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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第二章 サキュバスとエロ漫画野郎とクッコロさん
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3-4 サキュバス幼女一行とクッコロさん 無慈悲な答え

 しばらくしてからメイプルがたちが戻ってきたが、その頃には周囲の様子はほとんど元に戻っていた。


「あら、楽しそうね。何かいいことでもあった?」

「いや、コーヒーが美味いなぁって」


 本当、こんなに清々しい気分でコーヒーを飲めたのは初めてだ。

 ありがとう、リアさん。


「……おかしいわね」

「さっきから独り言が多いよ? さ、行きましょうか」


 首を傾げるメイプルを他所に、納得した様子のエルナに連れられて、大図書館へと移動した。




 中央広場から少しだけ外れた場所に、大図書館はあった。

 レンガ造りの三階建てで、メイプル曰く、本を保管、管理するために多くの魔法がかけられているらしく、盗難対策もバッチリとのこと。

 流石は王立図書館。


「これなら魔○沙が来ても問題ないわね!」

「パ○ェがもっと動かなくなるなぁ」

「二人とも、行くわよー」


 中に入ると、天上高く聳える本棚の森が出迎えてくれた。

 冒険者だけでなく、一般人、学者など、老若男女問わず、本棚や読書スペースでそれぞれ望む本を探し、読んでいた。

 利用者の出で立ちはどうあれ、これだけなら現代の図書館でも普通にある光景っぽい。なんて思ってふと首を動かした先、壁に『風魔法による浮遊・飛行禁止』と書かれた注意書きを見て、あぁ異世界の図書館だと頷いてしまった。


 ところで、魔族らしき女性がふよふよと浮いて天井近くの棚に本をなおしているのだが、もしかしてサキュバスだろうか。


「えぇ。あの子はサキュバスよ」


 俺の視線に気づいたらしいメイプルが日本語で教えてくれた。


「浮遊できるし、こういったところだと重宝されているのかしらね」

「お前のこと、気づかれたりしないか?」

「直接会ったら気づかれる可能性はあるでしょうけれど、多分大丈夫よ。バレても誤魔化しようはあるし」


 まぁ、そう言うならいいんだが。

 それにしても、司書のサキュバスか。最初に洞窟で出会ったサキュバスとは違って、露出の少ない服を着用している。スカートは膝丈で、下から見えないように足を正座するように折りたたんでいるが……。うん、よくわかんない色気があって、男の子にとっては目の毒なんじゃないかと思ったが、周囲の人は彼女に気付いていない様子だった。


「安心なさい晴樹。普通のサキュバスだって姿を消すことはできるわ」

「え、じゃあなんで俺たちは見えてるんだよ?」

「多分、あの子の設定した見える条件に入ってるんでしょ?」


 あぁ、そういうことか。

 どんな条件なんだろうか。あの子に危害を加えない人、みたいな感じだろうか。

 エルナに確認を取ってみたら、やっぱり姿が見えていた。

 じゃあ、女子には姿が見えていて、男子には見えないようになっている、か? それだと俺が見えている理由は一体。


 首を傾げていると、件のサキュバスがふと振り返って、下を向いた。

 目が合ったので小さく目礼しておくと、向こうは少し驚いたようだったが、営業スマイルで会釈を返してくれた。

 良い子、みたいだ。


 サキュバスの新しい一面(?)を見れたことで少し嬉しい気分になった後、さて俺たちも調べものを、と受付へ向かおうとしたところで、後ろから呼び止める声が聞こえてきた。


「待ってくださいっ」


 振り返ると、冒険者ギルドの相談窓口にいた受付嬢さんだった。少し息を切らせていたが、すぐに落ち着いた様子になった。元冒険者なのかもしれない。

 一体どうしたのかとエルナが尋ねると、ギルドへ急ぎ戻るようにと早口に伝えてきた。


「支部長がお呼びなんです」

「支部長が?」


 いぶかしむエルナを見ながら、俺は呼び出しの要件に心当たりがあって心臓が音を立てるのを自覚した。

 まさか、リアさんとの一件で、何かまずかったことがあったんだろうか……いや、まずいことだらけだったが。


 不安になりながら、冒険者ギルドまでの道のりを急いで進んでいく。

 メイプルは普通の女の子、という表向きの設定通り、俺が背負って走った。


「ねぇ晴樹、何か呼び出しの内容について心当たりはある?」

「ない……」


 多分。

 そうであってくれ。




 ギルドに着き、受付嬢さんに案内された支部長室で待っていたのは、俺のちっぽけな悩みは杞憂だった、という知らせだ。


「ギルドマスターからの指名依頼です。エルナ、すぐに二人を連れて、ラベルへ戻りなさい」


 がっしりとした体格と威厳ある声音の、ロマンスグレーのシブい王都支部長がそう告げる。


「わかりました。ですが、その、依頼内容は……?」

「私も詳しくは……詳細はラベルで聞いてもらうとして、どうやら来たようですね」


 支部長が言い終えるのと同時に、副支部長の女性に連れられて、その人は現れた。


「セイジュさん!」

「やはり、お前たちも呼ばれていたか」


 やはり、という事は、セイジュさんもギルドマスターから指名依頼を受けたのか。


「ハルキ君とメイプル君が呼ばれたという事は……上級冒険者でも対応が難しい相手が現れたか」


 セイジュさんの視線に、支部長と副支部長は静かに唸るか、目を伏せるだけだった。そうか、この人たちも俺とメイプルが暫定勇者という事を知っているか。まぁ、支部長と副支部長なら納得だ。

 でも俺たちは勇者じゃないから、そう言う依頼はノーセンキューだから。

 俺の心の拒否は当然誰にも聞こえず、そうしている間にも話はどんどん進んでいく。


「わざわざ二人を呼ぶということは、まさか魔王が現れたんですか?」

「いや、魔王ではないだろう。それなら彼女も呼ばれているはずだからな……」


 そこまで言うと、セイジュさんはちらりと、俺とメイプルを見た。

 あれ、何でだろう。とてつもなく嫌な予感がするぞ?


「そうか……そういうことか」


 おい、今なんでその台詞を吐いた?

 何か納得したなら心の中でつぶやけよ。もし魔王よりもヤバい奴が現れたら大変だろ。


「むしろ、もっと危険な存在だ」


 まぁわかっていた、予知夢。


 最初よりもひどい怖気に襲われた。

 魔王より危険な存在ってなんだよ。もしかして邪神か? 前にメイプルの言っていた邪神とやらが、長きに渡る眠りから目覚めて、海底から神殿か島が浮上しちゃう展開なのか?! 悪を憎む正義の怒りでグリッターな神様を召喚する系のイベントが発生したのか?!!

 ……冗談とネタが浮かぶという事は、どうやら、まだ精神的には余裕のようだ。多分。


 それはともかくとして。


 だんまりを決め込む支部長たちを一瞥した後、身構える俺たちにセイジュさんはこう告げた。


「破壊神だろう、きっと」


 Oh……予想の少し斜め上の、無慈悲な答えだった。



なんだか、テンション上がってきました(ぇ

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