7-5 エロ漫画野郎とクッコロさん 後悔はしていない。反省はしている。
お待たせいたしました。
さて、俺も帰るとするか。そう思ったのだが、他の話も詳しく聞かせて欲しいと言う人が何人か集まってきた。
そのうちの数人が急に弾かれたような動きになったり、倒れたりしたので、そいつらは論外として、他の人たちをどうするかで、一秒だけ迷った結果。
詰め寄られる前に身体強化を使ってその場から跳躍。
近くの民家の屋根に降り立ち、追手が来る前にサイレント・ベールを使用して逃走することができた。
冒険者ギルドの裏手で隠蔽魔法を解除し、やれやれ、酷い目に遭ったと入口へ回り、ドアを開けたところで、セイジュさんと大柄の男が言い争っている場面に遭遇した。
セイジュさんはいつもの魔気甲冑ではなく、若草色のワンピースの上に白いカーディガンを羽織った姿で、軽く腕を組んで仏頂面で男を見上げていた。
男の方は、二メートル近い背丈で、レザーアーマーを装備している剣士だ。衣服や鎧越しでもわかる、筋骨隆々の体だが、顔立ちは若く、二十代に見える。背負われている剣は男の背丈のせいで小さく見えるが、セイジュさんとほとんど同じ長さをしていた。
「だから言っているだろう。私はこれからまた旅に出るんだ」
「我儘を申されるな! お父上からの伝言があるのですぞ!」
「すでに連絡はしてある! 直に返事が――」
静かに、しかし威圧感のある声音で話していたセイジュさんが、俺に気が付いて言葉を止めた。
それにつられるように、偉丈夫だけでなく、ギルド内の全視線が俺へと集中した。
え、何これ。
「――直に返答がある。私はこれで失礼する」
一方的にそう言うと、セイジュさんが俺へと近づいてきた。
「行くぞ、ハルキ君」
「え?」
訳がわからないまま、腕を引っ張られる。
その横顔は不機嫌そのもので、どうしていいかわからない。
半ば強引にギルド外へ連れ出されようとしていると、視界の端で偉丈夫がこちらへ近づいてくるのが見えた。
「待たれよ!!」
威圧と怒気が乗った大声が俺たちを呼び止める。耳がちょっと痛い。あ、彼の近くにいた冒険者たちが顔をしかめたり、耳を塞いだりしている。って気絶した……あぁッ、受付嬢さんの一人がカウンターに突っ伏したぁぁぁッ!?
こっそりと受付嬢さんに回復弾を撃ちこんでいる間に、男が俺たちの一歩前まで近づいてきた。
「セイジュさん、その者は一体何者なのか?!」
先ほどよりも強い視線で俺を睨んでくる。うわぁ、怖ぁ……。
内心で引いていると、セイジュさんが彼へと向き直った。
「私が同行させてもらう方だ」
「どうも」
頭を軽く下げて挨拶しておく。
すると、男は少しだけ眉を潜めて俺の顔を観察し、それから全身を見て、訝しむ声で尋ねてきた。
「貴様は冒険者か?」
「いえ、旅の者です。冒険者登録はしていません」
「だろうな」
突き放すように言うと、腕を組んで俺を見下ろしてきた。
「貴様、セイジュさんを護衛として雇ったのか」
「違いますよ。少しの間、旅を一緒にするだけです」
「何ぃ?」
深く眉を潜めると、男は鼻を鳴らした。
「旅の護衛なら他の冒険者を雇え。セイジュさんはこれから大切な用事がある」
「待てゴードン! 私はまだ行くとは言っていないぞ!」
「セイジュさんには聞いておりませぬ!! おい貴様、どこの国の者か知らぬが、セイジュさんは騎士の位を持つ者として早急に終わらせなければならないお勤めがある。わかったのであれば、今すぐにセイジュさんから離れるのだ」
先ほどよりも少し落ち着いた様子で語りかけてくるが、えぇと、何だろう。この人のイライラ具合。何か急いでいるのか?
