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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第二章 サキュバスとエロ漫画野郎とクッコロさん
95/451

8-7 サキュバス幼女一行と妖精剣士たち 何なのこの歌

今回は少し長いです。

 フリージアたちはその日、予定していた範囲の調査が早く終わったため、昼過ぎにラベルへ戻ってきた。

 門を潜ってすぐの場所に、数名の回復魔法の使い手が待機していて、怪我をした冒険者や旅人たちの傷を癒していた。


「あら、皆、おかえりなさい」


 四人に気が付いたミレイアが近づいてきた。


「うんうん、今日も怪我はなさそうね。それとも、ディー君が治したのかしら?」

「いえ、今日は回復魔法を使ってはいません」


 ディーが首を振って答えた。


 冒険者が調査へ向かうのは、危険極まりない場所であることが多い。フリージアたちが長く引き受けている依頼も、魔物や獣が徘徊する地域にある遺跡の探索だ。複数のチームが担当区域ごとに別れて調査を行うのだが、全員生傷が絶えない。


 この前は不覚をとってしまったが、あれ以来フリージアたちは動き方や仲間との連携を見直したため、今のところは、ほとんど損傷を受けることなく魔物を退けることができている。

 回復魔法の使い手がいるとしても、ほとんど怪我もなく戻って来られるのは、彼ら四人の実力と幸運が重なっているのだろう。

 ミレイアは目をかけている少女少年たちの成長に頬を緩ませた。


「よかったわ。でも、もし怪我をしたら遠慮なく言ってね。ナザリーが治しちゃうから」

「ちょっとミレイアさん?!」


 少し離れた場所からナザリーから非難の声があがるが、ミレイアはどこ吹く風で笑うだけだ。周りの人々も生暖かい目でナザリーを見ていた。


「じゃあ、僕たちはこれで」

「えぇ」

「じゃあねナザリー! また奇跡をよろしくー!」

「だからあれは私じゃないんだってぇっ!」


 ミレイアと会釈を交わすディーたちの隣で、ナンナがナザリーをからかっていた、その時。

 門前から、慌てた声が聞こえてきた。


 フリージアが何かに気が付き、誰よりも先に駆けだした。


「フリージア!」


 その後をナンナ、ディー、アナたちが続けて追いかけていく。

 再び門の外へ出ると、門番や戻ってきたばかりの冒険者たちが一方向を見て唖然としていた。

 フリージアはその優れた視力を以て、彼らの視線の先を確認する。

 そして、


「…………ぇ?」


 呆けた声を出した。


 すぐに追いついたナンナたちは、珍しくフリージアが感情を表に出していることに驚き、続けて街道を見やって、自分たちも驚いた。


 小さな岩山のような物体が、馬が走っているような速さで街道を進み、ラベルへ向かってきている。

 それは、駆け出しから初級の冒険者や旅人を治療院送りにすることで有名な、魔物と化した巨大猪だった。その大きくそそり立った一対の牙は、見る者に畏怖を与える。

 その猪の前を、一人の冒険者の少女と、旅人らしき青年が走っていた。まさか、あの二人が怒らせて、ここまで引っ張ってきたのだろうか。

 しかし、それにしては猪の走り方がおかしい。自らの足で疾駆している訳ではなく、何かに引きずられているような……。それが、ほとんどの者の考えだ。


 一方、フリージアを含む、遠くの様子がよく見ええる者たちは、そんな疑問を抱くことなく、全てを一目で理解して、驚愕に固まっていたのだ。


 やがて、昼時の街道に、風に乗って歌が聞こえてきた。

 徐々にそれは大きくなっていき、件の旅人の青年が歌っていることがわかったところで、他の目撃者たちも事態を理解した。


 その日の事を、目撃者は長く忘れないだろう。


 一人の青年が、超重量の巨大な猪を、馬のような速度を出しながら引きずり、走っているのだ!


 どこかノリがよく、聞き心地のよいリズムと、一度聞いたら忘れられなさそうなメロディーに乗せた異国語の歌が、その場にいた全員の耳に、強烈なインパクトとなって入り込んでくる。

 圧倒的な衝撃光景を前に、誰も声をあげることも、動くこともできなかった。


「ハルキさん……?」


 ポツリと、つぶやいたフリージア以外は。




「――――という事になっているわね」

「だろーな」

「そうでしょうね……」


 メイプルから報告を聞いて、俺とエルナは淡々と一言で答えた。

 朝、エルナが採取以来を引き受け、日が昇ってから山へと入り、そこでメイプルの指示に従って目標――魔物を狩っていた。

 初日に見た魔力持ちの鹿と狼を一頭ずつ倒して、最後に今引きずっている巨大猪を狩り、今日はこれで引き上げとなったところで、メイプルがこう提案した。

 猪を引きずって帰る、と。

 狙いは何となく想像がついたが、予想以上の効果に、俺もエルナもドン引きしている。


 皆、俺たちを見て身動き一つ取ってないんだが、どーするんだこれ。


 そしてその原因であるメイプルご本人は、伏せた状態で拘束された猪の背に跨り、無邪気(笑)にはしゃぐ幼女のふりをしていた。

 そして、俺はメイプルと一緒に、懐かしいゲームCMの歌を再開した。

 それに、エルナが一言。


「ところで、何なのこの歌……」

「宣伝の歌」

「何の?」


 エルナが遠い目をしながら、律儀に一緒に走ってくれている。なんかスマン。時々それっぽく口ずさまなくてもいいから。しどろもどろになって鼻歌になってるから。可愛いけど。無理しなくていいぞマジで。


「よし、ここからはト○ロで行くわよ」

「ミスマッチ過ぎる選曲やめーや」


 走ってるのに歩いてるとかどんな状況だよ。


 なんて俺たちがやっている間も、エルナは一人歌っていた。

 声を張り上げて、頬を染めて、つっかえながらも歌ってくれていた。

 俺たちが始めたことなのに本当に申し訳ないっ!!


