4-1 サキュバス幼女一行とクッコロさん 旅の破壊神
少し短めです。
夕暮れの街道を爆走し、目的の山の入口へとたどり着いた。
オレンジ色に照らされ、ところどころ影のある山は、破壊神がいると言う割には、特に変わった様子は見受けられなかった。
精々が、アニメとかで、絶対にこれからヤバいことが起きる前の状況描写を想起した程度だ。
しかし、メイプルたちは何かしらを感じ取っているようで、緊張した面持ちで山を見上げていた。
「メイプル君、これは……」
「えぇ、凄まじいほどの神気よ」
「これが、神気……ッ?!」
エルナが生唾を飲み込む。
どうやら、俺以外は全員、謎の威圧感を覚えているようだ。
聖域を含めた各種トンデモ魔法を展開しているメイプルですら気圧され気味なのだから、屈強な冒険者が近づけないのも納得できる。
それよりも、これで破壊神のいる場所が特定できたらしく、メイプルが俺の左肩から全員に呼びかける。
「場所が特定できたけれど、どうする? 後戻りするなら今のうちよ?」
「そうもいくまい」
「えぇ、破壊神が神気を出してまで何をしているのか、確かめなくては……」
セイジュさんとエルナはすぐに気を取り直していた。流石は上級冒険者とその妹弟子。
ところで二人とも、冷や汗が凄いけど大丈夫か?
「晴樹、行ける?」
「問題ねぇな。お前こそ大丈夫か?」
「誰に物を言っているのよ? じゃあ、一気に行くわよ。エルナ、セイジュ、着いてきなさい」
メイプルが指差す方向へ走り出す。
山へ入った途端、濃密な精気が俺たちを出迎えた。
季節は秋の中頃から終わり。熟した果実の香りが鼻孔を擽る。徐々に真っ暗になっていく中、人間離れした動体視力が、木に実った果実や足下のどんぐり、聖域魔法に反応して離れていく遠くの動物、魔物たちの姿を捉えていく。聴覚が、鳥の鳴き声や、狼の遠吠え、枝葉の擦れる音を拾ってくる。
しかし、破壊神がいて、神気を出していると言う割には……、
「普通だな……」
「えぇ、特にこれといって変ったところはないわね」
神様がいるくらいだから、何かしら異変があったり、戦闘イベントがあるかもしれないと考えていたんだが、杞憂だったようだ。神気の影響をもろに受けるのは、人間だけらしい。
じゃあ俺が感じていないのは……勇者だから、じゃないよなぁ。そうであってくれ。
足場の悪さをものともせず走り続け、数分もしないうちに、前方の木々からブラッドオレンジ色の光が漏れているのが見えた。
「ここからは聖域魔法の効果範囲を狭めるわ」
「「「了解」」」
光の中へと飛び出すと、濃紺と緋色のグラデーションに彩られた空と、斜陽に照らされる岩室が現れた。
鼻を通る空気が冷たく、少し薄い感じがする。
どうやら頂上に着いたようだが、ここで辺りを見回し、世界の景色を楽しむわけにはいかない。
メイプルも、エルナもセイジュさんの緊迫した空気が伝わってきた。
自然にできたらしい岩室の中に人影が座っていた。
俺たちが羽織っているようなマントの下に、顔を隠すようにベールを被ったその人物は、肩幅の印象から女性のように見える。
間違いない、彼女が旅の破壊神だ。
「いたぞ……」
「あれが……」
セイジュさんが確認のために、エルナが思わずと言った様子で、それぞれ声を潜めてつぶやいた直後。
『その通りだ』
女性の良く通る凛とした声が、山頂に響き渡った。
嘘だろ、俺とメイプルの隠蔽魔法を見破った……?
メイプルが息を呑むのがわかった。
『よくぞ来たな、勇者、並びにその盟友たちよ』
芯の強さを感じ取れる、綺麗な声が耳朶を打つ。
岩室で座っていた破壊神が流れるような動作で立ち上がり、一歩、二歩、と前に出て止まった。
『我が名はヴァーヴァリアス。私がお前たちの言う、旅の破壊神だ』
破壊神のベールとマントが蜃気楼のように消え去り、現れた顔に、俺は――――
「リア……さん?」
彼女が、旅の破壊神……。
CMを見て爆笑して一巻を買った小説、そのCM第二弾を思わず二度見してしまいました。
ベルさん、何を、何をやってるんですかもぅ最高のコラボでした二巻も買います(テンション↑




