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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者
9/448

2-3 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 魔法を使ったのよ!!


「まぁ、使えないに越したことはないわ。今晩からでも魔法の練習をしたらどうかしら?」

「俺でもできるのか? 回路だとかク○スト○ラフとか必要じゃないのか?」

「安心なさい、そんなややこしいものはないから。詳しいことは省くけど、ようはアンタのヤル気次第よ。エルナも色々と使えるみたいだし、やってみない?」


 俺のヤル気次第で、魔法が使える……だと?

 そんな事言われたら、就寝前だってのに興奮しちまうだろうが!


「本来なら呼吸法、瞑想とか段階を経て練習していくんだけど、まぁお試しってことでね。基礎中の基礎、簡単便利でこれからの応用にも幅広く使える、魔力を感じる、というところから始めましょうか」

「おう、どうやればいい?」

「私たちサキュバスは生まれつき感じ取ることができるわ。人も感覚で理解できるって言うけど、晴樹は難しいかもね。体の中にある魔力をイメージしてみて」

「おう」


 言われるままに、魔力という全く正体のわからない存在を勝手にイメージしてみるが、特に何かを感じることはなかった。なんだか体がポカポカした気はするが。


「よくわかんないな」

「まぁそんなものかしらね。じゃあそのままイメージをキープしてて。筋は悪くないのよね。エルナだったら、この先はどう教える?」


 おい、そこで投げるなよ。


「じゃあ、まずは体の中の魔力を確かめて、掌にそれを集めるってところから初めてみたらどうかしら?」

「やってみる」


 集中するために、一端目を閉じる。

 初期訓練にありそうな奴だが、実際に魔法が使える一歩を踏み出せるというのはワクワクするな……。


「……え?」

「あれ……?」


 例えば……洞窟でエルナが出したみたいな炎だ。メ○やファイ○みたいなの。あれがあれば、簡易でも防衛手段ができるし、今最も欲しい魔法の一つだ。

 でも、メイプルが使った明かりの魔法もいい。攻撃系も嫌いじゃないが、あぁいう、王道かつ暖かなイメージの魔法の方が好きだ。

 そして魔改造ならぬ魔法改良を加えて行って、いずれは最強魔法使いに……


「…………マジですか」

「ハルキ……?」


 っといかん! 集中、集中!

 それにしても掌が温かくなってきた。何と表現したらいいんだろうか、まるで湯たんぽを乗せたような心地よさ……それがすぐに全身に広がる。これが、魔力か?


「晴樹! ちょ、目を開けなさい!」


 メイプルの慌てた声に驚いて目を開いた。


「どうした?!」

「どうしたもこうしたもないわよ!!」


 何故か怒鳴られた。え、何で?

 エルナも唖然とした表情で俺を見ている。


「ハルキ、覚えていないの?」

「俺、何かしたのか?」

「何って、魔法よ魔法!! アナタは魔法を使ったのよ!!」


 え、俺、魔法使ったの? 全然覚えないんだが。


「もう一度やってみなさい。ただし、今度は目を開けて」


 メイプル先生の指導が入った。

 言われた通り、目を開けたまま先ほどと同じようにイメージし、掌へと視線を向ける。

 これで何もなかったら軽く凹むぞ。緊張と期待で胸が高鳴り、そして、


「うおおおおおお?!」


 心地よい温かさを覚えた掌から、いきなり巨大な炎の玉が出てきて、視界を包み込んだ。

 驚きと恐怖のせいか、すぐにそれは消えてしまったが、熱さは感じなかったし、どこも火傷した様子はなかった。


「え、何今の? 俺、無事なのか?」

「無事でなかったらアンタ、今ここにいないわよ。さっきは全身をすっぽり包んでたのよ?」

「マジで? じゃあ何で生きてんの? 自分の使った魔法では傷つかないとかある?」

「ないわよ。それでもアンタは無事だった」

「まるで炎の上位魔法を見ているようだったけれど、熱気はほとんど感じられなかったわ。強いて言うなら、温泉や暖炉の温かさ……に近かったかも」

「ええ。見た目はス○ナー・サン○ャインとか元○玉とかガ○ア・フ○ースみたいだったけど」


 どんなイメージだよ。全部必殺技じゃねぇか。


「でも攻撃性はないのかもしれないわね。晴樹の足元も全然焦げてないし」

「じゃあ、失敗したのか?」

「いいえ、魔法を使うことはできてるから、成功と言えば成功よ。ただ、これは……」


 メイプルがエルナに視線を向ける。


「私にもわからないわ。あんな大きなフレイムだったのに、使用者と周囲に被害がないなんて……」


 そこで一度言葉を止めると、エルナはメイプルへと視線を返した。


「まさか、複合魔法?」

「私たちの常識だとそうなるわね」


 おぉ、この展開はもしかして、何か俺に何か超すご能力が実は宿ってる感じなのか?


