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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第二章 サキュバスとエロ漫画野郎とクッコロさん
77/451

5-7 サキュバス一行とクッコロさんと破壊神 神との激闘 顛末 

少し長いです。



 静まり返った山頂で、俺たちはしばらく黙っていたが、


「……さて、お主たち。いきなりすまなかったな」


 リアさんが口を開いた。


「私はお主たちを試した。彼奴が乱入してきたのは予定外だったが、概ね、全員の実力を見れてよかった」

「……聞きたいことが、山ほどあります」

「残念ながら、私が知っていることは少ないぞ?」

「嘘ですよね?」

「本当だ。ともかく知っていることをお主らに話すとしようか」


 岩室の近くで車座になり、リアさんの言葉に耳を傾ける。


「さて、私が知っていることは三つ。

 まずはハルキ、お主が勇者として果たさなければならない務めについてだ」

「勇者じゃないのに……」

「確かに、この世界の勇者召喚には沿っていないが、お主の力は紛れもなく超常のものであり、そしてその言動から、私を含めた神々のほとんどは勇者として見ている」


 あ、ダメだこれ。神様たちが勇者認定しているってもう詰んでるのと同義じゃねぇか。


「ハルキ君、どうして君はそこまで勇者でないことに拘るんだ?」

「いや、何か特別な力があるから勇者って、それってどうなのかなぁと」

「たわけ。いくら力があろうと、その振る舞いが伴わない者などただの無法者だ。この世界の勇者召喚でも、呼び出される勇者の条件には性格や言動の基準があり、それらに引っかからない者はいくら魔力があろうと腕力があろうと召喚されん」


 流石は神様、この世界の召喚システムについて詳しい。


「まぁそれはおいておこう。ハルキ、お主は勇者としてある者どものと戦わなければならない。その相手は――――だ」


 ん?


「すんません、もう一度お願いします」

「――――だ」


 あれ?

 メイプルたちは茫然としたり驚いたりしているから、聞こえているんだろう。


「すみません。何だか、その部分だけが聞き取れないんです」

「何?」


 俺をじぃっと見つめたリアさんは、


「……なるほど。今はまだ、お主は知らなくていいということか」

「何ですかそれは」

「いや、お主にその力を授けた者の働きだろう。お主が知るには早すぎるということか」


 さらっと重要なことを言われたけれど、今の話を聞く限り、今みたいに妨害されるんだろう。話に戻ろう。


「えぇと、魔王じゃないんですか?」

「違う」


 違うか。

 あ、わかった。


「邪神ですね」

「――――」

「あ、聞こえませんけど、メイプルが頷いてるんで当たってますね」


 ジャミングした奴には悪いけど、勇者が対応しなきゃいけない魔王じゃない脅威っつって、俺が思い浮かべるのは破壊神か星を食らう系のラスボスか邪神くらいなんだよ。

 まぁ、まさか本当に当たっているとは思わなかった。

 というか、リアさんとさえこれなのに、邪神となんて戦いたくないんだけど。


「ふむ、そうだな。では、邪神、これなら聞こえるか?」

「はい」

「うむ。ハルキが戦う相手は邪神の一軍だ。この世界の神々たちが抑えているが、中々手こずっているようでな。私も目にしたらその都度屠ってはいるが、何分力が強く、もしも神々の何者かが倒されれば、そこからこの星を攻め滅ぼそうとするだろう」

「神様が手こずるような相手を勇者はどうにかできるんですか?」

「普通はできん……が、先々代の勇者二人ならどうにか対応できるであろうな」


 例の勇者夫婦か。

 もし現代地球出身の奴らなら、邪神関連の知識やお約束を知っている可能性はあるし、戦い方にも幅ができるだろう。


「そしてハルキもまた、彼らと同じく邪神を倒せる可能性を持つ勇者である。ここまでは良いか?」

「あ、はい」


 大体わかった。ちくしょう、俺を召喚した奴、いつか会った時に絶対に文句を言ってやる!!


