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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第二章 サキュバスとエロ漫画野郎とクッコロさん
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5-2 サキュバス幼女一行とクッコロさん 勝て。それだけだ

連続投稿、です。


 神々しい光を纏うリアさんの赤い眼差しが、俺を射抜く。殺気が凄い圧力となって体を叩いてくるが、動けないほどではなかった。


 立ち上がり、エルナとセイジュさんの様子を確認する。強化された感覚で捉えられた二人は……息をしていなかった。


「っ?!!」

「落ち着きなさい晴樹、いい? 落ち着くのよ!」


 メイプルの鋭い声と共に、強張った体が落ち着きを取り戻した。精神系の回復を行ってくれたのだろうが、意識はそれどころじゃないと叫んでいる。

 メイプルは二人を一瞥した後、小さく息をついて、それから、


「二人は生きているわ」

「え?」


 日本語で、耳元でささやくようにして伝えてくれた。


「仮死状態って奴ね。二人は大丈夫。それよりもアイツは――――」


 言葉の途中で、視界が大きくぶれたかと思うと、リアさんから大きく距離を取った位置に立っていた。

 どうやら、いつぞやのようにメイプルが俺の体を操って避けたらしい。けど、助かった。


 なんて考えてたらリアさんの姿がぶれたので、俺は反射的に幾重にも張ったシールドを左側へ展開しながらバックステップ、更に後方宙返りしながら更にシールドを発動。直後、重ねた魔法が一斉に砕かれ、最後に張ったシールドの前で止まったリアさんの爪先に戦慄を覚える。

 サンダルなのに強ぇ……。


「っ、この世界の魔法は、元々魔界から伝承されたものなの。でも、アイツが使っているのは――――」

「っぉ!?」


 スウェーバックからのウインドによる補助付きで後方へ流れるように移動し、バックステッポしながらチェーンを四方八方からリアさんに放つが、どれも弾かれるし砕かれるし、避けられる……かーらーのー聖域魔法!

 もちろん弾かれるのは分かっているから、炎の弾丸をこっそりと撃ち込んでおきました。あ、全部表面の光で無効化されてる……っとぉシールドォ!!


「ごふっ?!!」


 鳩尾に良いのが入ったが、多重展開シールドとメイプルの回復魔法のおかげで、メッチャクチャ痛いだけで済んだ。一瞬心折られそうだったぞおい。

 リアさんが片眉を上げた。怖ぇ。メイプルが反撃に放った魔法を全部片手で払い除けている。


「晴樹。破壊神ヴァーヴァリアスは恐らく、この世界の出身じゃないわ」


 メイプルは意味深にそう言うと、収納魔法から紅い刀身を持った刀を取り出したかと思うと、俺の肩を蹴って中空へと舞い踊り、リアさんの頭上へ。


 そして、収納魔法を複数展開。今の今までこっそりと収納魔法内でチャージして威力を増した、幾つもの光の柱がリアさん目がけて降り注いだ!


「オラオラオラオラオラオラオラオラアラオラオラオラオボラロアオラオラオラッッ!!」


 ラッシュ声に魔力が乗り、威力を増した光から圧力を感じ始めた。

 スポットライトのように一点に集中する激しい魔力光線の雨。

 そして、メイプルの刀から一際太いビームが放たれる。


「魔法剣一斉射撃ぃっ、アンドォォォッ!」


 空中で一回転して、メイプルは地上へ剣を振り降ろした。身体強化の上に更なる強化を重ねてなお、目にも留まらぬ一撃。

 しかし、それは光の中心から突き出された二本の指で挟まれ、止まってしまった。

 姿を現したリアさんは、まったくの無傷だった。


「見事であった」

「お褒めに預かり、光栄だわ。でも、本命は!」

「何……?」


 メイプルが苦々しい表情で口端を釣り上げたかと思うと、柄から手を離し、掌をリアさん……の足元へ向けた。


「ボルカニックゲイザァァァァァァァァァッ!!」

「!」


 突如としてリアさんの足元が爆発したように吹き上がり、土の巨大な柱がメイプルごとリアさんを空の彼方へと突き飛ばした。

 メイプルの咆哮が夜の世界に木霊し、周囲に土や石ころが突風と共に散らばる。シールドでそれらを防ぎながら、エルナやセイジュさんの前にも展開、ついでに回復魔法を込めた弾丸を撃ち込んでおいた。

