7-3 サキュバス幼女一行とクッコロさん サーセンでした
三連続投稿です。
朝食後。
再び足を運んだ訓練場(貸切状態)で、エルナが十メートル以上離れた的へ向けて、掌をかざしていた。
俺とメイプル、セイジュさんは少し離れたところから見学している。
「じゃあ見ていて」
的を見据えるエルナの手元にハンドボール大の淡横色の輝きが生まれ、音も無く的へと飛んで行き、的のど真ん中に穴を開けた。
「これがアースショットよ」
「土の力を使っているのか?」
「えぇ。大地から力を借りて、それを放っているの。でも、土の要素は色くらいしかないから、最初は見た目で戸惑うかもね」
「なるほど」
「じゃあ、あそこの的に向かって撃ってみて」
「おう」
エルナの見よう見真似で掌をかざし、土の力をそこへ集めるイメージ、淡横色の輝きが出現したところで、的の真ん中目がけて、シュート……命中!
「うん、バッチリ」
エルナが嬉しそうに笑う。見ていて、心が温かくなる思いだ。
俺も自然と笑みが浮かんできて……あ、そうだ。
魔力を集中、圧縮して、ファイア。
「え?」
「ん?」
エルナとセイジュさんの呆けた声をBGMに、俺は別の的に、野球ボールサイズのアースショットを放った。
直後、的のど真ん中に小さな風穴が開く。
そして、その後ろから球体に戻ったアースショットの輝きがふよふよと現れ、俺の手元に戻ってきて消えた。
大地よ、力を貸してくれてありがとう。
「よし、成功だ」
「何をやっているんだ君は」
セイジュさんが無表情かつ無感情な声で突っ込んできた。
「何をしたのか、言ってみるんだハルキ君」
「アースショットの魔力を圧縮して高速で飛ばして、手元に戻しました」
「本当に何をやっているんだ君は?」
「何って……アースショットです」
「あんなアースショットがあってたまるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
防音魔法が張られた訓練場内に、セイジュさんの怒声が響き渡った。
「あのねハルキ……流石に撃った魔法を手元に戻してくるのは……普通の使い手じゃできないかなぁ……」
確かに、実戦なら一度撃った魔法は命中の有無に関わらずそこで終了。意識することはほぼない。
だが、タスラムを操作した事があったため、同じようなことができないかと試してみたくなったのだ。結果は大成功だったが、エルナの視線が痛い。後、セイジュさんの怒声で耳も痛い。
そしてメイプルは、
「アースショットっていうよりも、レーザーねあれは」
おかしそうに笑っていた。
「あ、そうだわ。アースショットは大気からも力を得ることができるわよ?」
とか言って、空中に少しだけ浮かんでアースショットを自分の周囲に複数展開して、しかも回転させていた。
それを見たエルナとセイジュさんは戦慄していた。
「馬鹿な……空中で土の力を集められたとしても、それはごくごく微量なものでしかないはずだ……そんな数を、それだけの大きさを展開できるはずが……」
「セイジュ、エルナ、いい?」
慈母のような表情と声音になったメイプル。
「アースショットは、正確には大地、つまりこの星の力なの。だから、地面の上でなくても力は集められるわ。例えそれが木の上だろうが空中だろうが船の上だろうが水中だろうが関係なくね」
「星……?」
「どういうことなの?」
「つまり、星を巡る力だから、この世界にいるのであればいくらでも撃てるってことよ!!」
「「わかるようでわからない!!」
頭を抱えるエルナとセイジュさんに同情していると、ふと頭に今の騒ぎとは全く無関係の、しかし面白いと思えるアイデアが浮かんできた。
「エルナ、もう一発試してもいいか?」
「……いいけれど、何をするの?」
また突飛な魔法が飛び出してくるのかと警戒している様子のエルナだが、今回はそんなに驚くようなことはしない。
それにこれは、もしかしたらエルナやセイジュさんにとってプラスになるかもしれない。
次の的へ向けて、手をピストルの形にする。
イメージするのは大地の力の一点集中……石よりも、岩よりも硬い、光の弾丸。
回復弾を撃つ時と同様に、指先を疑似的な銃身と銃口に見立てて……装填。
「ファイア!」
星の力を借りた弾丸が高速回転しながら発射され、的を粉砕した。
静まり返る訓練場。
メイプルの張ったシールドへ、砕け散ることも潰れることもなく回転しながら突き破ろうと奮闘するするアースショット(弾丸型)だったが、やがて光の粒となって消えた。
「大地よ、力を貸してくれてありがとう」
「何をしているんだお前はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
セイジュさんは二度目の絶叫をあげると、瞬間移動のように突然目の前に現れ、俺の肩をガックガク揺らし始めた。ちょっ、顔近い。後、目が回るからやめてつかぁさい。
「君はっ、君はっ、一体何度やらかせば気が済むんだ!!」
「いやぁ、まさかあそこまで威力があるとは思っていませんでした」
「何をしれっと言っているんだ?! 何を、何をしたんだ!」
「アースショットをさっきよりも圧縮して撃ちました」
「だから、あんなアースショットがあってたまるかぁ!! そんな、そんな風だから、君は勇者と言われているのがわからないのかぁぁぁぁぁっ!!!」
三度目の絶叫を至近距離で受けたが、サイレントベールを張ったおかげで被害はなかった。
疲労困憊状態のセイジュさんに回復魔法を使い、騒ぎはしなかったが遠い目をするエルナと、「まただよ」と苦笑いするメイプルと一緒に後片付けをしてから、訓練場を後にした。
「もう我慢の限界だ! いいかハルキ君! 金輪際、私は君を勇者として完全認定するからな! もう君が違うと喚こうが知らん!! そして私の中で今、君は、我が国に召喚された新しい勇者として存在が確定した!!」
「セイジュさん、落ち着いてくれ! 何だか色々と言葉が怪しいことになっているぞ!?」
「誰のせいだと思っているんだ!」
はい、俺です。
サーセンでした。
メイプル「新しい勇者の誕生だぁっ!」
晴樹「勇者は助け合いでしょ! と言う訳でお前も勇者じゃこんにゃろー!」
セイジュ「後で国王にも報告しておいてやるからな!! 覚悟しておけよ!!」
晴樹「国王はやめて!! 逃げ場が本当になくなる!!」
エルナ「セイジュさんが報告しなくても、ヴァーヴァリアス様を止めた時点で、完全に勇者認定されていますよ、きっと」
メイプル「知らなかったの? 勇者の肩書からは逃げられないのよ」




