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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第二章 サキュバスとエロ漫画野郎とクッコロさん
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5-5 サキュバス幼女一行とクッコロさん EXTRA STAGE

日付変更&月初めのアップです。




「いや、まだ及第点だ。追試を受けてもらおうか」


 背後から聞こえてきた声に、息が詰まりかけた。

 振り返ると、岩室の上にマントを羽織った人物が立っていた。顔は見えないが、声音からして女性のようだった。


「おいおいヴァーヴァリアス。まさかこんなもんで合格とか言うんじゃないよ? たかだか心を癒すだけの炎に、何を倒せるっていうんだい?」

「貴様か……」


 どうやら知り合いのようだ。ん? 俺もなんか聞いたことある気がする。


「貴様、今のを見ていたであろう? あの炎の効果はそれだけではない」

「神に対しても有効なのは確かに凄いけれどねぇ? それで奴らを止められるんだったら苦労はしないよ」


 この声、殺気、間違いない、奴は……!


「アンタ、大食いか?!」

「一日ぶりだねぇハルキ? 昨日の敵は今日も敵。男子三日会わざらば括目せよ。その強さ、試させてもらうよ」


 マントの下から、どこに隠していたのかわからないほど巨大な棍棒を取りだし、それを頭上に掲げた。


「はっ!!」


 等身大の大食いの姿が掻き消えた直後、上空に魔法陣が出現した。


『さぁハルキっ、メイプルっ、それから冒険者どもぉ!! 追試の時間だよぉぉぉ!!』


 雷鳴を思わせるような歓声と共に、魔法陣から巨大な影が落ちてきて、山から少し外れた街道に地響きを鳴らせて降り立った。


 月明かりに照らされるのは、全身を鎧に覆われた、棍棒を担ぐ巨大な騎士。


 タガネル・ダンジョンで出会った、大食いの姿そのものだった。


「マジか……」


 いつか、いつか来るとは思っていたが、流石に翌日再戦とかちょっと予想外すぎるし、突っ込みどころが満載だけれども、とりあえず一ついいだろうか。


「……その鎧はどこから入手したんだ?」

『ロールの研究室から借りただけださね』


 少し離れた場所にいる俺のつぶやきを拾う超聴力を発揮する大食いを警戒しながら、ロールへ通信を行った。


「あ、もしもし、ロール?」

『こほんっ、あら、どうしたのハルキ?』

「突然通信して悪いんだが、お前、例のゴーレム鎧さ、あの後大食いに貸した?」

『へ? あの後会っていないわよ。って言うか、どういう意味? まさかアイツ、そこにいるの?!』

「うん、お前の研究室から借りたって言った鎧を引っ提げてな」

『はァァァァ?! ……あああああああ、一つない!!』


 絶叫で耳が痛いと思ったら、通信が切れた。

 そして、大食いの真上に魔法陣が出現するのとほぼ同時に鎧姿のロールが飛び出し、ドロップキックを敢行した。


『大食いアナタって人はあああああああ!!』


 超破壊エネルギーと化したロールの一撃を、しかし大食いは流れるような動きで足を掴んでスウィング、そして一回転して魔法陣へと豪快に投げ飛ばした。


『あああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………――――』


 魔法陣の向こうから轟音が聞こえ、そして魔法陣は閉じた。

 一種のアトラクションのようにも、予定調和のコントのようにも見える一連の流れに、思わず乾いた笑みが浮かんだ。

 何してんだろう、こいつら……。

 そして、大食いは何もなかったかのように振り返り、


『さて、準備はいいかい?』

「たんま」


 そもそも俺、へとへとで戦いたくないんだけど。


『よし、いいみたいだね。それじゃあ、ちょっと受け止めてもらおうか! 大突撃(グラン・ダッシャ―)ァッ!!』

「だからたんまつってんだろぉおお!!」


 大突撃をかましてきた大食いをエーテル・ランパートで受け止めた。こいつ、山ごと俺たちを吹き飛ばすつもりかよ!


「待てっつってんだろぉぉおめぇはよぉぉ!!」

『本気で殺しに来る奴が待てといわれて止まってくれる訳ないだろ?』


 正論だが、仮にも試練とかほざいているお前は、せめて関係ない周囲の迷惑くらい考えろ。


『おらぁっ!』


 振るわれた棍棒の一撃に、エーテル・ランパートが一際大きい光の破片をまき散らした。

 まずいな、あれはそう何発も受け止められんぞ。


「すんません、リアさん。メイプルたちを連れてこの山から脱出してはもらえませんか?」

『ダメだよヴァーヴァリアス。アンタは私たちの戦いを見届ける側なんだ』

「うむ。ハルキよ」

「その必要はないわ」


 リアさんの言葉に続くように、左肩からメイプルの声が聞こえてきた。見やる余裕はないが、定位置に手を置いて浮かんでいる相棒の姿は予想できた。


「エクストラ・ステージってところね」

「お前、魔力は回復したのかっ?」

「おかげさまでね。それと」


 両視界の端から、疾風共に金と銀の閃光が飛び出し、滑るように空を移動しながら壁と相撲している大食いへ高速接近した。

 あれは、エルナとセイジュさん……?!

