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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者
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1-3 エロ漫画野郎とサキュバス幼女と冒険者 転生者ですもの

「親方、肩に女の子が!」

「四十秒で説明しな!!」


 思わず発した俺のボケに即座のレスポンス。


「チャオ、み○で~すっ」

「やあ、ふ○どだよ~って誰がやねん」


 向こうのフリに今度は俺が突っ込んだ。自分でも驚くほど息がぴったりだった。怖い。

 先ほどまでそこにはいなかったはずの存在が、空中に半ば浮かぶようにして俺の左肩にしがみついていた。

 薄桃色の長い髪の毛と、蠱惑的な赤い瞳が印象的な幼女。パッと見たところ小学校中学年頃か。しかし、着ている服は少しアレ。というか、ついさっきまでのトラウマがががががが。


「サキュバス!!」


 女の子が剣を抜こうとすると、サキュバス幼女は俺の背後に慌てて隠れ、こっそと顔を覗かせた。


「ちょ、安心して! 私はサキュバスだけど、人間だから!」

「はぁ?」


 猜疑の視線が自称人種サキュバス幼女へと向けられる。


「確かにサキュバスとかインキュバスと、人のハーフはいるけれど、あからさまな格好をして空中に浮かんでるハーフはいないわよ!」

「い(↗)る(↘)わよ! サタニアちゃんが言ってたもの! 彼女の従姉、人とのハーフで冒険者だって! でもガードが固いって有名だって!」

「知るか! っていうかそれアイツか!」


 どうやら共通の知り合いがいるようだ。世界って狭い。そして、ガードが固いのにあからさまな格好をしてるとはこれ如何に。


「ともかく、私はアナタ達には攻撃しないし、この子を魅了したりしないから! ほら、そのつもりだったらとっくの昔にやってるし」


 そう言って、サキュバス幼女の姿がパッと消え、すぐに現れる。

 どうやら、洞窟内部で姿を消して俺の肩にくっついてきたようだ。慌てていたせいだろうな、触れられたことにすら気づかなかった。恐ろしい隠密性だ。さっき洞窟内であのサキュバスたちにやられてたら……。

 サキュバス幼女の様子を注意深く睨んでいた冒険者の少女は、抜きかけていた剣をしっかりと鞘に納めて、手を柄から少し離した。いつでも抜剣できる状態みたいだけれど。


「貴女の目的は何?」

「私は外の世界に出たかった。そして、色々と旅をして回りたいのよ」

「それで男の精気を抜き取っていくと?」

「しないわよ! 好きでもない男と肌を重ねるなんて嫌だし、精気を抜き取るなんて冗談じゃないわよ本当!」


 ぷんすか怒ったり、頬を膨らませたり、つーんとしたり、色々と忙しい子だ。表情豊かで、嫌いではないが。

 俺がサキュバス幼女の微笑ましい場面を観察している間にも、冒険者の女の子は訝しげに問いかけを続けていた。


「サキュバスなのに?」

「サキュバスでもよ! そもそもそれって先入観よ。愛知県民だからって味噌煮込み毎日食べてるわけじゃないし、徳島県民だからって全員が阿波踊りできるわけじゃないし、大阪府民だからって全員がお笑いできるわけじゃないし、オタクだからって全員が漫画アニメ一辺倒だと思うなよ私はそうだったけどッ!!」

