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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者
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8-4 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 企業秘密です♪

『な、なぁぁァァァァァ?!!』

「うるせぇっ?!!」


 大音響の悲鳴に思わず声を張り上げ、とりあえず装甲を連続で蹴って落下の勢いを殺し、メイプルたちの隣に着地する。

 だが、誰も俺の着地に気付いた素振りもない。重量センサからの情報を受け取っているはずのダンジョンマスターもだ。


「ご苦労様。えぇと、この辺?」

「ここだよ」


 メイプルから送られてくるダンジョンマスターの滅茶苦茶焦った思考から戦闘が終わった事を確認し、発動していた魔法を解いて、皆の前に姿を現した。


『な…………ッ?!! もう一人、いた?!!!』


 驚愕するダンジョンマスターに、俺は軽く手を挙げて見せた。


「どうも、ダンジョンマスターさん。晴樹です」

『あ、これはどうもご丁寧に……じゃなくて!!! 何それ!! 嘘、嘘嘘嘘嘘っ!! だって、上階で一緒になったそっちの騎士も合わせて、三人だったはずじゃ……!!』

「三人だと思った? 残念、四人だったのよ!」

『そんなっ! この部屋にも感知装置は設置している! いくら姿を消していたとしてもすぐにわかるはずなのに……!』

「それはね……企業秘密です♪」


 どこぞの未来からやってきたお姉さんの声真似をしてウインクするメイプル

 漫画じゃあるまいし、勝ち誇ってネタバレなんてしない。ある意味、敗北フラグにもなりかねないし。

 まぁ、企業秘密というか、この世界で信頼できる奴ら以外には絶対教えられない魔法が正解なんだが。


 サイレントムーヴ。

 昨晩完成したばかりのこの魔法は、俺のあらゆる要素を隠蔽してくれるところまではわかっていたが、空中浮遊もせずに体重、というか重力の影響もどういう訳か隠蔽できてしまったのだ。

 何を言っているのか自分でもわからないが、『存在』という概念自体を隠蔽しているとでもいうのか……頭痛くなってきた。メイプルがズルすぎる(チート)と言うのも理解できる。


 さて、今回の経緯だが……。

 あの時、この作戦を思いついたメイプルの指示で、俺は彼女と共にその場で数秒だけ眠り、夢の中で彼女が再現した重量センサの上をサイレントムーヴを使って歩いてみて、何の反応もなかったことを確かめていたのだ。


 その後、すぐに目を覚ましてエルナたちに概要を伝え、俺だけ完全隠蔽状態となり、メイプルたちは魔力がもう残っていないと錯覚させるためにあえて隠蔽魔法を解いてダンジョンマスターの前に姿を現した。

 それから、メイプルが魔法で相手の思考をある程度読み取って俺へと飛ばすことで隙を見計らい、交渉決裂による戦闘開始の合図と共に装甲を駆けあがって宝玉を破壊した、という訳だ。



 しかし……自分で言うのもなんだが、まさか巨大なダンジョンマスターを異世界に来て三日目のど素人な自分が行動不能にできるとは思わなかった。

 現実味や生き残った喜びもあるのだが、感情が追いつかないというか。某ハンターたちよろしく、両手を挙げて叫んだ方がいいのか。そんな気分にはなれねぇな。それに……


「信じられん……」

「……一撃でダンジョンマスターを倒すなんて」

「まだ倒した訳じゃないわ。動けなくしただけよ」


 驚いているセイジュさんとエルナに突っ込んだメイプルの言う通り、ダンジョンマスターを討伐した(倒した)わけじゃない。

 現に、向こうさんは体は動かないものの、随分元気に文句を叫んでいる。


『こんな、こんなことがあっていいの……? いやよくないわ!! 不意打ちなんて!!』

「不意打ちで落とし穴開いた奴に言われたくないわね」

「それな」

「確かに」

「そもそもダンジョントラップ自体が不意打ちではないか?」

『ぐふぅっ!!』


 メイプルのド正論(ブーメラン)と俺たちの追撃に呻くダンジョンマスター。でも体は静止したままだ。すっごいシュール。


「しかし、宝玉を破壊したのにまだ生きているとは……ゴーレムではないということか」

「ゴーレムの技術を用いた鎧ってところね。魔気甲冑(エンチャントアーマー)の技術も入っているのかしら。動力源がゴーレムと同じ宝玉で、弱点をさらけ出しているのが残念な部分ではあるけれど」

『残念言うな!! 高いところにあるから早々攻撃されないし、デザイン的にもカッコいいじゃない!! それに、もしも暴走した時とか、すぐ停止させるのに必要な措置なんだから!』


 結構切実な問題だった。暴走した場合は魔法で狙撃するんだろうな。


「とりあえず、この鎧を壊しましょうか。話はそれからよ」

『なっ、やめて!! 私の傑作鎧を傷つけないで!!』

「いや、アンタそのままじゃずっと動けないでしょ……」

『自分で脱げるわよ! それに、この子は特別仕様だからコアを一つ破壊されたからって非常用動力が……あれ? 動かない?』


 マスターが再びあわあわ慌てた声になる。そして、しばらく見守っていると、


『……あのぅ、ちょっと外すの手伝ってくれない?』


 諦観の涙声が、俺たちに救助を求めてきた。

 あれ、おかしいな……こいつ、俺たちと敵対していたダンジョンマスターのはずなんだけどな。


「それ、俺たちに頼むか、普通?」

「っていうか、私たちを殺そうと……は思ってなかったみたいだけれど、実験に付き合えとか言ってたわよね?」

『それはそうだけどぉ!! このままじゃご飯も食べられないしお花も摘みにいけないのよ!!』

「心配するのそこかい」


 こいつ、もし鎧を外せたとして、その後に討伐されるかもしれないという思考はないのだろうか。ないんだろうな。なんか会話の端々を聞いているだけでも、アホの子っていう感じだし。

 この何とも言えない空気に、討伐する気満々だったエルナとセイジュさんも困惑気味に顔を見合わせ、俺たちの成り行きを見守っている始末だ。


「緊急脱出装置とか作ってないの? もしくは、外部から外すための装置とか、上半身の鎧を射出するためのスイッチとか」

『え? 何それ?』


 初めて聞いたとばかりの声音に、俺とメイプルは顔を見合わせる。


「壊さずに外せるか、これ?」

「さぁ……セイジュ、外せそうかしら?」


 セイジュさんへ目を向けると、彼女はマスターの鎧をしげしげと観察して頷いた。


「あぁ、フルプレート形式の鎧を単純に巨大化させただけのようだし、身体強化を使えば外せる。ただ、一つ確認したい」


 ジロリ、と見上げるセイジュさんに、ダンジョンマスターが僅かながらに狼狽する気配があった。


『な、何?』

「鎧を外した後、ダンジョンマスターであるお前を討伐しなくてはならないのだが……その点どうする気だ?」


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