 やがて、土の柱が崩れるようにして地面へと引っ込んでいき、メイプルが空から落ちてきた。


「メイプルっ!」


 ウインドで落下の勢いを和らげてやりながら、飛びあがって彼女を受け止め、努めて衝撃がないように着地する。

 様子を伺ってみると、魔力の急激な消費によるものだろう疲労困憊の状態でもなお、メイプルの奴は清々しい笑みを浮かべていた。


「ダメだったわ。まさかあれでノーダメとか、やっぱり破壊神は一味違うわ……」

「諦めたら試合終了なんだが」


 直後、土の柱が引っ込んで荒れた地面の上に、リアさんが優雅に降り立った。やはり、無傷で、服すら無事だった。

 戦慄していると、リアさんがふと口元に笑みを浮かべた。


「まだまだ練度が甘い……が、魔力不足でなければ表面にも溶岩を纏わせられたか?」

「何言ってんの……こんなところで威力を調節せずに使ったら、あの子たちに被害が及ぶでしょうが」


 強がってはいるが、本当に多くの魔力を消費しているのだろう。大食いとの戦闘を思い出すと、これ以上メイプルは戦えない。

 メイプルを降ろして、回復魔法をかけておく。


「休んどけ、後は俺がやる」

「やめときなさい、こりゃ何したって勝てないわよ?」

「そりゃ、どうかな?」


 彼女の周囲にシールドの魔法で流れ弾対策を施してやり、相も変わらず余裕の態度で待つリアさんの下へ。


「何度も待ってもらってすみませんね」

「気にすることはない。存分に足掻くといい」

「んじゃ、お言葉に甘えさせてもらいましょうか」


 全く、命のやり取りだって言うのに、我ながら緊張感のないセリフだ。

 反面、内心では重圧に押しつぶされそうで眩暈を感じている。


 メイプルが最後に使った魔法は、恐らく切り札の一つだ。

 リアさんの言葉が正しいなら、本気を出したら溶岩が吹き上がるとか、そんなアホみたいな技なんだろう。こりゃ絶対使えないな。俺がやったら威力を抑えても溶岩が噴き出そうだ。

 いや、周囲に被害が及ばないように調整……できるかもしれん。それはまた後で考えよう。


「ハルキよ、ここでお主が負ければ、あのサキュバスや冒険者たちの明日はない」

「怖い事言ってくれますね……あの三人は勇者でもなんでもないんですよ。一人は子どもですし。狙いは俺なんでしょ? だったら、俺の勝ち負けに関わらず、あの三人は助けてもらえませんか?」

「ダメだ。あの上級冒険者が言っていたように、死ぬ覚悟はしてきているはずだ。そこのサキュバスも覚悟くらいはできているだろう」

「そこを何とかなりませんかね?」

「勝て。それだけだ」


 シンプルだが、クリア難易度が狂気じみている。

 メイプルの超魔法を連続でくらいながらも、ノーダメージ・ノーペインの神様相手にどうしろって言うんだ。


「……んじゃ、最後に二、三点、聞いていいですかね?」

「いいだろう。何が聞きたい?」

「……俺と戦って、リアさんが得する事ってなんですか?」

「今代の勇者がどれほど強いのかを見定めながら戦えることとだ」


 なるほど、バトルジャンキーな一面もあるんですね。流石は破壊神だ。


「じゃあ、俺の持っている神器について何か知っていることはありますか?」

「さぁな。ただ、お主たちが傷ついているのを知って、憤ってはいるということはわかる」


 収納魔法を少し開いてみたが、特に変化はなかった……が、手を突っ込んで触れると、何だか少しだけ表面が熱い気がした。リアさんの言う通り、怒っているらしい。


 落ち着け、タスラム。お前は癒しの力を収納魔法を伝ってメイプルたちに送ってくれ。それから、メイプルのところへ行って、出来ればナターシャさんにアイツらの加護と脱出の手助けをしてもらえるように頼んでみてくれ。


 念ずると、タスラムの表面から熱っぽさが消え、先日感じた心地よい光が溢れ出していた。

 収納魔法を閉じて、最後の質問といこうか。


「最後に……リアさんは、異世界へ渡れますか?」

「私が動けるのは、私が動こうと思った場所までだ」

「そうですか……ありがとうございます」

「うむ、心残りがないなら、始めよう。待ちくたびれた」


 リアさんの瞳の輝きが苛烈さを増す。

 迫る殺気と威圧に耐えながら、俺は――――サイレント・ムーヴを使用した。


晴樹「ここからは、俺のターンだ!」(小西さんボイス真似)

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