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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第二章 サキュバスとエロ漫画野郎とクッコロさん
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6-1 サキュバスとエロ漫画野郎と破壊神 考えることをやめた

 リアさんが街に出るといらぬ騒ぎが起きるかもしれないという事で、冒険者ギルドの客室で寝泊まりしてもらうことになった。

 そして、彼女の要望で、その日は俺たちも隣の客室に泊まることになった。


 夕食と風呂の後、俺とメイプルは、応接室でリアさんと向かい合っていた。


「エルナとセイジュさんは呼ばなくてよかったんですか?」

「これはお主らの故郷とも関係のある話。故に二人には聞かせられぬ内容もあると判断した」


 リアさんが指を弾く。


「これで神族から覗かれる心配もない」

「感謝するわ」


 え、この人また凄いことしたのか。


「ふふっ、それでは話すとしようか。まずは……ハルキ、私がこの世界の出身でないと、メイプルから聞いたな?」

「えぇ」


 死闘の最中でそれどころじゃなかったし、帰りも急いでいたから聞くタイミングがなかった。

 ようやく本人から教えてもらえるようだ。


「私はハルキ、お主と同じく転移者だ。だが、お主たちと同じ世界の出身ではなく、もっと別の世界から来たのだ」

「魔界、ではなく? 完全に別の宇宙や、次元から来た、という事ですか?」

「その通りだ。私はメイプルが言う通り、世界を超える力を持っている。それを使っていくつもの世界を旅しているのだ」


 今までにない衝撃に、全身に鳥肌が立ち、産毛が逆立つのがわかる。

 メイプルへと顔を向けると、目を微かに見開いていたが、冷静なようだった。


「ふふっ、予想はついていたか?」

「えぇ……ただ、あっちの世界だけじゃなかった、というのは驚きだけれど」

「お主がハルキに言っていたのではないか。私が世界を超える力を持っている、と。お主が知っている以上に、宇宙も時空も次元もある、ということだな」

「想像したり、理屈でわかっているのと、実際に旅してきた相手が話してくれるのとでは受ける衝撃が違うのよ」

「さもありなん」


 おかしそうに笑うリアさんに、メイプルが肩を竦めて見せた。俺は口出しをせず、二人の話に耳を傾けているが、想像以上の事実が浮かび上がり、圧倒されていた。


「おや、確かお主ら地球の、日本という国ではこういう話しが流行っていると聞いていたのだが、もう廃れてしまったのか?」

「それを、どこで聞いたんですか?」

「神々でもお主たちの世界の事を知っている者はおる。例えばそう……大食いにお主たちの情報を教えた者など、な」


 なんだって? 思わず息を呑む。


「安心せよ。そやつはお主たちの味方だ。敵ではない」

「味方、ですか」

「お主を呼び出した者ではないぞ?」

「そうですか」


 だが、大食いに情報を与え、けしかけてきたことに代わりはない。もし会えるのであれば文句の一つでもいいたい。


「お主も恐ろしいことを考えるなぁ」

「俺たちが生き残るために試練を与えたっていうのは理解していますよ?」

「憎しみを抱いている訳ではないが、文句の一つくらいはいいたい、か。気持ちはわからんでもないが、もしも試練がなければ、今よりも弱い状態で邪神と遭遇することになっていただろうな」


 そこがわかっているから、俺も強くは言わないし、言うつもりもない。メイプルもそれは同じだろう。


「少し話が逸れたな。話を戻そう。私は異世界を旅し続けているが、ある理由からこの世界に留まり、この世界の神々に力を貸しているのだ」

「邪神関係ですか?」

「そうだ。おぉ、そうだ。ここでは妨害が入らぬからな。お主らの相手となる者たちのことを伝えておこう。と言っても、私も知っていることは多くない」

「邪神ですよね?」

「そうだ。正確な名前は分かっていないが、我々神々やその関係者の間では、『星海の邪神』と呼ばれている」


 星海の邪神。

 どこかで聞いたことがあるような……あ、この世界に来た日、メイプルから聞いたな。


 そのメイプルは訝しんだ表情でリアさんを見やった。


「待って。星海の邪神はもう倒されたって聞いているけれど」

「あぁ、その通りだ。女神の使徒によって星海の邪神とその配下の多くが倒された。しかし、別の宇宙か次元か……どこかは分からぬが、彼奴らの本拠地にはまだ少なくない残党がいるらしいのだ」

