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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者
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6-4 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 快眠魔法のはず……

今回はメイプル視点です。

 晴樹の夢から出た後、うなされる声に目が覚めた。

 窓から差し込んでくる月明かりだけが頼りの暗い部屋でも、私にはどこに何があるのかがはっきりと見えている。


 サキュバスという魔物に転生した私が、この八年間で最も世話になっている身体能力。


 さて、顔を動かして声の主の方を見る。

 ベッドの上で仰向けになって眠っているエルナだ。

 私は床の上で寝袋にくるまって眠っているため、表情まで見ることはできないけれど、酷い夢を見ているということは想像できた。

 うぅっ、ありえないと寝言まで聞こえてきた。

 おかしいわね、魔法で快眠できるようにしたのに。このままうなされていると眠りにくいし、明日の行動に影響が出ても嫌だから、何とかしましょうか。


 駆け出しと自称しているけれど、すでに初心者を抜け出している実力の彼女なら、自分に近づいてきた魔物の気配を探るのはたやすいはず。なら、寝袋に入ったまま原因を取り除くに限る。


「ぅ、ハルキ……」


 かけようとしていた魔法を止めた。

 晴樹。

 私と同じ日本人の青年で、何かしらの召喚魔法で唐突にこの世界へ招かれた、私たちの旅の(あお)一点だ。

 どうやら、彼女の夢にはあの子が出ているみたいだけれど、何をうなされることがあるのかしら。思い至る点は、いっぱいあるけれど。


「……どんな夢を見ているのかしら?」


 人は夢を一瞬のうちに見ているというけれど、寝言やうなされている声は何秒も続いている。詳しいことは私も知らない。

 サキュバスは夢に関する魔法を十八番にしているため、夢を覗き見することなど朝飯前だ。今は夜食前かしらね?

 頭の中で冗談を交えながらエルナの夢を覗き見てみる。

 すると――……、


『いやぁぁぁっ、ハルキ、それはだめぇぇぇぇぇ!!』

『ふははははははッ!! 泣け、叫べ、そしてイけェッ!!』


 即座に魔法を解除した。

 眉間を揉んで、頭を軽く振ってからもう一度魔法を展開する。


『今度はこれだっ! 食らえっ、グングニールの槍ぃっ!!』

『だめぇっ、これ以上されたらダメになるぅぅぅっ!!』


 魔法を解除しようとするのを何とか堪えながら、状況を把握する。

 どこかのお屋敷の一室でエルナと晴樹が相対しているのだけれど、何故か二人の前にはフルボッコにされてごろんと横に倒れている金髪の偉丈夫の姿が。


 エルナの夢の中の晴樹は、実際の本人が知らないいくつかの魔法を行使し、何故か神の槍を装備していて、服は魔王のような黒衣を羽織っているけれど、その下は現代服という突っ込みどころ満載の存在と化していた。顔は愉悦に歪んでいる。どこからどう見ても魔王だった。


『これか? これがいいんだな? こうやって突っつかれるのがいいんだろう? ならばもっと深く突いてやるよぉっ!!』

『やめてぇっ、そんなに深く突いたら壊れちゃうぅ!!』


 偉丈夫の足が、ね。

 台詞は思わせぶりだけれど、やっていることは言葉の通りで、槍の石突で三里の辺りをぐりぐり押して、否、圧している姿はなんというかシュールだった。


 偉丈夫は『や、やめろぉ』とか『こんなことをして、ただで、ぐおぉぉ……』とか息も絶え絶えになっていた。シブい方のイケメンなのに、その顔は苦悶と快楽をない交ぜにしたようなものになっている。誰が得をするのかわからない表情だった。


 おかしいわね、私がかけたのは快眠魔法のはず……。腕、落ちたのかしら?


『気持ちいいんだろ? そうなんだろっ?!』

『お願いハルキ、これ以上はっ!』

『へぇ? そんな事言って、随分と気持ちよさそうだけどなぁ?』

『そ、そんなこと……』

『口ではなんとでもいえるが、体は正直なようだぜ?』

『アゥフ……ッ』


 変な声をもらしたのは偉丈夫だ。痛気持ちいぃのね……。


『さぁ、フィニッシュと行こうか』

『ま、まさか』


 エルナが顔を青くし、晴樹は愉悦と享楽に顔を歪ませる。完全に悪役顔じゃないのよ。

 槍の動かし方が激しくなるのに合わせて、エルナと偉丈夫の苦悶と悲鳴(?)もヒートアップしていく。


『うぉぉっ、行くぞぉぉぉぉっ!!』

『あ、あぁぁあああああああっっ?!!!』

『いやぁぁぁぁぁぁっお父様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?』


 三者三様の声が室内、もとい夢中に響き渡る。

 肩で息をする偉丈夫もといオッサンを見下ろす晴樹とエルナはそれぞれ対照的な表情をしている。

 悦楽に満ち溢れた笑みと、目に涙を浮かべて悔しがっているものだ。首から上だけを見たら、色々と誤解と妄想ができてしまいそうだわ……。


『笑えよ。エルナ、笑えよ……』


 まるでどこぞの悪鬼警官のような表情でエルナに語りかける様は、まさに悪魔か魔王だった。


『ひどい、ひどいわ……私、ただ、貴方に……』

『許してくれなんて言わないさ。俺はただ、欲しかったんだ』


 そう言ってエルナの頬に、今度は優しく触れる。


『この領地をなぁ!!』


 表情と台詞が、悪鬼羅刹のままだった。まさに外道ね……。

 

『そして俺はこの国、大陸、果ては世界を掌握するッ!!』

『そんなことをして、どうしようというの……?』

『決まっている。世界を征服して、美女や美少女をはべらせるんだよぉっ!!』

『そんな下らないことをするために、こんな、酷い……』


 悔し涙を流すエルナ。その足元で、オッサンはとても気持ちよさそうに気を失っていた。ヤム○ャしがやって……。


『だが、その最初の女はもう決まっているんだ』

『え?』


 衣を翻して抱き寄せられ、エルナが驚きに目を丸くする。頬は先ほどと違う意味で高揚しているのか、ほんのりと赤くなっている。

 え、マジで? まさか、晴樹、じゃなくてエルナ、もしかして?!


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