「効果は私が使ったトーチで、見た目はアンタが使ったフレイムってところかしら。でも、それにしては魔力の使用量がおかしいのよね」


 二人の視線が俺に戻される。


「晴樹、アンタ、掌に炎を出すイメージをしてみなさい?」

「こうか?」


 先ほどみたいなことがないように、掌サイズの炎の球体をイメージしてみる。すると、先ほどよりも熱い感覚と共に、考えた通りの炎が出現した。

 心が弾けるくらいに驚き、胸の中に喜びが溢れ出した!


「おおおおおお?!!」

「嘘、こんな短時間で……?」

「……じゃあ次は、トーチ。私が使ったみたいな明かりね。蛍みたいな淡い奴でもいいわ」

「おう!」


 興奮が冷めないまま、メイプルが使った光をイメージしてみると、やはりその通りに光球が現れた。


「んじゃ、最後にもう一度、あのでっかい炎を出してもらえる?」

「……サイズダウンでいいか?」

「構わないわ」


 最初のイメージを思いだしながら、掌サイズになるように想像する。

 俺が最初に出した、暖かくも強い勢いの炎が、サイズダウンした状態で掌に誕生した。


「見た感じ、フレイムよりも勢いと明るさが強そうね。しかも、サイズダウンしたら使用魔力も同じように減る、と」

「すげぇ……これが魔法なんだな!」


 よかった、最低限の防衛手段と補助魔法が手に入った。

 ここ最近で一番嬉しいって気分になったぞ。興奮が全然冷めないままなんだが、どうしよう!!

 掌の上の複合魔法らしい炎を色々な角度から眺めていたが、メイプルが何やら深刻そうな顔で俺を見ているのに気が付いた。その隣で、エルナが我ここに非ずといった感じで突っ立っている。


「え、どうかした?」

「晴樹、喜んでいるところ申し訳ないけれど、アンタのそれね、複合魔法じゃないっぽいわよ」

「へ?」

「アンタが使っているその炎、普通のフレイムとトーチを使用している時よりも使用魔力が少ないのよ。複合魔法を使うなら、細かいことは抜きにしても、使用魔力は確実に多くなる。まぁ簡単な足し算よね。元の各魔法より下回ることなんて絶対にありえないわ。で、それを踏まえた上で、問題のアンタのそれだけど」


 そこでメイプルは面白いものを見つけたとばかりに不敵な笑みを浮かべた。


「フレイム+トーチ=十ってなるところが、フレイム+トーチ=一みたいな感じになってるのよ」


 一瞬、世界が止まった。


「元の各魔法の使用量をね、下回ってるのよ」

「……マジですか?」


 思わず敬語になってしまった。


「マジよ。これは複合魔法じゃなくて、新しい魔法ってことになるのかしらね。私も全部の魔法を知っている訳じゃないから、確証は持てないけど」

「そうなのか……」


 掌に視線を落とすと、未だに炎が揺らめいていた。それに視線だけでなく、何かが深く吸い込まれそうになる感覚になった時、メイプルの声に我に返ることができた


「ただ、アンタの場合、攻撃性が全くないみたいだから、調子に乗ってえばらないことをお勧めするわ」

「あ、あぁ」


 そんなつもりはなかったが、人って自分が知らない間に傲慢になっているからな……調子に乗りかけていたのは事実だし、今の変な感覚は、もしかしたらダークサイドに落ちかける寸前だったのかもしれない。気をつけよう。なんか怖かったし。

 でも魔法が使えたのは正直に嬉しい。それに、攻撃性がなくても特別な力があるっていうのは優越感がある。おっといけない。自重自重……ダークサイドに落ちて滅亡というあるあるは御免だ。


