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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者
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8-2 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 お前かァァァァァ!?!

 不思議な灯りが無数に輝き、夜空を彷彿とさせる半球状の天井の真下には、大都市の中央広場よりも広大な空間が広がっており、中央には巨人が佇んでいた。

 鋼鉄で覆われ、武骨で力強い印象を受ける身体を持ち、胸には淡く輝く球体が埋め込まれている外見は、全身鎧(フルプレートアーマー)の騎士そのものだった。

 ゴーレムなのか、それとも巨人が鎧を着ているのか。どちらにせよ、その存在感は他の追随を許さない。


 タガネル・ダンジョン二十八階層。

 巨大なダンジョンマスターが待ち受ける、決戦のフィールドである。


「はい、とまぁこんな感じでゴーレムっぽいラスボスが待ち構えてるんだけれど、どう?」

「いや、どうって聞かれても……」

「真正面から突撃するのは問題ね……」

「いやいやいやいやいやいやいや、待て待てお前たち」


 悩む俺たちに、セイジュさんが声音だけは静かに待ったをかけてきた。


「今のは何だ? 頭の中、というか、視界に馬鹿でかいフィールドと騎士が浮かんできたんだが。それと、メイプル君の声も聞こえてきたのは幻聴か?」

「やぁねぇセイジュ。しっかりしてよ」

「そ、そうだな……すまない、私としたことが幻覚と幻聴に惑わされるなど……」

「私が魔法で見せたに決まってるじゃないの」

「お前かァァァァァ!?!」


 セイジュさん、魂の叫び。

 俺とエルナが忘れちまった何かを、この人は持っている。素晴らしい。でも、きっとすぐにこの人も非常識を常識にする(こっち)側に来るんだろうなぁ。慣れって怖い。


「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ……いくらサキュバスとはいえ、自分の見ている景色を他人に共有させるなど……いや、魔物だからありえるのか? そんな奴聞いたことないが……」

「ふっふっふっ、確かにサキュバスは幻覚幻聴魔法も大大大大得意だけれど、覚醒時に他人、それも複数人同時に視覚共有しながら解説を加えられるのはサキュバスを含めた全魔物の中で恐らく私だけよ!」

「……。……おいエルナ、ここから出たらメイプル君を軍部にスカウトしていいか?」

「ダメです。それよりも目の前のダンジョンマスターを攻略しないと外には出られません」

「それもそうだな」


 落ち着きを取り戻したセイジュさんが、今は閉じられている滑り台の出口へ目を向ける。その先には、今しがたメイプルが“視せた”光景が広がっているのだ。


「……フロアの広さと天井までの高さから想定すると、巨人は全長五十メートルほどか。鎧は恐らくミスリル銀かそれを含んだ合金かもしれん」

「へぇ、見ただけでそこまでわかるのね? セイジュの予想はほぼ合っているわよ。装甲部分()はミスリル合金で、全長五十七メートル、体重は六万トンってところかしらね」

「体重までわかるんかい」


 というか、その身長と体重の数値、どこかで聞いたことがあるような気がするんだが……。嫌な予感しかしない。


「メイプル君、やはりこの戦いが終わったら軍部へ来ないか? もしくは冒険者ギルドの諜報メンバーに入ってくれると助かるんだが」

「どちらも謹んで辞退させてもらうわ。それより晴樹、どう?」

「あぁ、床一面に並べられてる」


 予想通りと言うべきか、ボス部屋の床にも重量センサが取り付けられていた。

 巨大故に見落としがちな侵入者全ての動きを全て察知するためなんだろうなぁ。いくらダンジョンマスターでも、宝玉破壊されたら終わりだから……。


 ボスの用意周到さに呆れ半分驚き半分の塩梅でどうするか考えていると、セイジュさんがじぃっとこっちを見ていることに気が付いた。


「君も、メイプル君と同じく見えているのか? この落とし穴にかかった時も、何かが見えているようだったし……」


 一瞬答えていいものか迷い、メイプルに軽く目配せをすると小さく頷き返してきた。そういえばこいつ、セイジュさんに出会った時からいろいろ話したり見せたりしていたし、エルナ同様にこちら側へ引き入れるつもりなんだろうか。


「えぇ、まぁ……」

「……やはり、そうなのか?」

「え?」

「いや、なんでもない」


 だから、なんで皆揃いも揃って意味深な事だけつぶやいて何も教えてくれないんだよ?!

 この戦いが終わったら絶対に聞きだしてやる……。


「それで、どうする? ここまで来てお茶会ということはあるまい」

「残念なことに、そうなるわね」

「ですよねー」


 やっぱり戦闘になるのか。

 まぁ、ダンジョンに来たからにはそう言うこともあり得ると覚悟はしていたつもりだったが、実際に戦うとなると不安だ。


「グレートドラゴン戦と巨人(ティタン)戦の方法を組み合わせるか?」

「ですが、今の戦力でグレートドラゴンよりも強固な防御を突破して足払いはできませんよ。それと、私はグレートドラゴンと戦ったことはありません」

「あーそうだったな。では、メイプル君たちに囮をしてもらいながら、私とお前で足を集中攻撃していくというのは……いや、逆に私たちが囮役で、姿を消したメイプル君に空中から弱点を破壊してもらうというのはどうだろうか?」

「別にいいけれど、できればアイツが私たちをここに呼んだ理由を聞きたいから、ちょっと違う方法を取りたいわねぇ」

「今更何を悠長な事を言っているんだ君はっ?」

「少し気がかりなことがあってね。それより晴樹」

「ん?」


 黙って成り行きを見守っていたが、突然声を掛けられた。俺も何かしら意見を求められるのかと身構えていると、メイプルがそっと俺の顔を覗きこんできて、


「少しだけ一緒に寝てくれるかしら?」

「「「……………は?」」」


 俺とエルナ、セイジュさんの間の抜けた声に、メイプルは妖艶にほほ笑んで見せた。


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