「さて、次に我々の目的だが、先に話したように、ハルキが邪神と出会っても勝てるように、生き残れるように力を着けさせ、時に実力を試すためだ。もし仲間がいれば、その者たちも同様に鍛える」

「それがリアさんや大食いのやっていた試練、ですね」

「あぁ」

「ですが、我々が死んでしまえば、元も子もないのでは?」


 エルナの当たり前の質問に、リアさんは不敵な笑みを浮かべた。


「多分、大食いは蘇生できるんですよね」


 俺の言葉に、エルナとセイジュさんの表情が固まった。反して、リアさんは笑みを深めた。

 メイプルも「あーっ!」と声を上げて、


「やっぱり、大食いってダーーーー」


 あれ、また名前が伏せられたぞ?

 あのぅ、力をくれている神様(?)が干渉してきているんなら、俺はもう正体に気が付いているんですがねー? と念じておく。


「ねぇメイプル、なんて言ったの?」


 どうやら、今度はエルナとセイジュさんにも聞こえていないようだった。


「ふむ、どうやらまだ教えてはならない、ということか」

「いや、もう俺は正体わかったんですが」

「私もだけど、ちょっと変わっている部分があったりで確信が持てなかったわ。不覚ね」


 仕方がない。だが、これでアイツとの戦い方はわかった。次から攻め方を変えよう。

 俺とメイプルはニヤリと笑い合い、親指を立てた。


「何を企んでいるのかはわからんが、小細工程度でどうにかなる相手ではないぞ?」

「まぁ、今までの嫌がらせの報復として実行します」

「……。……彼奴め、一体何をしたのだ……」

「「「「……」」」」


 俺たち四人(被害者)は揃って空を見上げる。

 星が綺麗だなぁ……。


 気を取り直し、三つ目について聞かせてもらおう。


「最後に……ハルキ、メイプル、お主たちの秘密についてだ」

「あ、それなら胸の内にしまっておいていただいて結構ですので」

「いや、是非聞かせてもらおう」


 セイジュさんの静かな声音に、場がしんっと静まった。


「……エルナ、お前は知っているんだな? この二人の秘密とやらを」


 エルナが俺とメイプルへ視線だけ寄越してきた。

 まぁ、もうこの際だ。メイプルなんて、ダンジョンの時からセイジュさんをこちら側へ引き込むみたいだったし、今も「いいわよー」と頷いている始末だ。

 頷き返すと、エルナは小さく息を吐いた。


「はい」

「……言いたいことは色々とあるが、私もこれを聞いたらギルドマスターたちには黙っておかなくてはならなくなるんだろうな」

「そうしてくれると助かる」

「ギルドマスターには話してもいい気がするけどね」

「何でだよ」


 面倒事は増やしたくないんだが……。


「すでに面倒事に巻き込まれてるわよ」

「そうだな」

「……はぁ」


 え、なんだよその反応。


「それで神ヴァーヴァリアス、この二人にはどんな秘密があるというのだ?」

「まず、この二人はこの世界の出身ではない、というところから始めようか」


 セイジュさんからの熱い視線を感じた。照れるぜ。


「メイプル君は魔界出身だということはわかるが……」

「あら、私もこいつと同じ世界の出身よ?」

「いや、君はサキュバスだろう。ここでなければ魔界ということになる」

「それについてだが、メイプルの魂は普通ではない」


 ちらっと見やるリアさんに、メイプルは人差し指を立てた。何だその合図は。


「この者は『転生者』だ。恐らく、何かしらの原因で魂が世界を超え、サキュバスとして生まれ変わった。その上、前世の記憶や知識、人格もそのままという状態だ」

「待て。つまりメイプル君も超越者だというのか?!」

「あら、散々見ておいて気が付かなかった?」

「気が付くものかっ! あぁ、通りで二人して不思議な言葉を使うと思っていた。そうか、ハルキ君と故郷が一緒であれば、全て納得がいく」


 頭を抱えているところに申し訳ないが、疑わないのか?


