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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者
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8-6 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 これは罠よ!!

 まさに今、俺が肩に立っているダンジョンマスターと同じ巨大な鎧が、目の前に立ちはだかったのだ。

 違いは、胸部の宝玉が網目状のカバーで防護されていることと、手に巨大な棍棒を持っていることだ。全身鎧姿の騎士が棍棒とかありか。闇の魂的な装備か。よく高いところから落ちて無事だったな。

 ほんの少し現実から逃避している間も、セイジュさんとエルナは素早く態勢を立て直していた。


「くっ、仲間を呼んだか!」

『なっ、ななななな!! アナタ、大食い!!』


 どうやら仲間を呼んだ訳ではなさそうだが、知り合いみたいだった。どちらにせよ、これはダンジョンマスターを助けに来たと見るべきだろう。

 恐らく、というか、確実に戦闘になるだろうな……。


 まずい、ダンジョンマスターと違って隙が見当たらない。またサイレントムーヴを使ったとしても、宝玉がカバーに守られているため、俺の装備や魔法ではまともな攻撃できない。

 交渉しようにも、今の俺たちの状況を見れば、ダンジョンマスター討伐寸前そのものだ。説得は難しい、というか、できないだろう。まともな会話すらできるかどうか……。

 脱出しようにも隠し通路も正規の扉も閉ざされているし、万事休すか。メイプルの魔法で脱出できないだろうか、出来るなら遠の昔にやってるか、メイプルたちだけでも逃がせないか、ムリか、俺だけ、冗談じゃない、どうするどうするどうする?!!


 冷や汗が頬を伝う中、ダンジョンマスターが突然大声を上げた。


『大食い! アナタ、面白い奴らだから実験に丁度いいだろう、一度呼んでみればいいって言ってたけれど、滅茶苦茶酷い目にあったわ!』

『油断したのはお前だし、拘束されているのもお前の責任だよ。私に八つ当たりされても困る』

『ごふぅっ!!』


 知り合いからも正論で一蹴され、ダンジョンマスターの精神ダメージがまた一つ刻まれた。

 沈黙したマスターから視線を外した大食いと呼ばれる巨大鎧が俺へと顔を向ける。

 兜の向こうにある目と合った感覚があった。

 その瞬間、俺は背中にぶわっと悪寒が走り、気が付けば聖域魔法を発動させていた。


『ほぅ?』

『うぎゅううううううううう?!!!!』


 感心したような声を出しながら数歩だけ下がった大食いと、鎖の音を立てながら悲痛な声で耐えるマスターの落差に、内心驚きを隠せない。


「こいつ、ダンジョンマスターより強いのか!」

『ぇっ』

『まぁ、圧倒的な差で私の方が強いさね』

『ぇっ?!』


 ここまであらゆる脅威を退けてきたメイプルの超魔法カーテン・サンクチュアリ。俺が使用しているとはいえ、それを真正面からぶつけられて「あばばば」言ってるダンジョンマスターと違い、大食いは数歩下がったものの、耐えて見せたのだ。

 これにはメイプルも驚きを隠せないらしく、「マジで……?」という戦慄した声音が耳に入ってきた。


「ハルキ、早くダンジョンマスターから離れて!」

「ちっ、ダンジョンマスターよりも強い巨人とは、今日は散々だ!」


 エルナとセイジュさんが戦闘態勢に再び入る。

 言われた通り、即行で離れてエルナたちと合流し、対策を練った方がいいのはわかっている。しかし、メイプルの魔法がほとんど効いていない上、全身ミスリル合金装備を相手にどう戦えばいいのか。

 宝玉の破壊は難しいし、もう一つの弱点である魔法陣はどこにも見えない。もう一度サイレントムーヴを使い、バイザーの隙間から中を攻撃するか……くっ、何故か上手くいくヴィジョンが浮かばない。

 気が付けば、手が震えていることに気が付いた。


「はっ、ちょっと魔法が効かなかったくらいで、この様か……」

「晴樹!」


 メイプルが俺の隣にやってきて聖域魔法を展開する。俺の分と合わさり、強力になった魔法により、大食いが弾かれるようにして壁際近くまで後退し、ダンジョンマスターは、


『ハーフでも魔神に聖域魔法って相性最悪なんですけど……』


 滅茶苦茶必死に耐えていた。というか、魔神ハーフかい。


「すまんもうちょっと耐えてくれ!!」


 自分でも何でかはわからないが、ダンジョンマスターへ謝罪と同時に回復魔法をかけながら、合体した聖域魔法で大食いを壁際で抑え込む。


『ぐぐっ、はっ、やるじゃないか、想定していたよりもずっと強い!』

「だったらその殺気を抑えて私たちを見逃してもらえるかしら?!」

「殺気?!」


 そうか、さっきから感じている悪寒の正体は殺気だったのか。通りで手が震えたわけだ。森で受けた変態からの気配とは次元が全く違う。


『それはできないね。お前たちをここで倒すのが私の役目だからさ』

「俺たちを倒す?!」

『そうさ。お前がまだ弱いうちに、ねぇ!』


 気迫と共に無理やり振るわれる剛腕によって、聖域魔法が押し返される感覚があった。こいつ、不可視かつ実態がない力場を弾きやがった!?

 いや、それよりも気になることを大食いは口にした。

 初対面の相手が何やら俺の事を知っている素振りを見せ、俺の成長を妨げようとしているということは、つまり――!!


「アンタ、俺を召喚した奴を知っているのか?!」

『だとしたら、どうする?』

「どうもこうも、そいつは今どこにいる!」

『私に勝てたら教えてやるよ』

「晴樹、落ち着きなさい! これは罠よ!!」


 わかっている。俺はメイプルへ視線を送り、回復魔法を使わないように何度か意図的な瞬きをして見せた。

 確かに、相手の思わせぶりな言動に、もしかしたらと思ったことは事実だが、それで頭に血を上らせて無鉄砲に飛び出すなんていう、ドラマチックな真似はしない、というかできない。

 こういう場合は大抵、挑発に乗ってしまった奴が負ける。地球の歴史然り、漫画やラノベ然り、そしてここのダンジョンマスター然り。俺一人も嫌だが、メイプルやエルナも巻き込んでの全滅も御免だ。

 だからこれは、熱くなったフリだ。


「アンタ、俺の事をどこまで知ってる?!」

『どこまでかぁ。全く別の宇宙? ジゲン? から来たとか、一度見た魔法を完全再現できるとか、女神から啓示を受けてここに来た、くらいかねぇ?』


 ほとんど全部知ってるんじゃねぇぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!?



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