「……アンタのそういう素直なところが、そういう力の根源なのかしらね?」

「え?」

「なんでもないわ。ところでエルナ」


 メイプルに声をかけられ、エルナも我に返ったようで、「はわっ?!」と肩を跳ねあがらせた。

 あ、今のめっちゃ可愛かった……。


「この事は、誰にも話しちゃだめよ?」

「そ、そうね。下手したら冒険者と魔法ギルドが彼を拘束するだろうし、それ以外だと軍だとか国の暗部とかが動くかも……」

「かもじゃなくて、確実に動くわよ。少なくとも、密偵が付いてくることは覚悟しないと」


 あ、そこまで深刻なんだ、これ。

 よく考えたらそうか。珍種、もしくは全く新種の力を使う奴がいたら、それを見たい、利用したいと言う奴は五万といるよな。

 軍や暗部は国を守る力を得るために、それこそ強引にでも俺を連れて行こうとするだろう。下手したら人体実験もあるかもしれない。


 俺の見た目、素性、持ち物、そしてこの魔法……。

 どう見ても怪しさ満載です、本当にありがとうございました。


「なぁ、詰みかけてないか、俺?」

「不用意に見せなきゃいいのよ」


 やだもう……お家帰りたい。


「ハルキ」


 半ば本気で泣きたくなっていたところへ、エルナが声をかけてきた。その表情は真剣そのものだった。

 その雰囲気に押され、一歩後ずさりかけたところで、エルナがその両手で俺の空いている方の手を包み込むようにして握った。


「大丈夫、私は絶対にハルキの事を誰にも言いふらさないから!」

「え、あ、うん。ありがとう……?」


 いきなりの事でびっくりしたが、その両手の温かさに少しだけドキッとなった。剣ダコや傷、そして鍛えられた筋肉によるものなんだろう、少し堅い感触だったけれど、何だか優しい感覚がした。


「……改めてよろしくな、エルナ」

「ええ」


 魔法の話しから始まって、ちょっとした騒ぎになったが、まぁ結界オーライってところだな。


「一人目の嫁候補、ゲットだぜ!!」

「おいやめろばか」


 顔をにまにまさせたサキュバス幼女が最後に空気をぶち壊してくれたが、日本語だったおかげでエルナは首を傾げただけだった。


「え、嫁(仮)とちゃうん?」

「違うわ!! あんまりそういうこと言うんじゃねぇよ!!」

「異世界に来たらハーレムとか想像したことない?」

「リアルでハーレムとか目指すか!」

「でもエルナ、可愛いし、いい子っぽいわよ?」

「それとこれとは別だ! あんまりからかわないでくれよ」

「あらら、晴樹君や、お顔が真っ赤だよ~?」

「……」


 その後、互いのほっぺをむにむにしながら抗議する俺とメイプルを、エルナが呆れまじりの苦笑で見守るというカオスな光景が夕飯前まで続いた。


 ちなみに、俺たちが作った夕飯を食べたエルナが目を見開き、おかわりを要求しまくるという、転生・転移系あるあるを実体験した。ちょっと嬉しかった。

 俺の家庭料理レベルの野菜炒めはもちろんだが、メイプルのスープは俺も笑みが浮かんでしまう美味しさで、エルナの食いつきぶりがすごかった。

 普通の野菜スープは、母親の味みたいな、そんな優しさに溢れていた。

 食べ終えたエルナはすごくシリアスかつ惚れ惚れするようなキリッとした顔で、俺たちに向かって宣言した。


「絶対にハルキとメイプルのことは守るから!」

「食事係としてですね、わかります」

「よかったわね晴樹、就職先が見つかったわよ」

「オマエモナー」


「ところで晴樹は枕変わると眠れないタイプ?」

「いや全然」

「そうなのかー」

「お前は?」

「私もそんなことないわね」

「そうなのかー」

「二人とも、やっぱり初対面じゃないよね?」


 両手を水平に広げた俺たちを見て、先に寝転がっていたエルナが諦観の視線を投げかていた。


 かくして、俺の異世界生活一日目が終了したのだった。

晴樹「今のはフレイムではない、トーチだ」

エルナ「あぁ、そういう心理戦もありかもしれないわね」

メイプル「いやいや、どう考えてもフラグだから」


晴樹はフレイムの魔法を覚えた! トーチの魔法を覚えた! ???を覚えた!!

メイプル「覚える速度が天才ってレベルじゃないわよッ?!」

晴樹「後はウォーターとウィンドウとアースかランドを覚えれば……」

メイプル「おいやめろ馬鹿この話題は早くも終了よ!!」

エルナ「絶対に初対面じゃないこの掛け合い……」

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― 新着の感想 ―
[一言] あとがきのネタがほぼわかる(笑) いつか何処かで大魔王様のネタしそうだなこのサキュバス
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