 その後はエルナと一緒に歌いながら門までたどり着き、フリージアたちに軽く手を挙げた。


「おっす、四人とも。どうした?」

「ハルキさん、それは何?」

「ん? タクティカル・ボアだな」

「うぅん、そうじゃなくて、何でタクティカル・ボアを引きずっているの?」


 フリージアが無感動に猪を指差す。

 メイプル曰く、これでもかなり困惑しているらしい。あぁ、良く見れば視線が揺れいでいる。

 くっ、これも作戦なんだ……許してくれ。俺は心を鬼にして答えた。


「妹が……乗りたいって言ってな……」

「わーい、お馬さんよりはやーい♪」


 おいバカやめろ。


「そう……」

「あぁ」


 しばらく俺たちと周囲の間に気まずい沈黙が流れた。


「あ、いのししさん起こすー?」

「そのまま寝かせておいてあげなさい」

「生きているの?」


 フリージアの言葉に、冒険者や門番たちの間に緊張が走った。問題ない。

 エルナが一歩前に出て、依頼書の写しを皆に提示した。


「捕獲の依頼を受けたの」

「捕獲……って、あ、本当だ」


 硬直から解放されたナンナが写しを覗き見て、嘘、と言いたげに目を見開いた。


「待ってエルナ。ハルキって、確か商人よね?」

「えぇ、そうね」

「いやいやおかしいでしょ!! なんで、一人鎖で引きずってるのよ?! そもそも素人二人を連れて依頼に行っちゃだめでしょ!!」


 ナンナの疑問は当然だろう。だが、それがメイプルの狙いだ。

 未だ猪の上ではしゃぐメイプルへ視線を向けると、うむっと頷き返してきた。はいはい、んじゃ、やるか。


「確かに俺は商人だが、戦えないとも、身体強化が使えないとも言っていないぞ?」

「身体強化を使ったとしても、一人で何トンもあるタクティカル・ボアを引きずるのには限界がある。それに、失礼を承知で言わせてもらうが、ハルキさんは戦う者には見えない」


 アナの冷静な突っ込みに皆が頷いた。

 その時、ディーが猪の下にある異変に気が付いて、声を上げた。


「あっ!」

「どうしたのよ?」

「これ、見てください! シールドですよ!!」


 その言葉に、その場の視線が一斉に猪の真下に展開された巨大なシールドへ引き寄せられる。


「嘘……まさか、これをずっと展開していたの?」

「エルナがやったの?」

「いいえ、私はやってないわ」

「じゃあ……」


 はい、俺がやりました。

 これのおかげで、俺はそれほど苦労することなく、そして猪を傷つけることも起こすこともなく運搬することができたのだ。


「嘘……でしょ……」

「何かの間違いではないのか?」

「うそじゃないよー♪」


 ここでメイプルが猪の体を滑り降りてきた。楽しそうだな、おい。


「それに、このいのししさんをたおしたの、おにいちゃんだもん♪」


 えっへん! と胸を反らして自慢する妹……のふりをする転生サキュバス幼女。とても可愛いのに、その裏側で爆笑するのを堪えている本性を知っているが故に、俺とエルナは遠い目で見守ることしかできないのだ。


「倒したって……どうやって?」

「それはぁ」

「それは?」

「きぎょーひみつですっ♪」


 きゃーと笑うと、メイプルは俺から鎖を受け取り、引っ張りやがった。シールドに乗った数トンの猪が、するすると動き出した。

 うん、だろーな。


「んじゃ、俺たちはこれで……」

「カエデ、あんまり先に行ったら皆が驚くわよー」


 俺とエルナはもうどうにでもなれとメイプルの後を追った。多分、今の俺たちを漫画的に表現すると、ハイライトが消えているだろう。精神ダメージが、良心の呵責が凄い。


 しかし、それ以上の精神ダメージを受けている者たちがいた。

 門前メンバーたちである。


「……すごい」


 フリージアの、無感動なのに本気でびっくり仰天していることが何となくわかるつぶやきが、やけに大きく後ろから聞こえてきた。

 本当に、本当にすまないと思っているッッッッ!!


 だが、作戦は成功した。

 頼むから明日、試練とか与えないでくれよ、王様。暗部の人たち、目を点にして固まってたらしいから……。


 そしてこの後、街の人たちの度肝も抜いて、ソーシャさんにいくらなんでもやり過ぎと怒られた。

 はい、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁっ!!!



メイプル「あ、王様が頭を抱えてるわよ。計画通り……!」

晴樹「あぁ、そりゃ抱えるだろーな」

エルナ「ねぇ、晴樹、この歌の意味って」

晴樹「エルナ、もういい。もういいんだ……」


ようやく、これ……出せました……。


あぁっ、ダンジョン飯が……アニメ化……じゃなくて最新刊CMだったぁ……でもうれしい。

あれは……すこぷりんせすが……CMしてる……ッッ?!(困惑歓喜

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