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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第三章 サキュバスとエロ漫画野郎と流浪の聖女
101/448

1-2 サキュバス一行と受付嬢 心が通じ合えた気がした

大変お待たせいたしました。

前回までのあらすじ――無事、国王の試練を余裕のよっちゃんで乗り越えたサキュバス幼女一行は、無事、国境を超えることに成功したのであった。

「冒険者ギルド・オーランド支部へようこそ! 本日はどういったご用、件で、しょう……か……?」


 十代半ばほどの受付嬢さんは、順番が回ってきた俺たちに元気いっぱいな挨拶をしてくれた。少し幼さが残っている顔立ちだが、屈強な冒険者たち相手に物怖じ一つ見せずに対応している様子から、コミュニケーション能力が高く、人と話すことが好きな子だという事がわかる。

 元気が湧いてくるような姿に、老若男女問わず笑顔を浮かべている。

 まさに看板娘、と言った感じだ。


 だが、そんなコミュ力激高な子でも、言葉がつっかえる事はあるらしい。


 例えばそう。

 マントの下がドレスアーマー姿の美女と、マントの下から紅い瞳を覗かせる踊り子風の破壊神が目の前に現れた時だ。

 うん、そう、今だよ。


「アメリア支部長と話がしたい。エル・ブロッサムのセイジュが来たと伝えてもらえるだろうか」


 セイジュさんは微笑を浮かべ、凛とした声音で伝える。出来る女の雰囲気だ。際どいドレスアーマー姿も、何故だかカッコよく見える。

 流石の受付嬢も見惚れてしまっているようだ。仕方ない。

 しかし、その少し斜め後ろ。エルナと俺の間に立つリアさんを見ると、目を丸くして、可愛らしい顔をひきつらせた。


「あ、あのぅ……」

「どうかしたか?」


 受付嬢は周りを見渡し、手で覆いを作ってセイジュさんに小声で話しかけた。


「その、つかぬ事をお伺いしますが……後ろの、赤い瞳の踊り子さんなんですが、その、もし私の見間違いでなければ旅の破壊神様に見えるのですが……」

「ふむ? おかしなことを言うな」


 セイジュさんが何を馬鹿な事を言っている、と肩を竦めると、受付嬢も「で、ですよねぇ。すみません私ったら」と乾いた笑い声を漏らした。


 うん、この展開、知ってる。

 案の定、セイジュさんはそこで終わらせずに言葉を続けた。


「君の言う通り、彼女は神ヴァーヴァリアスに決まっているではないか」


 受付嬢が絶句した。

 俺が予め用意しておいた回復弾を、メイプルがサイレント・ベールを使った直後、受付嬢は魂の絶叫を上げたのだが、それは誰にも聞こえることはなかった。慌てた様子でパントマイムをしているようにしか見えず、その様子に周囲の何人か気付いたようだが、こんな風にオーバーリアクションをとることがあるのだろう、また何かあったんだなと微笑ましく見守られているだけだった。哀れ。

 そんな受付嬢に、セイジュさんは更なる無自覚な追い打ちをかける。


「ふむ、君は目と記憶力、そして洞察力も優れているのか。新人か? なるほど、アメリア支部長もいい人材を見つけたようだな」

「あ、ああああのッ!? えええええっとぉ!?」


 どうやら、回復弾を以てしても心のダメージはデカかったようだ。もし回復弾がなかったら、気絶していたかもしれん勢いだ。もう一発撃ったら、ようやく落ち着いてくれた。


「その、じょ、冗談です、よねぇ?」

「いや、本当だが?」

「セイジュ、その辺にしておけ」


 リアさんが見かねて助け船を出した。


「騒がせてすまぬな。こやつも悪気はなかったのだ。許してやってほしい」

「い、いえ……」


 受付嬢はリアさんの話しを聞いて、セイジュさんの言葉は全て冗談だと受け取ったらしく、胸を撫で下ろしたが……。


「うむ、とりあえずこれでよいか?」


 そう言って、リアさんは発行されたばかりの証明板を出した。ダメ押しの一撃だった。


「……ぇ」


 証明書を見た受付嬢は、一声を漏らして硬直し、そのまま動かなくなった。


「あの子、意識が途切れてるわ」

「何ぃっ?!」


 メイプルに言われてみると……おぉ南無三。

 なんと、彼女は、目を開けて立ったまま気絶していた。

 漫画でしかお目にかかれないリアクションを間近で見てしまったが、全然笑えない。


 しかし、彼女は数秒後には何事もなく復活し、震える手でリアさんに証明板を返し、「しばらくお待ちください」と言ってカウンターから離れた。強い子だ、と素直に思った。


「これで、この先どんな相手がこようとも、動じることなく仕事ができるだろう」


 リアさんが振り返り、俺とメイプル、エルナにそう言って笑った。

 どうやら、突発的な“神の試練”を与えたらしい。

 何故そんなことを……と思うが、リアさんなりの理由があるのだろう。気まぐれで誰かの心を抉ったり、冗談交じりにいじめたりするような人でないことは、短い付き合いだがわかっている。

 だから、俺は何も言わない。言わないが、受付嬢さんには同情してしまった。俺にも覚えがある。


 ドンマイ受付嬢さん、強く生きてくれ。きっとアンタ、これから冒険者ギルドになくてはならない人になれるよ。


「ハルキ、アナタもそうなるのよ」

「ははは、エルナ、お前もだぞー」


 軽口をたたき合った俺とエルナは、戻ってきた受付嬢さんを笑顔で出迎えた。

 それで何かを悟ったのか、受付嬢は恐る恐る小声で、


「もしかして、貴方がたも神から試練を……?」


 はっきりとは明言せずに、俺たちは困ったように笑ってみせた。


「この事はご内密にお願いします」

「は、はい! かしこまりましたっ!」


 この時、出会って間もない彼女と、心が通じ合えた気がした。

お読みいただき、ありがとうございます。


グランベルムもアストラもBEMもロードも最後まで面白かったです。

あと、今期始まったアニメが面白いの多いのと、某アニメで鋼屋さんと藤林さんとMay'nさんの最強コンボを知った瞬間に戦慄(歓喜)した件。

ところで、満腹……黒……まr……どこかに包丁を手にした食いしん坊のご親戚でもいらっしゃるのだろうか……。


あぁもうっ! 面白いのが多すぎて、作りたいって気持ちが熱くなるんじゃぁぁぁ!(ケモナー式ドロップキック

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