「その女神の使徒? とか言うのは仕留めなかったの?」

「理由はわからぬが、追撃をやめている……いや、やめされられた、と聞いているが、詳しいことは私にもわからぬ」


 やめさせられたって……。

 そこで全滅させてくれていればよかったのに。でもそうすると俺がこの世界に召喚されることはなく、メイプルはもしかしたら一人ぼっち……いや、こいつの場合は俺がいなくてもいつかは世界に出ていただろう。うん。


「たらればを考えても仕方ないでしょ?」

「そうだな」

「それに……私はアンタやエルナと会えてよかったと思っているわよ」


 メイプルはそう言って顔を背けやがった。追撃はやめておいてやろう。


「で、その星海の邪神の残党がどうしたのよ? この世界を狙っているってことでいいの?」

「そうだ。だが、この世界だけではなく、私が前に居た世界や、他の世界も狙っているだろう。奴らは、かつての栄華を取り戻そうと画策しているとされている」

「総大将が倒されたのに、おとなしくできねぇのか……」


 まるでどこぞのコズミックホラーに出てくる中間管理職邪神どもみたいな奴らだ。

 まさか、残党の奴らは、星海の邪神を蘇らそうとしているのか?


「いや、それはない。女神の使徒により、完全に倒されている」

「どこかの海の底で眠っているとか、恒星に幽閉されているとかはなく?」

「ない」


 リアさんは真っ直ぐに俺を見て断言した。

 破壊神であるリアさんがそう言うのであれば、真実なんだろうな。


「私がこの世界に留まり続けているのは、この世界の神々への協力もあるが、同時にこやつ等を倒さなければ他の世界に移動することが困難だからでもある」

「つまり……」

「うむ、私の力でお主たちを元の世界に戻そうとするならば、遅い来る邪神の残党どもを殲滅しなければならない、ということだ」


 そう簡単には行ってくれないか……。

 俺とメイプルはため息をついてしまうが、くよくよしてもいられない。


「で、敵はどれくらい残っているのかしら?」

「それもわからない。攻めてくるタイミングも数も毎度ランダムで、一柱だけの時もあれば三柱、五柱で来ることもある。一か月単位で現れることもあれば、年単位で現れないこともある。かと思えば倒した次の瞬間に次の侵入者が別の場所から姿を現すなんてこともある。奴らが後どれだけ戦力を残しているのか、または増やしているのかもわからないのだ」

「厄介ですね……」

「あぁ。だから私はこの星の、この大陸を旅しながら見つけ次第叩いている、と言う訳だ」

「あ、もしかして姿を突然消して別の場所に現れるって言うのは」

「邪神を倒している場合もあるが、大概は気まぐれだな」


 あ、はい。


「ハルキ、メイプル。お主たちが故郷に戻りたいのであれば、邪神どもと戦わねばならないのだ」

「……そのようですね」

「仕方ないわねぇ……」


 超絶面倒なんだが……元の世界に戻るためには避けて通れない道のようだ。


「あ、ちなみに女神の使徒は今でも戦っているんですかね?」

「噂によれば、今も戦っていると聞いている。だが、本拠地を叩きに行った、だとか行く予定については全く聞いたことがないな」


 他力本願もできないか。

 本当に面倒だ。正直、できるものなら今すぐにでもデモ○ベ○ンの必殺技をコピーして、この世界へ侵略しようとしている邪神どもを纏めてぶっ飛ばしたい。


「落ち着きなさい」

「すまん」

「気持ちは分かるわ。けれど、今の私たちじゃ相手にもならないと思うわよ?」

「お前なら行けるだろ」


 魔法剣一斉射撃やボルカニックゲイザーなど、大食いをボッコボコにしてみせた魔法の威力は絶大だった。それに、こいつはまだまだ隠し玉を持っているかもしれないし、ある程度なら迎撃できそうだ。


