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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者
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6-1 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 邯鄲の夢

 草木も眠る丑三つ時。

 俺は約束通り、メイプルと共に夢の世界に立っていたわけだが、


「あの、二人とも……ここはどこなのかな?」


 いつもの装備に身を固めたエルナが無表情で尋ねてくるが、口の端っこが引きつっているし、こめかみの辺りの血管が浮き出ている……ことはないが、そんなイメージが浮かんできた気がする。


「どこって、どう見ても『いつもの岩山』じゃない」

「いつもっていつの?! こんな場所知らないわよ?!」

「よく集団戦が行われたり、中ボスやラスボスとの対決があったり、敵が巨大化したり、ヒーローたちが時に手を組んだりと、色々な修羅場と奇跡が起こる場所よ」

「だからどこなの?!」


 俺とメイプルの共通のイメージから生まれた幻想空間、でいいと思うが。

 それより、何でエルナがここにいるのか。答えは分かりきっているが、犯人から自白してもらうか。


「てへっ♪」


 そんな可愛らしさ全開のあざとい表情と仕草をしてもダメだからな?


「まぁいいじゃない。起きるときには精神的疲労も回復するようにしているし、夜明けの行動には全く悪影響が及ばないようにするわよ」

「そうじゃなくて、私は遠慮するって言ったのにどうして連れてこられているのか、理由を聞いているんだけれど」

「わかったわよ。そうね、自分で言うのもなんだけど、私はこの世界のいわゆる人間社会の常識には疎いところがあるし、晴樹に至っては全く知らないと来てるから、アンタにはオブザーバーになってほしいのよ」

「えぇっ……」


 エルナがげんなりとしているが、俺も少し気の毒になっている。

 確かに彼女からの意見は貴重なのだが、何もそれは今でなくてもよかったのではないか。

 旅立ち前の夜くらい、ゆっくりと寝たいだろうに。


「晴樹君や、邯鄲(かんたん)の夢って知ってる? サキュバスは夢に関する魔法って超得意なのよねぇ」

「お前は鬼か」

「サキュバスよ」

「……ねぇ、カンタンの夢って何?」


 邯鄲の夢。滅茶苦茶端折って説明してしまうと、ある若者がラノベのような怒涛の人生を謳歌するのだが、全ては睡眠前に仕掛けておいた粥さえ炊けていないごく僅かな時間に見ていた夢だった、という話だ。


「つまり、私が使う魔法によって、僅かな睡眠時間でたくさん修業ができるのよ! あ、感覚的にはちょっと長い夢を見てるなぁってくらいだから。夢オチなのに夢と同じ動きが起きてからできるわよ!」

「お前は悪魔か」

夢魔(サキュバス)よ」

「えぇと、つまり、ここで長時間過ごしても現実には一切悪影響を及ぼされないし、この後ゆっくり休めるということでいい?」

「そうよっ!」


 額に手を当てながらため息をつくエルナの質問に、メイプルは意気揚々と答えた。

 全く悪びれてないが、エルナはやれやれと首を振るだけでそれ以上怒ることはなかった。もう慣れたって奴だろうな。

 わかるぞ、その気持ち。


「……それで、ハルキの魔法を見るんだよね?」

「えぇ。晴樹、早速だけれど見せてもらえるかしら」

「あぁ」


 岩山近くに巻き藁を二つ設置すると、エルナの感嘆の声が聞こえた。


「幻影魔法……?」

「ただのイメージよ」


 メイプルが解説すると、エルナは納得したようだった。


「夢の世界っていうのは本当らしいわね」

「ようこそ、夢の世界へ」


 さて、こちらは準備は整った。

 後は二人に見てもらって、感想を言ってもらうだけなんだが……。


「なぁエルナ。身体強化を使っておいてくれないか?」

「どうして?」

「冒険者の強化された動体視力でどう感じ取ったのかを教えて欲しいんだ」

「えぇ、わかったわ」


 説明したらあっさりと了承してくれた。

 メイプルの方も準備万端らしく、いつでも来いとばかりに腕を組んで仁王立ちしている。


「じゃあ、始めるか」


 思い浮かべるのはエルナが見せてくれた身体強化と、メイプルが最初に見せてくれた魔法……それが組み合わさるとどういった結果になるのか、見てもらおう。

 魔法を発動させた直後、エルナが再び驚きの声をあげた。


「消えた?」

「いいえ、恐らくあそこにいるわ。多分今、動こうとしているところ」


 微動だにしないメイプルだが、目つきが険しくなっている。

 俺の予想以上の結果を生んでいるらしい。

 この反応なら、これから起こる事を見ればもっと驚くだろう。

 巻き藁に狙いを定め、俺は右指に圧縮したファイアを装填するイメージを浮かべ、一気に解き放った。

 その瞬間、巻き藁が消し炭となり、メイプルとエルナがビクッと肩を震わせた。


「何、今の?」

「今、何が起きたの?」


 困惑する二人を他所に、今度は思いっきり駆け出してみる。一瞬でもう一つの巻き藁へと近づき、勢いをそのままにボディーブローを叩き込む。すると、しっかりと地面に打ち込んだ状態の巻き藁が派手に吹き飛び、岩山にぶつかって粉砕された。

 目を丸くした二人から少し離れた場所で魔法を解きながら声をかける。


「どうだった?」

「何してんのよアンタはぁぁぁぁぁぁっ?!!」


 何故かメイプルから罵声を受けた。

 あれ?

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