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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者
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EP  サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 ハッピーエンドの未来

 しばらくの間、暖かな光で心身を癒した俺たちは、改めてダンジョンマスターと向き合った。

 マスターからはもう何の敵意や害意を感じることはなく、セイジュさんも剣は鞘に戻している。一応、腰に手を当てており、何かあればすぐさま柄の方にスライドさせるんだろうが。


「それで、お前はどうするつもりだ、ダンジョンマスター」

『んー、ダンジョンを畳んで、どこか別の場所へ行くわ。アナタたちみたいなのと、もう戦いたくないし』

「そうか」


 これが一番いい終わり方なのかもしれない。人間にも、このダンジョンマスターにとっても。


「ちなみに、参考程度にどこへ行くのかだけ聞いてもいいか?」

『当てはないわね。適当に安全かつ溶岩地帯が多い場所を巡るつもり。まぁ、いいところは全部他のマスターに取られてるけど……どこかでいい場所あるでしょ。ダンジョンはもう開かないから、安心して』

「ふむ。では、もしお前さえよければ、冒険者ギルドに来る気はないか?」

『へ?』

「セイジュさん?!」


 唐突な勧誘にエルナが声を上げた。俺とメイプルも驚いているが、お口はチャックしたままだ。この流れ、止める訳にはいかない。


「お前のその鎧も含め、トラップやゴーレムの技術や知識、捨てるには惜しい気がしてな。丁度ギルドでも技術士の新手を探していたところなんだ。もちろん、ゴーレムの研究や開発もしていいし、ある程度までなら費用も出せる。できうる限り、お前の要望に応えた研究室も用意する」

『嘘、本当?!!』

「このセイジュ、我が名誉と家名、そして上級冒険者としての誇りに懸けて約束しよう」


 凄い事を言いだしたセイジュさん。堂々と宣言する姿は、凛々しい騎士そのものだ。ドレスアーマー姿も、今はとてもカッコよく見える。

 ところで、一上級冒険者が確約できる条件ではない気がするんだが、その辺はどうするんだろうか。


『あ、ところでその職場に魔族はいる? できれば神族系とはあまり顔を合わせたくないんだけど……』

「神族はいない。魔族やハーフはいるし、理解ある人間もいる。というか、そう言う種族うんぬんを気にしない連中ばかりだから、安心するといい」

『そう…………それで、給料は?』

「相談次第だが、最低限これだけ出せる」


 セイジュさんがマスターに向けて両手を掲げている。大きく開いた左手に右手が重なっていてよく見えないが、うん、一桁目は最低限六あるのな。


『いいわ、冒険者ギルドで働いてあげる!! じゃなくて、働くわ!!』

「うむ。よろしく頼む。だが、まずはその前に調査隊に連絡をしないとな。ダンジョン入りをしている他の冒険者にもダンジョン閉鎖の告知をしなければ」


 先ほどから一転、一番楽しそうな雰囲気のダンジョンマスターを見上げ、満足げに頷くセイジュさん。さっきの戦いを経て、何か心境が変わったんだろうな。

 ところで、聞いている限り滅茶苦茶破格の条件をズカズカと言っていたが、本当にどうする気なんだろうか。あんな見栄を切ったということは、まさか実家は本物の貴族で、コネでギルドにどうとかしようって気じゃ……まぁいいけど。


 エルナはぽかんとしているが、俺とメイプルはようやく口のチャックを外し、顔を見合わせて肩を竦めた。


「結局、ハッピーエンドってところかしらね」

「みたいだな」


 まぁ、色々と大変なのはこれからだろうが、きっと大丈夫だろう。多分。


『あ、ねぇそこのアナタ』


 ダンジョンマスターが呼びかけてきたが、視線は俺へと向けられているように見えた。


「えと、俺?」

『そうそう、君よ君。名前、なんていうの?』

「晴樹だけど」

「ハルキ?!」


 エルナが少し慌てたように勢いよく振り返ってきたが、別に心配(・・)することは(・・・・・)何もない(・・・・)

