5-3 サキュバス幼女一行とクッコロさん そうか、そうだったのか……
さらに連続投稿、です。
「何?」
初めて怪訝そうな顔になったリアさんに、俺からプレゼントだ。
弾丸の形をイメージしたスリープを六発、指先から放ち、次々とリアさんの体に直撃したが、全て光のオーラに掻き消されてしまう。
それでも俺の姿を見つけることができず、彼女はその場にとどまったまま視線を軽く動かす。
今のリアさんからは、俺の姿は見えていない。彼女に最初に見破られたのは普通のサイレントベールだ。
一か八かの賭けで使ってみたが、どうやら神様相手にでも通用するらしい。
恐るべし、謎の複合魔法っぽい力。
とりあえず、このまま攻撃を加えよう。あの光のベールを取るためには……そうだ、同じ力をぶつけて相殺すればいい。
そう思った直後に不可視の光が放たれ、リアさんを覆うベールを打ち消した。
「何?!」
驚くリアさんを見据えて、弾丸化スリープを撃った。さらにダメ押しに収納魔法からクォータースタッフを取りだして構え、先端からメイプルが刀から出したような魔力光線を発射した。
全弾命中。
しかし、彼女が倒れることなく、かざした掌でビームを受け切られてしまった。
「……なるほど、よくやった……やはり、お主は勇者だ」
「っ!」
「だが……隠れながらこそこそやるのは、あまり好かんなぁ」
その瞬間、リアさんの目が俺の方に向いて、彼女の体がこちら側へと入ってきた。
「マジかよ……」
その時、リアさんの顔が……好意的な笑みに変わった。目は全然笑っていない。
「見つけたぞ、ハルキ」
「だろうな!」
飛んできた拳を、今日だけで何度も世話になっているシールドで相殺する。やべぇなこの人、絶対本気を出していないのにこの強さ。
大食いの時よりも強い絶望感がこみ上げてくる。
「さて、そろそろ次の攻撃へ移るとしようか」
「っ?!」
言うなり、リアさんが掲げた右手の上に巨大な光球が生まれ、俺に目がけて投げつけられた。
咄嗟に俺は収納魔法からゴーレム・コアの欠片を無数に展開させ、魔法を発動。作り出されたのは大食いの大突撃を食い止めた、巨大で透明な壁だ。
名づけて、エーテル・ランパートッ!
壁が光球を受け止めるが、大食いの突撃を受けた時のように光の粒をまき散らしている。しかも、あふれ出した光がまぶしいのなんの。
なんて、その隙に背後に回っていたリアさんの気配を感じ取り、間一髪蹴りを避けた。
「ほう?」
「あっぶねぇ!」
よかった、変態妖精のサングラスバリアを同時使用しておいて。おかげで目が潰されることもなく次の攻撃に対処できた。バリアはガラスのように音を立てて蹴り砕かれたが。
避けながら放ったチェーンで、リアさんの体をがんじがらめにする。光のオーラはまだ出ていない。やるなら、今がチャンスだ。
振りほどかれる前に、俺は跳躍し、空中に展開したシールドに乗って更に高く跳躍。
エーテル・ランパートを解除すると、当然――――。
「何と!」
リアさんへ光球がぶつかった。
直後、彼女を中心に光の柱が立ち昇り、俺はその勢いをシールドで防ぎながら、ウインドを使って衝撃なく着地する。
咄嗟にやってみたことだったが、これは効いたはずだ。
そう思っていたが、再び姿を見せたリアさんは、相変わらずの無傷だった。
「やってくれるな」
「っ!」
隣に現れたリアさんに向けて、彼女が放った光球をイメージしたものをお見舞いする。
「なるほど、なるほど……それが、お主の力か」
だが、それを受けてもなお無傷。
光の中で佇む姿は神々しく、絶望的だった。
無敵だ、アホみたいに強すぎる。大食いはまだダメージを受けている様子がところどころにあったが、この人にはそんなものが一切ない。
どうする、もう後がないぞ。
今の光球はリアさんの模倣だ。つまり、俺が現状使える魔法の中で、一番破壊力が高い魔法になるだろう。
ボルカニックゲイザーとやらの本来の威力は未知数だが、恐らくリアさんにダメージを与えられるとは思えない。
万事休すだ。
俺に何ができる?
変態妖精の使った植物魔法、ロールが見せた魔法……召喚、いやダメだ、関係ない奴を巻き込めないし、ロールが殺される。そもそも召喚できるかどうかも危うい。大食いの使った魔法で有効そうなのはジェット噴射くらいだが、闇雲に突っ込んでも潰されるのがオチだ。
複合魔法も、この土壇場で思いついたものはいくつかあるが、どれも通じなさそうなものばかり……ッ。
焦りながら、強化された思考をフル回転させて打開策を探していると、リアさんの冷たい目が、ほんの数センチ高いところから俺を見下ろしていることに気が付いた。
「……やはり、ダメか」
「は?」
「……はぁ……もういい……タスラムも使わない、勝てる見込みのある魔法も使用しない、雑念だらけで思考が纏まっていない……そのくせ、私を殺さずに勝とうと思っている」
タスラムはメイプルの魔力の回復といざと言う時の脱出の為に行ってもらっている。
ボルカニックゲイザーは使用しても勝てそうにないから使わないだけだ。
雑念だらけなのは認めるが、生き残る方法を適宜シュミレートしてるんだから仕方ないだろうと言いたい。
それから、リアさんを殺さずに勝とうと俺が思っている、と思われているようだが、その辺りはノーコメントだ。そんなことを考えている方が気が散る。
と言うか、失望した声音に、ちょっとイラッときた。
いや、アンタ……話を聞いていた限り、全部の原因リアさんじゃねぇか。ステルスで近づいて申し訳なかったとか思っちゃったけど、ちょっと撤回してもいいかな?
俺たちが来るように仕向けて、勇者なら戦えとか言って? んで、いざ戦ってみてなんか自分の判断基準に沿わなかったから失望しましたとかお前ふざけんなよ?
「まったく、新しい勇者がこれとは……」
「勇者じゃねぇって言ってんだろーが」
勇者勇者と、人も魔族もダンジョンマスターも謎の大食いも、果ては神様まで俺を超人認定してきやがる。
「何だその目は? 私に勝てないで、この先どうする? どうやってあの戦神に勝つつもりだ?」
いきなり何を言って……いや待て、戦神に、勝つ?
怒りの感情が渦巻く思考の中で、引っかかるものがあった。
戦神?
俺、戦いの神と会った事なんて、今の今まで……。
その時、脳裏にダンジョンであった幾つかの会話がよみがえった。
『ハーフでも魔神に聖域魔法って相性最悪なんですけど……』
『くはっ、お前さんっ、まさかソレを使う気になったとはねぇ』
ロールと、大食いの言葉。
『ロール……』
『なんか知ってるのか?』
『いや、うぅん……まぁいいわ……不確定だし』
メイプルが、ロールの名前に何かひっかかっていたようだった。
頭の中で、記憶の欠片が浮かび浮かび、渦巻いてはどこかで繋がっていく
ロールは大食いを止めた時、その目を光らせていた。あれは、きっと魔眼で。
大食いは無傷で、棍棒も無傷で……タスラムをくれた…………ん?
棍棒、大食い、タスラム……魔眼、魔神……ロール…………。
「――――あ」
そうか、そうだったのか……。
虚無りません、たぶん。
ウンメイノーもないです。




