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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第二章 サキュバスとエロ漫画野郎とクッコロさん
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8-5 サキュバスと冒険者 もっと楽しくなりそうね

本日二つ目です。

「ところでセイジュ、ゴードンはやり過ぎていなかったかしら?」


 戻ってきた侍女が注いだお茶を楽しんでいたルナージュの質問に、セイジュは肩を竦めてみせた。


「やり過ぎて、ハルキ君にキツい一撃をもらっていました」

「まぁっ! あの子ったら、一体何をしたの?」


 ルナージュは一為政者として、人を見る目には自信がある。彼女から見て、晴樹はとても温厚で、悪く言えば世間知らずだが、お人好しで好感が持てる少年だった。

 一方のゴードンも、無愛想だが、貴族や騎士の地位だからと必要以上にえばらず、領民や国のために働く真面目な青年である。

 突然現れた勇者の実力を測ろうとすることは予想していたが、どんな事をして晴樹の怒りを買ったのだろうか。


「さんざん邪険に扱って挑発しても反応がなかったからでしょうが、彼を軟派者呼ばわりしていました」


 とても下らない理由だったが、何が相手の怒りの琴線に触れるかはわからない。周囲には女性ばかりだから、晴樹にも思うところがあったのだろうと、ルナージュは推測した。


「そう。それで、あの子はその後どうだったの?」

「彼を認めたようです。ラベルを出る前に、私をくれぐれも頼むと、彼にしつこいくらいに念押ししていましたが」

「ふふっ、素直じゃないわね」


 ゴードンは、どうでもいいと思う相手に大事な存在を任せたりはしない。口でどう言おうと任せると言うことは、彼が信頼を寄せたという証明だった。ただ、自分より年下の少年に任されたのが悔しかったのだろう、ちょっとだけ意地悪な言い方になっているところが、まだまだ子どもなのだと、ルナージュは個人として微笑ましく思った。

 ともあれ、将来有望な二人の若者が、少なからず仲間として意識を持っていることと、娘と彼らが世界のために行動してくれることが、彼女にとって大きな喜びだった。




 なるほど。

 一人で納得している間にも、エルナはゴードンへ詰問し続けていた。


「ハルキを試して、どうでしたか?」

「……凄まじいものだった」


 口を開いたゴードンは苦笑いで答えて、部屋を出る。その際、振り返らずに、独り言をしゃべるように、


「セイジュさんたちの邪魔を元よりするつもりはないが、もしアナタたちの出立を誰かから止めさせろと言われても、私では到底、無理だろうな」


 そう言って、ドアを閉めた。


 エルナはドアをしばらく見ていたけれど、やがてため息をついて、ソファにもたれかかった。


「お疲れ様」

「……ゴードンさんが敵でなくてよかったわ」

「あら、もし国王側()だったとして、わざわざ(女王)の伝言を届けに来るかしら?」

「それはそうだけれど……あれ?」


 エルナは上半身を起こすと、半眼になって見つめてきた。


「ねぇ、ゴードンさんが敵じゃないって、最初からわかってたの?」

「どうしてそう思うの?」

「貴女ほどの力なら、人の心を読むことなんて朝飯前じゃない?」

「アンタは人を何だと思ってるのよ?」

「サキュバス。それも常識外れの力を持ってる」

「あら、ありがとう」

「褒めてないからね?」


 そんなに睨んでも、可愛いだけよエルナ。


「人がどう言おうと、自分で確認した方が安心でしょ?」

「もぅ……」


 私が余裕の態度で笑っていると、諦めたらしく、天上を仰いだ。


「……そう言えば、最初は誰にも自分たちの力や、勇者であることは明かさないって言っていたのに、色々な人に知られちゃったけれど、よかったの?」

「えぇ。進んでひけらかすつもりはないけれど、別に知られてもその時はその時ってことで」

「十二分にひけらかしていると思うわよ……?」

「何の事かしらねー?」


 確かに、当初の予定と違って、色々な人に私たちの力を見せてしまっている。けれど、ちゃんと相手は選んでいるし、それ相応の対策はしてある。


 それにね、エルナ。

 力を見せることで得られるメリットは大きいの。


「エルナ、貴女はどこから情報が国王に入ったかわかるかしら?」


 私の質問に、エルナは少し考える素振りを見せた後に頷いた。


「……多分、大食いと二度目に戦った時に、セイジュさんの監視者たちに見られたんだと思う」

「なるほどねぇ」


 まぁ、城壁にいた兵士からも私の魔法と大食いが見えたくらいだし。何の隠蔽もせずにあれだけド派手に巨人とドンパチしてたら、そりゃ見つかるわよね。


「うーん、女王とゴードンは私たちの味方だし、頼もしい仲間が増えたと考えれば、まぁこれはこれでいいかしらねぇ」

「あっ、心じゃなくて、遠視してたのね!」

「そこは気にしちゃだめよエルナ。それよりも、国王の勧誘をどうにかしないと」


 どうにかすると言っても、無理やりにでも突破するだけだけれど、ね。

 エルナも私と同じ考えに至ったみたいで、額を抑えて呻き声を漏らしている。


「邪神や大食いと戦う前に、お城の人たちと戦うことになりそうだわ……」

「その時はスリープで眠らせればいいわよ」

「それもそうね……」

「そうそう」


 エルナとセイジュは国家反逆罪とかになりそうだけれど、その辺りは女王様が何とかしてくれるでしょう。多分、きっと。

 その辺り、何とかしてもらえるかしらね、晴樹の女神さま? っと、遠視の魔法が、閉まろうとしているラベルの門に、スライディングで文字通り滑り込む晴樹の姿を捉えた。


「あら、晴樹が戻ってきたみたいよ?」

「どうやって王都からここまでそんな短時間で戻って来られるのよ……?」


 取り乱すことも、慌てることもなく、エルナは苦笑いを浮かべた。


 ねぇ、エルナ。

 私たちの力を見て、貴女は少し変わったわよ。多分、いい方向にね。


「フフフ……もしかしたら近いうちに体験できるかもしれないわね」

「できれば、そうならないことを祈るわ」


 ふふっ、この先、アンタたちとの旅はもっと楽しくなりそうね。



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