「確かにメイプルであれば、下の上くらいまでであれば相手にできるであろうな」

「という事よ」

「どんだけ強いんだよ邪神軍団……」


 それでも下の上クラスを相手にできるメイプルも何者だよって話だが。


「腐っても神、という事だ。しかし、お主たちは強大な力を持っている。強くなれば、我々と同様に奴らを打ち払うことができるであろう」

「そうすれば、いつかは戻れるってことね」

「気が遠くなるような話だが、諦めるか?」

「「冗談じゃない!」」


 俺たちの声が重なった。

 それを聞いたリアさんが笑みを深めた。


「うむ、良い気迫だ。それでは、邪神退治のためにも、お主たちは大食いの試練を潜り抜けて行かねばならん。様々な力や経験、それから仲間を得るための旅に出るのだ」

「言われなくてもそうするつもりよ」

「仲間は難しそうですけどね」


 信頼できて、あのバカみたいな死闘を一緒に潜り抜けてくれそうな人は、そうはいないと思う。

 エルナやセイジュさんは特殊ケースだ。そう考えて仲間集めをしないといけない。


「邪神と直接戦う者だけが仲間ではないぞ? まぁその辺はよいか。ともかく、お主たちが予想以上に強い意志を持っていることを確認できてよかった」

「どこかでヤバい奴とぶち当たるのはお約束だし、覚悟はできていたわよ」

「やるしかないなら、やるだけですよ。」


 覚悟が決まっているなんて言い切れないが、元の世界に戻るための道があって、俺たちに可能性を切り開く力があるのであれば、やってやるさ。


「うむ、それでよい。エルナもセイジュも強い。お主たちであれば、そう遠くないうちに邪神の一柱を討伐しそうだな」


 そう言うフラグめいた発言はやめてくだしぁ。


 お茶を飲んで一息ついたところで、リアさんがまた口を開いた。


「昨日話せなかった話しについてはこれくらいだな。エルナたちには、私から必要な部分だけ話しておくから、気にする必要はない」

「ありがとうございます」

「次に、先ほど演習場で言った事についてだが」


 メイプルのボルカニックゲイザーについてだな。

 エルナやセイジュさん、ソーシャさんは見たことがないと言い、リアさんは何やら知っている様子だった。

 俺も使えるようになっているんだろうが、一体どんな謎があるんだろうか。


「それについては、私が話すわ」


 メイプルが小さく手を挙げた。


「よいのか?」

「別に隠すことでもないし。もし晴樹が使えるなら、邪神や他の強敵との戦いを有利にできるわ」

「そうだな。では、私は少し休ませてもらおうか」


 リアさんがソファに深く座り込み、メイプルが上半身を俺へと向けた。


「んじゃ、ボルカニックゲイザーについて簡単に説明するとね。あれはこの世界の魔法じゃないの」

「魔界か?」

「魔界経由ではあるけれど、完全に別の世界。こいつが前に居た世界、でいいと思うわ」

「どういうことだ?」

「今は気にしなくていいの。とりあえず、あの魔法はこの世界では完全に異質の存在よ。確かに似たような魔法はあるけれど、ボルカニックゲイザーはある世界の超魔王がよく使っていた、最高クラスの大地の魔法なの」


 こいつ、別世界の魔王の魔法を使っていやがったのかよ。そりゃあんだけ威力があっても当然だ。大食いが絶叫しながら宇宙へ追放直前まで言ったのも納得できる。

 そして、それを習得しているこいつは、本当の本当に何者なんだよ。


「通りすがりの転生者よ」

「うん、知ってる」

「訂正する点があるとすれば、魔王ではなく、その夫だな。魔王の相棒でもあり、勇者でもある。そして、本家はもっと凄まじい威力と効果だったぞ?」

「後もう少しなんだけどねぇ。中々上手くいかないわー」


 世間話をするような二人のやり取りをBGMに。

 俺は考えることをやめた。



加速……加速……加速……ッッ!

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