 マスターは少しだけ考える素振りを見せた後、小さく頷いた。


『ハルキ……ハルキか。うん、わかった。助けてくれて、ありがとね』

「ン? 何の話だ」

『ほら、私の代わりに大食いを受け止めてくれたじゃない』

「あぁ、いや、あれは俺たちも危なかったし……アンタも、あの時大食いを止めてくれて、ありがとな」

『それこそ私が危なかったからよ。でも、本当に助かったわ』

「こちらこそ、助かったよ」


 まぁ上手く行って良かった。いや本当に。

 ふと、ダンジョンマスターが手を伸ばしてきた。巨大な手が近づいてくるというのは、中々迫力がある。巨人の国へ行ったガリバーも同じ気持ちだったんだろうな。


「ハルキ!」

「大丈夫よ、エルナ」


 エルナが前に出ようとするのをメイプルが止めていた。セイジュさんは静観していたが、いつでも動けるようにしているんだろう。

 エルナに大丈夫だと頷いておいて、ダンジョンマスターの手に鎧越しに触れる。


「まぁ、お互い生き残れて何よりってところだ。今度はちゃんと脱出装置、付けとけよ?」

『わかってるわよ』


 ダンジョンマスターは手をひっこめて頭をかこうとしたが、兜に気が付いてやめると、


『よいしょっ』


 おもむろに兜を取り外した。


「……ぇ」

「ふぅ、空気調節用の機能も付けておいた方がいいかなぁ。結構蒸れるし……」


 兜の下から出てきたのは、褐色肌の、綺麗な女性の顔だった。

 巨人の声というのは、小人側からしたら諸問題により聞き取り辛くなるらしいのだが、ダンジョンマスターの声は大きく響くものの、美しい声音だった。


「ん? どうかした?」


 呆ける俺に首を傾げたダンジョンマスター。天井の光を反射するプラチナのショートヘアが幻想的な雰囲気を醸し出している。頬を伝う汗のしずくもきらきらと輝いていて、なんというか、


「……綺麗だな」

「え?」


 いかん、思わず口に出しちまった。

 どうにか誤魔化さないと、ナンパ野郎のレッテルを張られてしまう。


「そのゴーレムの鎧さ、すっごくいいなって思ってな」

「そう思う?!」


 いきなり四つん這いになったと思ったら、顔をぐぅっと近づけてきてびっくりした。目がキラキラ輝いているが、スケールがウ○トラ○ンなのでちょっとビビった。

 言い訳だったが、思っていたことは事実なので、表にはいささかも動揺は出さずに頷き返した。


「あぁ、すっげぇいい。巨大騎士、カッコいいじゃねぇか」

「本当に? 本当にそう思う?!」

「あぁ、思う。俺の故郷にはアンタみたいな巨人や、でっかいロボット(ゴーレム)のお話しがたくさんあってさ、俺、こういうの好きなんだよ」


 そう言うと、マスターはしばらく俺を見つめ始めた。

 え、なにこれ。実は試されていたとかそんなのか? と思いながらマスターの目を見つめ返す。

 おぉ、拡大された人の顔だから、血管とか皮膚の作りとか血色とか色々わかるなぁと妙に感動しながら、振動するように大きさを変える瞳孔を含めた金色の瞳が綺麗だなぁとか、白目の部分って予想以上に血管通ってるんだなぁとか考えていると、マスターが再び手を近づけてきて、そっと指で俺の頭に触れた。


「ありがとう。私はロール。これからよろしくね」

「あぁ、よろしく。また会えたら、新しいゴーレムを見せてくれよ。結局俺、普通のゴーレムも見れなかったからなぁ」

「それじゃあ落ち着いたら一度見せに行く(・・・・・)わ」

「まぁ、できればでいいからな? そんなに急ぐことないから」


 満足そうに頷くと、マスターことロールはゆっくりと立ち上がり、黙って視ていたセイジュさんたちを一瞥した。


「それじゃあ、ダンジョンを畳む準備をするから。上の冒険者たちに報告しておいてね」

「……あ、あぁ……わかった」


 何やら驚いた様子のセイジュさんが頷いた。他の二人も口を開いて俺を見ているが、どうしたんだ?