「ゴードン、何度も言っているだろう。父には連絡した。それに私は上級冒険者として、これからやらねばならないことがあるんだ」
「お勤め以上に大切な用事があると申されるのかッ?」
「あぁ。後で父から説明があるだろう。私は三日後、エルナや彼とその妹と共にこの街を立つ」
「なんですと?! そのようなことが許されるはずがない!」
「だから父上に連絡を……あぁもう、お前はどうしていつもこう……」
セイジュさんが困り出した。もうお手上げ状態って感じだな。
仕方ないな……。
まぁ、事情は知らないが、傍から聞いていればゴードンさんの態度には苛立つものがある。
それでも、ここは互いに少し落ち着いてもらえないものだろうか。そう思いながら、半歩前に出る。
「あの、セイジュさんのご家庭の事情はわかりませんが、セイジュさんがこう言っていることですし、少しだけ待ってみてはいかがでしょうか?」
「部外者が口を挟むな!」
おっしゃる通りで。
だが、もしセイジュさんのいう事が正しければ……そして、セイジュさんの実家が貴族だとか豪商だったりすると、何かもうこれ以上のややこしい事態に発展しそうなので、ここで二人に落ち着いてもらわないと、出立が遅れたり、下手するとテンプレ展開が完成したりするかもしれないし、引き下がる訳にはいかないのだ。
さて、どうやって止めたものか、と思っていると、ゴードンさんがまた俺の顔を見て、
「貴様、ここに来る前、街で何やら罪人らしき娘に説教をしていた者ではないか?」
「え? あぁ、説教ってほどでもないですが……」
あれを見ていたのか、この人。
セイジュさんがゴードンさんの話しに興味を持ったのが分かった。後で話してあげよう。この騒動が終われば。
「何故罪人の小娘などを助けるような真似をしたのだ?」
「え? まぁ、まだ子どもでしたし、これ以上罪を重ねず、改心してもらえれば、と思いまして」
そして、その盗みの技術を平和利用して、社会へ貢献して欲しい。
そう思ったのだが、ゴードンさんはまた鼻を鳴らした。
「無駄な事を。罪人は罪人だ。悔い改めても、また繰り返す」
「それは本人次第です。とりあえず、牢屋には戻ってもらったので、後は上手く改心してくれればそれで」
「そんなにうまくいくものか」
高圧的な態度の中に、苦しげな様子が混じった声で、ゴードンさんが毒づくが、一瞬だけだった。
「話が逸れたな。ともかく、お前は仲間がいるのであれば、その者たちと共に行け。セイジュさんとは関わるな」
「ゴードン!」
セイジュさんが一歩前に出ようとしたが、俺はそれをまぁまぁと肩に手を置いて宥める。
「とりあえず、今は待ちましょう。ほら、あっちの席に座ってコーヒーでも飲んで」
「その必要はない! それよりも貴様っ、セイジュさんに馴れ馴れしく触れるな!!」
あー、やっぱり高貴なご身分なのかーと思いながら、ゴードンの拳を避けた。
「むっ?!」
「ゴードン、お前という奴は!」
セイジュさんの堪忍袋の緒が再び切れそうだったが、ソーシャさんが奥から出てくるのが見えたので、
「セイジュさんから離れろと言っているッ!! この軟派めhぶいがfdしょつぎあえwjp?!!!」
穏便に、終われなかった。
謎の悲鳴を上げたゴードンは、二、三歩後退して、その場で崩れ落ち、真っ白に燃え尽きていた。
「ハルキ君、今、何をしたんだい?」
何って、ぶっ飛ばないように加減しながら、身体強化した拳をゴードンのドテッ腹にぶち込みました。
ボディーブローの態勢の俺を見て、セイジュさんが頷いた。
「やり過ぎ……ではないな、よくやった」
「いや、やり過ぎましたよどう見ても」
「セイジュ~、ハルキ君~? ちょっとこっちに来てくれる~?」
ソーシャさんが笑顔(般若のオーラ付き)で手招きしていたので、俺はゴードンに肩を貸す形で背負い、セイジュさんと一緒に支部長室へ向かった。
「ハルキ君、流石にアレで、ただの旅人とは通じないわよ?」
「あ、はい、すみません」
後悔はしていない。反省はしている。
そしてこんなテンプレ展開やだなぁぁぁぁぁぁッッ!!!
ちくしょう、ゴードンめっ! 何であんな態度だったのか、きっちり教えてもらうからな!!
お読みいただき、ありがとうございました。
今日はもう一話上げます。




