1-5 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 魔物の勇者
お待たせいたしました。
そうだった……。
そう言えば、俺たちの中で一番強いのはメイプルだった。
出会った時に、子どものサキュバスの戦闘能力なんてたかが知れているから強い奴らに掴まりたくない、天敵はシーフとアサシンとロリコンども、みたいな事を言っていたが、全くの嘘っぱちだった。
エルナの常識を初日からぶち壊し、セイジュさんやロールというこの世界の人魔各種の強者のS○N値を直送した挙げ句、ロールを超える強敵大食いをも驚嘆せしめ、もう全部こいつ一人でいいんじゃないかな、を地で行く最強無敵っぷりを見せ続けやがったのだ。
俺が使える魔法のほとんどは、メイプルから教わった、または見て覚えたものだ。本が強力だったから、改良された俺の魔法が規格外なものになっていると考えると、納得がいく。
そう、さっきのスリープのように。
「魔物の勇者……」
「んぅ? なになに? おにーちゃんで、びーる?」
意味不明な言葉に混ぜてネタ仕掛けてくるんじゃねぇよ。手刀を眉間の高さに構えて振るんじゃない。お前の手刀なんざ食らいたくねぇよ。
「わたしのちょっぷは、いわ、くだくよ♪」
「事実だとしても驚かんわ」
んで、テメェの魔法剣は岩どころか異世界超金属を砕くんだろう、知ってる。目の前で見たし。
あ、ロールが思い出して震えている。トラウマになっても仕方ない状況だったもんな。
「ねぇ、ロールちゃんが震えているんだけれど、どうしたの?」
「え、まぁ、ちょっと色々ありまして……」
「えっ○す、きゃりばぁ♪」
大体合ってるが、可愛く言っても無駄だからな?
「あぁ、あれは凄かったなぁ」
「凄いってレベルじゃなかったですけれどね……」
セイジュさんとエルナを見てみろよ、星空に意識を投げ飛ばしている始末だよ。
支部長は俺たちの様子を見て、大体の事を察したらしい。メイプルの目の高さにしゃがみこむと、引きつった笑顔を浮かべ、
「ねぇカエデちゃん、不思議な魔法をいっぱい使ったりしたというのは聞いたけれど、その、ロールちゃんがびっくりした魔法ってどんなものなのか実際に見せてもらえるかしら?」
「うん、いーよ♪」
メイプルが無邪気(笑)に応えるが、その表情の裏側で「よっしゃ、支部長釣れた釣れた」とほくそ笑んでいるのが何となくわかった。
別に止めないが、まぁ、うん……。
数分後、訓練場のど真ん中に用意された的へ向け、メイプルがエルナから借りた剣からビームを発射。一瞬で蒸発させた事実に、案の定、支部長は絶句した。
「何、今の魔法剣は?」
「しゃ○にん○ふぃん○ーそーどだよ♪」
すまん支部長、それ、全然本気じゃないんだ。本気出したら訓練場どころかギルドと周辺の建物が跡形もなく消し飛ぶんじゃないかってくらいえげつないんだよ。
シャイニングどころか、超級だから。覇王というか魔王だから。いや、もしかしたら冥王かもしれない。
「……ハルキ君も、これできるのかしら?」
「……えぇ、まぁ」
頷くと、支部長は不意に笑顔を浮かべた。目は笑っていないのに、威圧も怒気も感じられない……無の境地に達したような笑みだ。
あ、これ知ってる。エルナがよく浮かべていた奴だ。
「今後、ラベルとその付近でスリープと光線は余程の事がない限り使用禁止ね」
「ア、ハイ」
是非もなし。
あんなもんポンポン使ってたら、俺たちも今度こそ周囲から勇者認定くらって面倒くさいことになるから、反対はしなかった。
んで、メイプルに至っては禁止令を食らいながらも、やりきった表情で胸を張り、鼻を鳴らしていた。
「てんせーあるある、またまたくりあーだよ!」
「すんません、後でよく言い聞かせておくんで」
日本語で楽しそうにはしゃぐメイプルを尻目に、兄らしい対応をして支部長には納得してもらった。
実際は無理だけどな。
お読みいただき、ありがとうございます。
メイプル「おっきーまものさんには、だ○くーこー○けんで殺ってやるぜぇぇぇってするの♪」
レリック「うんうん、カエデちゃんは凄いわねぇ」
セイジュ「まさか……支部長の目が、虚ろになっている……!」
晴樹・エルナ「「(メイプルだからなぁ……)」」