 しかし、これから報告に行くとなると少し時間がかかるなと思い、手でメガホンを作ってロールへと呼びかける。


「なぁ、ダンジョン内へ一斉に呼びかけとかできないか? こう、各階層の一区画ごとに音を通す管を設置してさ、それでダンジョン閉鎖とかを知らせるとかさ」

「なるほどっ、それっ、グッドアイデア!!」

「報告は私がしよう」


 セイジュさんを掌に載せ、またもや目を輝かせたロールが早速何やら準備に取り掛かる姿が楽しそうで、俺も何だかうれしい気持ちになる。

 と、服の裾が引っ張られ、視線を向けるとメイプルが半眼半笑いで俺を見上げていた。


「晴樹、おめでとう」

「ん? 何がだ?」


 もしかして、巨人というか、魔神と友達になるのが人類初とか? だとしたら光栄だな。


「召喚契約よ。今後、アンタの呼びかけに応じて遠くからやってくるようになるわ」

「……はい?」

「だから、召喚契約。応用で遠距離通信ができるから、何かわからないことがあれば質問もできるわ。契約費、年会費、月額、通信費用、そのほか諸々無料で、何回でも質問を繰り返せるからクイズ選手権とかでこっそり使用できるわよ」


 なるほど、つまり最終回答する前に何度でもテレフォンできるってことかぁ、そんなズルしないけどなと一瞬現実逃避してから我に返った。


「っていつの間にそんな契約結んだんだ?! 俺全然承諾してねぇんだけど! 契約書に判子押してないんだが!!?」

「じゃあ断る?」

「いや断らねぇけどさ……」

「じゃあいいじゃない。ちょっとお馬鹿っぽいけど、可愛い子じゃない」


 にししと意地悪く笑うメイプルにイラッとしていると、エルナが近づいてきて、そっと俺の肩に手を置いた。


「ハルキ」


 慰めるような口調だが、実に良い笑顔を浮かべた。


「よかったね、魔神の血筋と召喚契約って、勇者様くらいしか前例がないよ?」

「エルナ、お前もか……」

「よし、連絡は終わった。我々も戻るとしよう。ん? どうしたんだ?」

「いえ、なんでもないです……」


 いつの間にか用事が済んだらしいセイジュさんの言葉に、俺たちはロールが用意してくれた外へ続く、どう見てもエレベーターの小部屋に入った。


「それじゃ、後でまたラベルってところのギルドでね」


 そう言うロールに、俺は首を振った。


「いや、俺たちはこれから王都へ行くから、また連絡するよ」

「ん? 何を言っている。君たちもラベルへ行くぞ」

「「え?」」


 俺とメイプルはセイジュさんに振り返る。

 セイジュさんは目を少しだけ丸くして、何を言っているんだ、と感情を露わにしていた。


「最寄の冒険者ギルドがあそこなんだ。君たちには、今回の事で色々証言してもらいたいこともあるし、こちらから聞きたいこともある。なぁに、時間は取らん」

「え、ちょっ、待っ」


 旅へ出たら、ダンジョン攻略の証言と説明のために始まりの街へ日帰りとかどんなギャグだ。

 エルナへ視線を向けると、頬を掻きながら頷き返してきた。


「セイジュさんの言う通りにした方がいいかな。それに、ロールの事もあるし……ハルキとメイプルがいた方が、話もスムーズに終わるから」

「マジですか……」


 全身の力が抜けそうになる。メイプルに至っては「ですよねー」と半笑いで頬を引くつかせていた。

 と、落ち込んでいる場合ではない。

 律儀に待ってくれているロールに小さく頭を下げると、苦笑を浮かべた後、悪戯っぽい笑みを浮かべてウインクをくれた。


「それじゃ、動かしている時は飛んだり跳ねたりしないでね。じゃ、また」


 扉が閉まると、体がグッと下に下がるような独特の感覚と共に、部屋が微かな音を立てて動き出した。まるっきりエレベーターだった。


「これ、上昇しているの……?」

「エレベーター、この場合は魔力で動く昇降機械ってところかしらね」


 戸惑うエルナに説明するメイプルを尻目に、さっきのダンジョンマスター・ロールの笑顔が頭に浮かんできた。

 くっ、巨人って近くで見たら体表の細かいところとか血管の色合いとかで色々アレなんじゃなかったのかよ! 可愛かったじゃん、色々な表情が思いっきり脳裏に焼き付いてんじゃん!! どうなっているんですかガリバー先生!!!

