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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第五章 サキュバスとエロ漫画野郎と蒼海の魔王
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6-9 サキュバスと蒼海の魔王 大好き

「ハルキ……お兄ちゃん……」


 水しぶきを立てて沈んで行った姿が、脳裏でずっと繰り返される。

 どうして、そんなことをしたの?

 ねぇ、どうしていつも――――――。


「どうして、|二人《》とも、そんなことばっかりするの?」


 気が付いたら、口から心の声が漏れていた。


 涙が、さっきとは違う種類の涙があふれてくる。


 もうダメだって、思ったのに……ごめんねって、言ったのに。


 諦める口調を何とかしろって、言われた。


「自分が、諦めてるよ……」


 涙があふれて止まらない。

 浮かんでこない。

 魔力を使い果たして、気を失っただけなら浮かんでくる可能性はある。でも、命が失われていたら……もう二度と浮かんでこない。


 二度と、会えない。


「あ、あああああ…………」


 恐怖が、体をむしばむ。

 自分が死ぬことも恐ろしかったのに、よく見知った人が、大切になった人が消えることが、耐え難いほどに恐ろしいなんて。

 急いで助け出したい。

 でも、もうこの体に残っている魔力では、彼を助け出したところで、リヴァイアサンの追撃で二人とも海水ごと蒸発させられる。


 あぁ、どうして、どうしてこんな時に、大切な時に――――――!


「私なの?」

『そうだ、貴様だ』


 リヴァイアサンの声が上から聞こえてくる。

 きっと私を見下ろして、口には破壊の光をため込みながら。


『貴様が、あの男を殺したのだ』


 そうかも、しれない。

 結局、大切な人は消えて、そして、自分も殺される。

 大切なもう一人も抱えたまま。


『どんな気分だ、大切な者と引き離される気持ちは……』


 悲しい。痛い、苦しい、怖い、冷たい……死に――――、


「たくない」

『ん?』


 死ぬのは、嫌。

 あの人が嫌がっていたのに、私がそうやって逃げることは許されない。私が許したくない。


「わかったけど……わかりたくない」


 大切な人と引き離される気持ちは、痛いほどわかっている。

 これまでも、妖精や魔族の子で、死に別れした経験はある。

 だから、新しい大切な人が永遠に消えるかもしれない現状が、とても怖い。


 だけれど、この人みたいに、だからと自暴自棄になったり、誰かを傷つけたいという気持ちは、わかるけれど、わかりたくない。わかりきってしまったら、きっと顔を合わせ辛くなるから。


「諦めたくない!」


 諦めるのは、もう十分だ。散々だ。

 二人は決してあきらめなかったのに、私が諦めたら、駄目っ!


 それが、あの人に生きる楽しさを教えてもらった、私の義務だから!!!


「チェーンッ!!!」


 意識を海中へ向け、反応があった場所目がけ、チェーンを放つ。

 高速で射出された魔力の鎖が、沈みかけていた彼の体に巻き付き、伸びた時よりも少しゆっくりした速度で戻ってくる。


『無駄だ』

「無駄じゃない」

『今から消し飛ぶ。無駄なことなどせず、楽に二人して消えるがいい』

「消えない、諦めない」

『決して逃れることはできない。後、五……四……三……』

「諦めない、諦めたら……」


 そこで、試合終了だから。


「そうだよね、ユィーハお姉ちゃんっ」

『二……一……散れ』


 世界が、意識が真っ白に染め上げられていく。


 その中で、あぁ、彼の体が海水から引き上がえられて、私のすぐ傍に来た。


「ごめんね、二人とも」


 大好き。


































 あら、終わりじゃないわよ?



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