「メイプル君の常識外の強さの全てに納得できる」

「ふふっ、アタイったらサイキョーね」

「少し黙ってろお転婆ナインボール」

「そう言うやり取りができるのも、故郷が同じだからなんだな……」


 まぁ、そう言う事だが。


「それで、ハルキ君たちの故郷と言うのは……その、まさかとは思うが……」

「そのまさかだとしたら?」

「では……!」


 セイジュさんだけでなく、エルナも前のめりになった。え、何。


「――――、――――と同じだ。遥か次元と宇宙と世界、様々な要素を超えてここに遣わされた者だ」

「やはりそうか……」


 セイジュさんがまた俺たちを見てきたが、何だろう、目が爛々と輝いていてとってもヤバい感じがする。


「ハルキ君、メイプル君」

「「あ、はい」」

「君たちの旅に、私もこれから同行させてはもらえないだろうか!!?」

「セイジュさん、それは……」


 エルナがやりにくそうに肩を叩くと、セイジュさんは名残惜しそうに座り直した。


「ぐ……いや、しかし、これはまたとないチャンスなんだぞ?」

「セイジュさん、気持ちは痛いほどわかりますが、この二人と冒険すると、これまでのような、いえ、今日以上の強敵や困難にぶつかるでしょうし、何よりいつか邪神と戦う事になりますよ」

「何を言っている! それくらいなんともない! むしろ、我が国と民のためにも、邪神は倒さなくてはならんだろう!」

「それはそうですが、お父上とお母上、それから姉君と弟妹君が賛同してくれるとお思いですか?」

「くぅぅ……何とか、説得したいが……」


 あぁ、やっぱりいいところのお嬢さんなんだな、セイジュさん。メイドさんもいるみたいだし。

 しばらく唸っていたが、やがて肩をがっくりと落とした。


「仕方がない。だが、せめて、一週間だけでも! 一週間だけでもいいから一緒に行動させてくれないか?!」

「えと、俺は別に構いませんよ」

「私も問題ないわよー。でも、今日みたいな冒険をするかどうかはわかんないわよ?」

「それでもいい。それに、君たちを見ていると、何だか新しい事ばかりでな。胸がこう、ドキドキするのだ」

「そうですか。んで、エルナは?」

「もちろん私は大歓迎よ。セイジュさんと昨日からこうやって冒険するの、久しぶりだから」

「エルナ……」


 和やかな空気に笑みが浮かんでしまう。


「ありがとう神ヴァーヴァリアス。試練を仕掛けられた時はどうなるかと思ったが、結果として素晴らしい冒険ができた」

「それはよかった。だが、そうだな。お主もハルキたちの仲間として我々は見ている。例え離れ離れになったとしても、いつの日か共に冒険する日がまた来よう」

「はい、そのためにももっと強くならなければ……」


 力強い姿勢に、何だか惚れ惚れしてしまう。

 昨日はクッコロさん呼ばわりしていたが、もう呼ぶ事はないだろう。




 その後、疲れがどっと出てきたのだろう。夕食も取らずにエルナとセイジュさんは眠りについた。

 俺もへとへとだったが、普通に起きていられる。メイプルと並び、リアさんと対面に座って日課である魔法の練習をする。

 リアさんが使っていた魔法をいくつかサイズを小さくして再現すると、メイプルが悔しそうに唸った。


「うぅ、解析できそうで、できないなんて!」

「いや、これはそう難しいものではない。仕組みさえ理解できれば、お主なら使いこなせるだろう」

「絶対に使いこなしてやるわ!」


 そう言って、まさ魔法の観察に入った。

 こうやって何かに真剣に取り組む姿は、見ていて気持ちがいい。じぃっと魔法を見つめ、俺では理解のできない色々な要素を解析しているんだろう。


「……時にハルキよ。貴様のサイレント・ムーヴとやらだがな」

「あぁ、はい」

「あれは神相手にはあまり有効ではないだろうが、一度くらいなら、短時間だけ完全に存在を隠せるだろう。つまり、魔王くらいなら暗殺できるということだ」

「はい。ですが、魔王を暗殺したい訳じゃないので……それに、サイレント・ムーヴばかりに頼っていても、強くはなれませんから」

「うむ。お主の強みの一つは、その魔法やスキルを最高、最善の効果で会得し、組み合わせて全く新しい力を生み出すことだ。まだまだ強くなれる。心も、体も。謙虚さを忘れないようにな」

