか、ナターシャさん?

 どこからか、悪戯っぽい笑い声が聞こえてきた、気がした。


「どうしたんだい?」

「いえ、何でもありません」


 そうか、と返すセイジュさん。

 思えば、タガネル・ダンジョンで出会った時には色々と残念なところが見受けられたりしたが、ラベルへ戻ってからは頼れる姫騎士然としていた。リアさんや大食いに一歩も引かずに立ち向かう姿もかっこよかったし、家族に見せる笑顔は素敵だとも思った。

 もうこの人の事を、クッコロさん呼ばわりすることはないだろう。


「よし、行先は予定通りで行こう! 私たちの旅はこれからだ!!」

「「ちょ、おまっ」」


 ってぅおいッ!

 何フラグ立つような発言してるんだよ。アンタがその関係を言うとヤバいんだってば!!

 訂正、やっぱりこの人は適宜、クッコロさんと呼ぼう。


「騒がしいなぁ、お主らは」

「すみません」

「よいよい。賑やかな旅も、たまには悪くない」


 旅好きの破壊神様はからからと笑った。


 こうして、俺たちは王様からの試練を乗り越えて、ラベルの街から無事に出ることに成功した。


「こほん、じゃあ改めて、国境を超えるわよー!」

「「「おー!」」」

「うむ? おー?」


 肩に乗った転生サキュバス幼女の掛け声と共に、俺たちは追い風に乗って、例によって街道を爆走し始めたのだった。




 さぁ、冒険に出かけよう。

 俺たちが描く、未来を目指して――――!



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

これにて、第二章が終了です。

少しでも楽しんでいただけたのであれば幸いです……が、


前回のあとがきで、「次回、第二章EP2、最終話になります。」と書きましたが、第二章の最後という意味で、お話はまだ続きます。文章力がなくて……すみません(汗)

(実は知り合いから、「え、もう終わるのか?」とツッコミが入って気が付きました)


次回から第三章に入ります。まずは、アニスさんのお話からです。



いつもお読みいただき、応援してくださり、本当にありがとうございます。

これからも、サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者をよろしくお願いいたします。

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