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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第二章 サキュバスとエロ漫画野郎とクッコロさん
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8-1 エロ漫画野郎とクッコロさん 世界は……こんなにも……

 程なくして戻ってきたメイプルたちに事情を説明したところで、どうやってセイジュさんを王都まで送り届けるか、という議論になったので、俺が送っていくことになった。


 ゴードンは不眠不休の疲れを取らせると言ったセイジュさんによって、無理やりギルドで留守番させられることになった。


「ハルキ殿、くれぐれもセイジュさんを頼むぞ」

「わかりました」

「くれぐれも、くれぐれもっ!」


 厳つい顔をぐぐっと近づけきて、念押ししてきた。怖い。子どもだったらこれだけで泣くだろうってくらい。


 エルナたちにリアさんやソーシャさんへの伝言を頼み、戻ってきた冒険者や旅人たちで賑わう門前へと移動した。今日も今日とて、魔法使いのお姉さんたちが怪我人たちの治療に当たっている。その中に、フリージアの治療に当たっていた女性を見かけたが、特に変わった様子はなさそうだった。


「ナザリー、そっちの人が来てほしいってー」

「はーい!」

「その後はこの人の連れの方をお願いするわねー」

「……最近、私が診る怪我人、多くないですか、ミレイアさん?」

「頑張ってね、奇跡の(アメイジング)ナザリー♪」

「その呼び方はやめてくださいよぉぉっ!!」


 訂正、何だか大変そうだった。すまん、ナザリーさん。そのまま本当に奇跡を起こせるくらいの魔法使いになってくれ。




 門を出て、いつもの丘へ向かう。夕日を受けてクリーム色になった銀髪を揺らし、セイジュさんが振り返ってきた。


「さて、行くか。ところで、神ヴァーヴァリアスの瞬間移動が使えるようになったのか?」

「いえ、全く」

「ではどうやって行くんだ? 今からでは着くのが夜中になってしまうぞ?」


 今から全力で爆走しても王都の門限には間に合わない。

 ならばどうするか。


「セイジュさん、王都ってどの方角にあるのかわかりますか?」

「ん? ……こっちだな、多分」


 指さした方角へ体を向け、身体強化を使い、その場で跳躍する。足下に発生させたシールドを蹴って、更に高度を稼ぐ。

 夜へ向かう異世界の情景に目を奪われかけるも、強化された視力により、王都の象徴である巨大な門と、王城エル・ブロッサムをずっとずっと遠くに見つけ出すことができた。体の向きを修正して着地すると、


「よくもあれだけ飛べるものだな」


 なんて感心された。

 さて、それじゃあ行くとしよう。


 方法は簡単だ。


1、シールド魔法を少し大きくして大人二人が乗れるようにして展開します。

2、シールド魔法に用意した取っ手にしがみつきます。


「ん?」

「気にしないで乗ってください」


3、安全確保のために色々な魔法を使ってを二人の体を防護します。


「……。なぁハルキ君、これは……」

「大丈夫です」


4、準備が完了したら、風魔法で浮かび上がり、足下に展開した大食い直伝の魔法陣から群青色のジェットをぶっ放します。

5、目的地付近まで全力ステルス航行開始です。良い旅を!


 そして、俺たちは空を駆ける一陣の風となった。

 猛烈な速度で流れていく、黄金と緋色のコントラスが照らしだす世界が、途方もなく幻想的だった。

 最初は驚いていたセイジュさんの声も、すぐに嬉しそうなものへと変わって行った。


「これは……凄いな」

「はい」


 地上の景色も、浮かぶ雲も、空を飛ぶ鳥や魔物の姿も。風を切る音も、吹く音も、黄金色の輝きも。

 異世界の夕暮れの景色が、俺たちの心にいっぱいの衝撃を与えて来るようで――。


「ドラゴンに乗ったことはあるが……その時は違う感じだ。ふふっ、変だな」


 そう笑うセイジュさんの表情は、いつもの凛々しさと、少女の面影が混在していて、普段とはまた違った愛らしさがあった。

 いつもは驚かせて怒らせてばかりいたから、ちょっと新鮮かも知れない。


「そうか、この国は、世界は……こんなにも……」


 目を細めたセイジュさんは、優しげにつぶやいていた。




 それから数十分ほどして、王都近くにたどり着いた俺たちは、門限まで超余裕を持って門を潜ることができた。


「ハルキ君、やっぱり我が国の軍部か、冒険者ギルドに入ってくれないか? 君が邪神を倒した後で、元の世界に帰るまでの間でいいんだが」

「丁重にお断りさせていただきます。それじゃ、俺はギルドの方で泊まりますから、途中まで一緒に行きましょうか」

「ん? 何を言っている。君も一緒に来るんだ」

「え?」


 セイジュさんに腕を引っ張られ、足がもつれそうになるのを堪えた。


「いや、家族水入らずを楽しんでくださいよ。俺はギルドで宿泊しますから」

「いいから着いてきてくれ」


 ちらっとも振り返らないセイジュさん。

 手を振りほどこうと思えばできるが、どうにもやりづらい。

 逃げないことを伝えて腕を離してもらい、一緒に歩いていくこと数十分。大通りを抜けて、貴族街を通り過ぎた辺りで嫌な予感がしてきた。


 セイジュさんが歩き出してからずっと、俺たちの進路方向に、巨大なお城が見えている。


 王城エル・ブロッサム。


 この国の王様とその家族が住まう場所。

 その偉容を真下から見上げることができる城門の橋の前で、セイジュさんが一度止まった。

 どうしてだろう、もうわかりきっていることなんだが、せめてもの抵抗として、セイジュさんへ視線を向けた。


「あの、セイジュさん……?」


 振り返ったセイジュさんは、笑顔を浮かべて城を手で示した。


「ようこそ、ハルキ君。我が家、エル・ブロッサムへ!」



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

ナザリーさんは第一章5-2(第二十五部)に、ミレイアさんは名前だけですが同章5-6に出ています。


第二章終盤です。

もうしばらくお付き合いください。


ギルフェンセィアやカプリッツィオもまた上げていこうと思います。

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