 二人はシールド魔法をサーフィンボードのようにして空中を滑空していた。

 強化された感覚が、エルナたちの動きを追い続ける。


「「はぁっ!」」


 シールドを蹴って、左右から大食いへと斬りかかる。狙っているのは、鎧の関節部の隙間だろう。やや下方から、腕部の鎧の隙間に魔法剣で突き刺そうとしている。

 だが、刃が届いていないらしく、火花が散るだけで、ダメージを与えられていないようだ。セイジュさんの剣に至っては、砕け散った刃を魔法剣とすることで補っているため、長さが少し短くなっている始末だ。


 それにしても、大突撃の勢いとジェット噴射、それにエーテル・ランパートの破片が散る中をよく突撃できたなあの二人。

 足元に出現したシールドに再び乗ってその場を離脱するエルナたちは、しかし、大食いの頭上で合流する。そして、エルナはセイジュさんの構える魔法剣の腹に跳躍し、


「エルナぁっ!!」

「はいっ!」


 振るわれた勢いも乗せ、盾を構えたエルナが大食いへ凄まじい勢いで落下突撃する。

 使われているシールド魔法は……三枚!

 瞬時に大食いの兜の前頭部へとぶつかり、轟音が鳴り響いた。


『ぐぉっ?!!』

「はぁぁぁぁぁッ!!」


 続けてセイジュさんが落下し、素早く退いたエルナと同じ場所に魔法剣を叩きつけた。砕け散る魔力の剣身は、しかし光の粒となって大食いの兜へと殺到した。


『ぐああああああっ?!!』


 大食いの二度の悲鳴。勢いが弱まった隙に、エーテル・ランパードで押し返す。


『まだだ……こんな力任せじゃぁ、ダメだねぇ!』

「アンタに言われたくないわね」

「それな」


 奴が体勢を立て直す前に決めよう。


「エルナ、セイジュ、避けなさい!」


 攻撃後、シールド魔法に着地したエルナとセイジュさんが左右に大きく離れ、弧を描きながらこちらへ戻ってくる。


「さて……晴樹、そのまま抑えてなさいよ!」

「任せろっ」


 前回、とどめをさしたのは俺だ。

 今回は、お前がやれっ!


 その時、大食いの真下の地面に亀裂が走った。踏んばりや勢いでできたものではなく、そこから赤やオレンジ色の綺麗な光が漏れ出し、


『何ッ?!!』

「大地の力よ星の血よ、いまソナタの外敵を天へ追放しましょう!!」


 異変に気が付き、逃げ出そうとする大食いをエルナとセイジュさんが魔法で牽制し、俺もエーテル・ランパートの威力と方向を調整して押さえつける。


『おいまさかお前さん、こいつは……っ!!?』

「ボルルゥカニックゥゥッ・ゲイザァァァァァァァァァァッッ!!!」


 メイプルの絶叫と共に、大地から灼熱色の巨大な柱が噴き出し、大食いを空高く吹き飛ばした。エーテル・ランパートで押さえつけられているため逃げ出すことができず、大食いの絶叫が上空から振ってくる。


『ぐあああああああああああああっ!?!』

「オラオラオラオラオラオロアロアロアロアオラオロアロアオラオロアオラオロアロア!!」


 辺りを照らし出す赤々とした溶岩の柱はどこまでも昇っていく。

 あれ、似たような状況を見たことがあるぞ。漫画で。


『ど、どこまで上げる気だいっ?!』

「決まってるでしょ。晴樹、障壁を消して」

「いいのか?」

「ええ。仕上げよ」


 指示通りに障壁を消したが、もう大食いがどうなっているのかはわからない。魔法によるものだろうか、ドップラー効果の乗った絶叫が未だ聞こえてくるため、鎧も本人も無事なんだろう。

 もっとも……それが棍棒の効果によるものであれば、この先の展開が予想できすぎてアレなんだが。


「宇宙イケェェェェェェェェェェェッ!!!!」

『ぐわああああああああああああああああッッッーーーー…………』


 溶岩の柱が巻き戻しのように高速で地面へと消え去り、そして、大食いの声は聞こえてこなくなった。


「アリーデヴェ……いえ、もう二度と会わないだろうから、言い直すわ。

 アッディーオ♪」


 直後、上空で一際眩く輝く星ができて、消えた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


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