 少しだけ高鳴ってしまった心臓を落ち着かせていると、メイプルの漏らした声が耳に入ってきた。


「ロール……」


 まさか、俺の思考を読んだのかと思ったが、何か考え込んでいるだけのようだ。


「なんか知ってるのか?」

「いや、うぅん……まぁいいわ……不確定だし。それより、探し物は見つかったのかしら?」

「あぁ、たぶんな」


 ナターシャさんの啓示にあった、ダンジョンで手に入る俺たちの旅に役立つもの。

 光玉か、ロールとの契約か、どっちもか。

 まさかセイジュさんを助けたことで、上級冒険者から何かしら支援をもらえる、とかだったり? いや、それはないか。彼女を助けること自体はナターシャさんの予定に入っていた可能性があるが……まぁ、それはそれでいいか。人の命をまた助けることができたんだし。

 三つくらいかな、と指を立てると、メイプルは「多いわね」と苦笑を浮かべた。


「んで、このままラベルに帰るつもり?」

「帰る以外ないだろ。それに、エルナもあぁ言ってたし」


 まぁ、面倒くさいことになりそうだったらしらばっくれよう。

 そんな風に考えていると、エルナが肩を突っついてきた。どうかしたのかと目線を向けると、そっと耳元に顔を近づけてきた。


「ねぇハルキ、最後に使ったあの複合魔法って、メイプルの魔法と何を組み合わせたの?」


 セイジュさんがいるからだろう、こっそりと耳打ちしてくれる気配りがありがたい。

 サイレントベールで盗聴対策をしてから、種明かしを行った。


「アンタが大食いに突撃した時に使った魔法だよ」

「え……?」


 エルナが大食いに突撃した時、持っている盾が薄らと光っているのが見えたので、武具に魔法を付与したか、もしくは盾の前に魔法の盾を展開して攻防の両方を強化したかのどちらかだと踏んだ。そうでなければ、あんな猛スピードで超質量の堅い巨大物体へと突撃したのだから、身体強化以外にも武具に何か魔法を使用しなければ、盾もろともエルナは即死していただろう。


 問題は、どのタイプの魔法を使っていたかということで、もし武具に魔法を付与するタイプなら、どういう結果になっていたか想像もつかず、もしかしたら大食いを止めることができなかったかもしれなかったのだ。

 だから、薄く頑強なもう一つの盾を作り出す、いわゆるシールドの魔法と判明した時には、本当にほっとした。

 大食いを吹き飛ばした複合魔法(?)は、本当に一か八かの人生最大の賭けだったのだ。


 そんな賭けうんぬんは伝えず、使用したエルナの魔法を組み合わせた凄い壁ができたということだけを明かすと、エルナが半眼になって俺を見上げてきた。


「ハルキは、本当に勇者なんだね……普通、あんな事できないよ?」

「いや、勇者じゃないから。あの時はできることをやっただけだし」

「……勇者さまって、皆同じことを言うのね」

「はい?」


 何やら意味深な事をいうエルナに真意を尋ねようとした時、エレベーターが停止し、扉が自動で開いた。

 目の奥に重みを感じる陽光を手で防ぎながら表に出ると、真上から少しだけ傾いた太陽が照らしだす、ダンジョンの入口付近だった。


 まだ他の冒険者が出てきた様子はなく、詳しい説明はセイジュさんがしてくれるということで、俺たちは先にラベルに帰ることになったが、


「あぁ、もしラベルに戻っていなかったら、捜索隊が出るかもしれないな。私やギルドマスターも出るかもしれん。それと、ギルドは国際組織だから、他国へ行っても現地の私の仲間が君たちを手厚く迎えてくれるぞ」


 なんて笑顔でいうセイジュさんに内心で、「うるせぇ、誰が今更逃げるかよクッコロさんがッ!」と悪態をつきながら、しっかりとラベルへの帰路へと着いた。

 街道へ出たところで、エルナがちらっと見上げてくる。


「逃げないのね?」

「逃げたら負けだと思う」

「まぁ、わざわざバックれるようなことでもないし」


 メイプルが左肩に乗っかってきた。


「それよりエルナ。帰ったら宿屋の娘さんと感動の再会だけど、どうする?」

「それは……どうしようかな?」


 恥ずかしそうに苦笑するエルナだが、本当は嬉しいんだろう。それに、知り合いで一人だけ挨拶できてなかったようだし、街へ戻ったら会えるかもしれない。その時は、フリージアたちに伝言の事は礼を言って、食事でも奢るとしようか