「ごめんなさい、貴女の言っている事の一割も理解できないわ」


 ごめんなさい、俺も言いたいことは何となくわかるけど、早口で勢いがいいものだから若干引いた。後、耳元で怒鳴られて超うるさい。

 まくしたてて息を荒くしたサキュバス幼女が落ち着くのを見計らって、少しためらいがちに冒険者の女の子が声をかける。


「じゃあ、貴女が旅をする目的は何なの? それを教えてくれないと、貴女をここで討伐しないといけない」

「はぁ、はぁ……そうね。旅をして、色々見て回りたいの。それから、生まれた場所に帰る方法を探すことかしら」

「生まれた場所って、あの洞窟じゃないの?」

「違うわ。私が生まれたのは、ここからずっとずっと遠い場所」


 そう言って、彼女は俺に顔を向ける。幼い子どもに不釣り合いな諦観の表情の中に、僅かな希望と、そして嬉しさが滲みでていた。


「多分、ていうかほぼ確実にこの子と同じ国ね」


 あぁ、そうなんだろうな。

 俺を見るサキュバス幼女の視線に、頷き返した。


「こいつはきっと、サキュバスであってサキュバスじゃないってところかな。体はそうでも、根っこのとこ」


 自分の左胸に手を添える。もしくは脳かもしれないけれど、こっちの方がわかりやすそうだ。


「どういうこと……?」

「そうだな、その前にまず自己紹介させてくれ。話はそれからだ」


 そう言って落ち着いたところで、ようやく自己紹介をすることになった。


「俺の名前は晴樹。こことは別の世界出身で、日本って国から、知らん間にこの世界へ呼び出されたっぽい」

「ニホン? いや、そもそも別世界って、魔界?」


 あんのかよ魔界。


「違うよ。まぁ魔界よりはずっといいところ、だと思う、多分」

「確実にいいわよ」


 サキュバス幼女のお墨付きだった。こいつ、魔界行ったことあるのか。


「だってアニメと漫画とゲームがあるじゃない!」

「そっちかよ!!」


 ともかく、質疑応答は後回しにして、次は冒険者の女の子の番だ。サキュバス幼女がそう指名したのだが、渋々ながらも従ってくれた。


「私はエルナ。ただのエルナよ。職業は冒険者……駆け出しだけどね」


 駆け出し? あれだけやれて駆け出しなのか。

 驚く俺を見て、エルナは苦笑を漏らす。


「そんな顔しないでよ」

「え、いや、俺が驚いたのは、アンタあれだけできたのに、駆け出しって……」

「そうね。確かに装備は駆け出し……にしては少しいいかもしれない。手入れもよくされている。それに体の動かし方もなりたての素人とは違うみたいだし」


 またもサキュバス幼女からの肯定的な意見。

 俺たちの好意的な言葉を受けて、エルナは少し頬を赤らめてはにかんだ。


「そう……まぁ、冒険者になる前から少しばかり、ね。まさか魔物からも褒められるとは思わなかったわ」

「確かに魔物として生まれたけどハートは人間ですぅ(↗)! それに、魔物だってあんた達冒険者を褒めることだってあるわよ」

「へ?」

「そうなのか?」

「ええ。サタニアちゃんのお姉ちゃん……晴樹の後ろに瞬動した人ね。彼女が昔戦った騎士についてたまに話してくれたけれど、結構好意的だったわ。知り合いのコボルトは冒険者の女の子が遭難した時に偶然助けたら、その後守ってもらえて嬉しかったって。オークのブロード君は、冥府の門番やってるお父さんが半死半生の冒険者の魂を現世に弾き返したら、ずっと後で来たときにお礼を言われたとか。他にも色々あるけど、まぁアンタたちが思っているより、魔物はアンタたちのことを見てるわよ」


 彼女の話しに、エルナだけでなく俺も言葉を失った。同時に、何だかうれしい気持ちになった。俺、こういう話しが好きだからな。

 ところでこの世界のオーク、比較的だが原典に近い立ち位置なのかな。つまりクッコロはないと言うことか。まぁそれはそれでいいけど。リアルでクッコロいらんし。

 後、サキュバスが瞬動を使えるってアリか。それ多分剣士とか格闘家専用のスキルだろ。


「さて、それじゃあ最後は私ね」


 ここで問題のサキュバス幼女が俺たちの前にふわりと着地した。身長は俺の胸よりも下で、本当に小学生くらいだ。ただし、纏っている服と雰囲気は完全に大人だけど。いい加減、俺の作業着でも着させた方がいいかな。


「私はメイプル。ご覧の通り、サキュバスね。今年で八歳になるけど、実際の年齢は多分、晴樹より上かも」

「ハルキよりも上?」

「そう。私、転生者ですもの」


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