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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者
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8-5 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 ダンジョンマスターが……

 セイジュさんに指摘され、ようやく自分の立場を思い出したらしいダンジョンマスターは、しばし考えるように沈黙する。


『………………ミスリル塊の大きなの一つあげるから、許してくれない?』

「却下だ。このダンジョンを畳んでどこかへ行くというのであれば命だけは助けてもいい」

『い、嫌よ!! 他の場所はもう別のマスターが取ってるし、それにここ、静かだし、地盤は安定してるし、溶岩だまりが少し離れたところにあってゴーレム作りや実験には好条件なのよ!』

「我が国では、ダンジョンは出来うる限り迅速に破壊するというのが方針でな」

『そんな……私たちの城を資源に利用するから、人間に危害を加えすぎなければそうそう簡単には討伐破壊されないって話なのに……』

「それは他の国の場合だな。ダンジョンは確かに利益をもたらすが、より大きなリスクを背負う羽目になる。国際情勢や魔王出現の監視や情報収集でも忙しいというのに、いつ魔物を大量放出して新しい魔王になるかもしれん危険建築物と家主の心配ごとまで抱え込まなくてはならない? 破壊するに決まっているだろ」

『一介の上級冒険者が気にする範囲を大きく超えている気がするんだけれど?!! まさかアナタ、この辺りを治めている貴族とか豪族?』

「いや、違う……だが、国と民の平穏を願っていることは確かだ。故に、このダンジョンを破壊しなければならない」

『いやぁぁぁ!!! この冒険者、話が全然通じない!!』


 そりゃ通じないだろう。

 話しを聞いて、ダンジョンがどういう扱いを受けているかはある程度わかった。ダンジョンもので定番の魔物の大氾濫と、ダンジョンマスターの魔王化の可能性があるというのであれば、セイジュさんやこの国の判断も止む無し、というか、本来はその方がいいのかもしれない。

 もっとも、このアホの子、もといダンジョンマスターは、何となく大丈夫な気がしなくもないが……。


「私たちを体のいい実験体にするつもりだった相手に、これでもかなり譲歩している方だ。ダンジョンマスターなのだから、当然だろう」

『うぅ……だから嫌だったのよ、ダンジョンマスターなんて……私がやりたいのはダンジョン経営でも魔王になってハーレム作ることでもなく、ゴーレム造りなのに……』


 セイジュさんの厳しい言葉に、ついにマスターがむせび泣き始めた。兜のバイザー部分から水が溢れ、床に大きな水たまりを作っていくことから、巨人族なのかとどうでもいい推察が脳裏を過った。


「さぁ、退去か、討伐されるか、選べ」

『うぅぅぅぅ…………』


 セイジュさんの問いかけに答えられないダンジョンマスター。最悪、しびれを切らしたセイジュさんが討伐しかねない雰囲気に、俺は思わず口を出す。


「なぁセイジュさん、他の場所に行ってもそこで迷惑かけるんなら、さっきメイプルに言ったみたいに、こいつも雇うとか」

「確かに、国によればダンジョンマスターと相互扶助の取り決めをしているが、我が国でそれはありえない。こいつの意志がどうであれ、いずれ魔王になる存在は討伐する」


 静かだが、鋭い刃物を思わせる声音に少しだけ背筋が冷っとした。


「晴樹、これは私たちが一個人として口を挟んでいい問題じゃないわ」

「……あぁ」


 メイプルに言われて居心地の悪いやり取りを見守っていると、突然天井が輝きだした。


 まさか血迷って自分ごと攻撃かと身構えていると、ダンジョンマスターも泣き止んで茫然とした声を漏らしているのが聞こえた。


 そうしているうちに、光が魔法陣のようなものを描き始めたか思うと、中心部から巨大な物体が飛び出し、ダンジョンマスターの近くに落下。直後、落下地点の床が重量センサごと砕けて小規模のクレーターが形成され、部屋が大きく揺れた。


「おおおっ?!!」

『はわわわわわわわっ!!?』


 それに伴い、ダンジョンマスターの体が大きく揺らぎ、バランスを崩して後ろ向きに倒れていった。

 俺はこのまま離脱して難なく着地できるが、ダンジョンマスターはそうもいかない。恐らく、全身鎧にありがちな衝撃による大ダメージで大変なことになるだろう。


『ぁ……』


 マスターの小さな声を聞いた瞬間、俺は行動に出ていた。できる限り魔法の効果を強めるために、ダンジョンマスターの体に再び飛び乗り、魔法を発動させる。

 地面と中空から鎖が何本も飛び出し、ダンジョンマスターの両腕両足へ巻き付き、最小限の衝撃で転倒を防いだ。


『危なかったぁぁぁぁ……』

「いや、まだ油断できねぇ!」


 メイプルがセイジュさんを拘束するのに使った鎖の魔法と同じものだ。だが、メイプル曰く六万トンの体重を支えるには至らず、何本かの鎖が引きちぎれ、空中へ解けるように消えていく。


『ひゃわわわわわ!!?』

「重すぎるよなそりゃぁ……」

『重い言うな!! 最近気にしてるのに!』

「気にしてるのかよっていうか案外余裕そうだなアンタ!」

「何やってんのよ!」


 追加の鎖を出そうかとしていた矢先、メイプルの呆れ声と共に新たな鎖が出現し、ダンジョンマスターの巨体を今度こそ支えきった。


「すまん、助かった!」

「それはいいから、あれ、あれ!!」


 言われて、天井から落ちてきたものへと目を向ける。


 それは、俺が注目するのを待っていたのか、蹲った状態でため息をついた。


『やれやれ……仮にもダンジョンマスターともあろう者が、素人二人と冒険者二人に遅れを取るとは……よっこいしょっ』


 金属が放つ独特の摩擦音と共に、その巨体をずんぐりと起こし、立ち上がる。


「なんだ……と?」


 セイジュさんの焦った声は、俺たちの気持ちそのものだ。


「「「「ダンジョンマスターが……もう一人?」」」」


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