 気分を落ち着かせたところで、ふと大食いの事が頭を過った。

 奴に俺やメイプルの情報を教えた相手はわからず、試練とその突破の褒美として渡された不思議な光玉について、多くの謎を残したまま去って行ってしまった。

 もう会いたいとは思わないが、恐らく、嫌でも再会することになるんだろう。フラグ回収なんて、現代人の考えたネタが理不尽にも発現するのだ。大きな事件へと発展していくパターンも回収されると考えた方がいい。

 アイツはきっと、俺がこの世界に召喚された謎に一番近い場所にいるように思える。ナターシャさんが話せないならば、奴に聞くしかない。

 また試練とかほざかれて戦いを挑まれたら、今のままでは勝てる気が全くしないがな!


 とにかく、今はラベルへ戻ろう。

 ギルドで今回の経緯を説明して、俺からもセイジュさんたちに聞きたいことを聞いて、それから宿屋の母娘さんとエルナの即日再会の微妙な空気という逃れられない運命(笑)を見守りながら、これからの事を考えていこう。


 そんな風に前向きに考えていたところ、メイプルが俺の顔を覗き込んできた。


「ところで晴樹君や、そろそろあの森が見えてくる頃だけど、どうするのかな? かな?」

「いつの間に……」


 言われて顔を上げると、あの森が遠くに見えていた。

 二度あることは三度ある。

 今朝、メイプルが言っていたのを思い出した。


「半日でフラグ回収か、早いな……」

「それはいいから、さっさと走り抜けるわよ」

「あぁ……あ、そうだ」


 聖域魔法を展開し、更にサイレントムーヴを発動させる。エルナにはサイレントベールを展開し、準備完了っと。


「よし、行くか」

「いいけど、あの子、今朝もカーテン・サンクチュアリを無視してきたのよ?」


 朝のランニング時にすでに使用していたか。いや、これまで街道を走っている時にずっと使っていたとしたら、途中で人間にも魔物にも会わなかった理由がわかる。凄まじく便利な魔法だ。

 そしてあの残念妖精は、メイプルの超魔法の数々を超えてやってきていたということだ。どんだけ恐ろしい察知能力を持っているだか。

 まぁ、それくらいは予想の範囲内だ。問題ない。


「サイレントムーヴも使ったからな……これで近づいてくるようなら、また任せた」

「了解、任されたわ」

「エルナもそれでいいか?」


 エルナへ顔を向けると、肩をすくめて苦笑を浮かべていた。


「わかったわ。でも、一妖精から逃げるのに規格外な力を使うんだね」

「絶対捕まりたくないからな……色々な意味で」

「同感ね」


 もうこれくらいの魔法の使用では驚かず、エルナは当たり前のように頷いて自身に身体強化を施した。こうやって俺たちと旅をしているうちに、エルナも規格外の力を手に入れそうだ。主にランニングで。


 そう言えば、この世界に来て走り回ってばっかりだな。

 エルナに助けられた時も走っていたし、その後妖精から逃げ回ってラベルへ向かう時も、ダンジョンへ来く時にも同様に全力疾走していた。

 エロ漫画を買いたかっただけなのに、突然召喚された異世界から帰るために駆けずり回っている今日この頃だが、まぁ、今のところはなんだかんだで楽しめているから、いいか。


 目指すはラベルだが、今、俺の意識はそのずっと先に向いている。この世界に来たときは描けなかった地球への帰還という、ハッピーエンドの未来だ。

 そのためにも、まずは裏ボス戦後のボーナスステージをクリアするとしますか。


「んじゃ、回復魔法は例によって施してあげるから、このままラベルまでひとっ走りよ!」

「「おー!」」


 転生万能サキュバス幼女の掛け声で、俺たちは全速力で駆け出したのだった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

これにて第一章が終了です。

少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。


次回からは第二章に突入します。



ぎるてぃせぶん、コンビニチート、ギルフェンセィアも近日新作を投稿していく予定ですので、

こちらもよろしくお願いいたします。

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