「ありがとうございます」

「ねぇヴァーヴァリアス、一ついいかしら?」


 魔法から目を離したメイプルが尋ねるが、お前その呼び方はいいのか。リアさんも気にしていないようだし、いいんだろうが。


「何だ?」

「こいつの能力をくれたのって、神様? それとも魔王?」

「メイプル、お前そろそろ言葉使いをなんとかしないか?」


 聞いていてハラハラするんだが。


「よいよい」

「ですが……」

「あまり詳しくは話せないが、我々の間でメイプルという名のサキュバスは有名でな。私も会ってみて少し驚いてしまった」


 え、こいつ神様に名が知られてるのかよ。一体何をしたんだ。


「え? ――――――を防いだだけよ?」

「ジャミングが酷い」

「じゃあ、まだ知るべきではないってことね」

「時が来たらわかるだろう。ハルキに力を与えた者の正体も、メイプルの功績も、今、知らなくても悪い事は起こらぬし、知っていてもそれで余計なトラブルに巻き込まれ可能性の方が高い内容だ。知ることができるその時を楽しみにしているといい」


 え、じゃあ知りたくないです。少なくとも邪神をワンパンできるくらいになってから聞きます。

 そんな風に話していると、やがてメイプルも船をこき始め、やがて寝てしまったのだが、俺の膝を枕代わりにするのやめてくんね?


「そのままでよいのか?」

「起こしますよ」


 笑うリアさんを他所にメイプルを起こそうとして、やっぱり起こさずにどけようと思い、魔法を駆使してそっと地面に横たわらせようとした。しかし、メイプルの奴、眠る時に防護用の魔法をいくつかかけているため、どかせようにも動かすことができない。というか、ガッチリ膝にくっついて離れないんだがこいつ?!


「ははははは、まるで親子のようだな」

「それならよかったんですがね」


 これは何をやってもダメだ。このままにしよう。


「起こさないのか?」

「もう放っときます」


 今度何かからかわれたら、これについて語って反撃してやろう。


「……お主ももう寝た方がいい」

「そうしたいんですが、何だか眠気が来ないんですよね」


 疲れすぎたのかもしれない。タスラムに回復はしてもらっているのだが、余計に目が覚めてしまっている気がする。


「お前もありがとな」


 遅ればせながら、収納魔法の中に手を突っ込み、タスラムを布で磨くと、淡く明滅した。えぇと、嬉しいんだろうか、嫌がっているんだろうか。


「懐かれておるなぁ」

「どうも」


 またしばらく無言の時間が続く。

 星海の下で、俺は魔法の練習をして、リアさんがそれをぼぉっと眺めている。

 たったそれだけなのに、心が温まる。


「ハルキ」

「はい?」

「先ほど私に使っていた、催眠魔法を自分にかけてみてはどうだ?」

「天才ですか」


 数秒後、俺は夢の世界へ旅立った。

 ありがとうリアさ……Zzz……。

 夢は何も見なかった。







 そして今日――全員の目が覚めたのはお昼近くで、リアさんにからかわれながら、俺たちはラベルへと帰還し、色々あってオムライスの大量生産をひーこら言いながらこなしている、という訳だ。


「ところで晴樹。あれからリアに文句は言えたの?」

「リアさんじゃなくて、調理係の人マジでカムバックって言いたい!」

「あ、お客さんもうすぐ終わりみたい。お疲れ様♪」

「ちきしょう、俺一人で作りきったぞぅ!」

「ごちそーさまハルキ!」

「ハルキさん、ごちそうさま」

「ごちそうさまでした」

「ハルキ、美味しかった」


 フリージアたちからお礼の言葉をもらったが、一番おかわりしていたのはこいつらだった。ちきしょう、将来立派な冒険者になれよお前らぁ!


 その後、支部長室から注文が届き、俺は追加のオムライスを人数分作りながら、まぁこれはこれで楽しかったと気を取り直す。


 これから先に、リアさんと大食いが言っていた、邪神とやらが待ち受けているのだろうが……それに比べれば、この程度、何ともない。

 しかし、おかわりを要求する美女、美少女たちに、やっぱりキツいわ、と思い直した。


 こうして、旅の破壊神ヴァーヴァリアスとの死闘、及び大食いの乱入騒ぎは、幕を閉じたのだった。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

後もう少しだけ第二章は続きます。

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