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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 作者:胡桃リリス

第一章 サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者

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1-1 エロ漫画野郎とサキュバスの群れ バックアックだ!

新作です。よろしくお願いいたします。
 エロ漫画を買いたかった。
 ただそれだけだ。

「よしっ、今日こそは買うぞ」

 心の中で強く買うイメージを思い描き、行きつけの同人ショップへと赴く。
 入口には色々なポスターが貼られており、チェックしている作品もいくつかある。その前で高校生らしき男女のグループがあれやこれやと楽しそうに話しているのを見て、自分も学生時代には先輩たちとあんな風にしていたなぁと懐かしく思ってしまう。少なくとも、俺たちは男ばっかりのグループだったが。
 さて、入ってすぐに十八禁のコーナーが見える。スタートラインはそこからだ。まだ気恥ずかしさというか、気まずさがあるなと苦笑しながらゾーンを超える。
 あぁ、飛び込んでくる肌色の数々。遠くからはエロゲーかエロアニメの音声が聞こえてくる。目の前には詰まれた単行本の数々。だが、俺はそこに目もくれない。単行本は妹が持っている。貸してほしい時に貸してくれる。ただし、その時にお菓子一つと交換せねばならないが。

「いつから女子がエロ本を読まないと思っていた?」

 妹よ、それは格言でもなんでもないから。顔をキリッとさせるようなことじゃないからね?
 一瞬、思考があらぬ方向へと飛んでいたが、その間にも単行本コーナーを通り抜けていく。会社帰りの人もそこそこいるので、お互い気を配りながら、譲り合いの精神で狭い通路を進む。
 目指すは、同人誌コーナー。
 おぉ、興味があったり、プレイしたりしたゲームやアニメの二次創作エロ本がこんなに。懐かしのあの作品のキャラクターも見られ、新しい発見に少しだけ懐かしくも嬉しくなる。
 コマーシャルや本の特集で知っている作品でも、キャラクターまでは知らない物が多い。たまにこうやって同人誌でキャラクターを知って、そこから本家にたどり着いてハマってしまうことも少なくない。
 某お菓子漫画の同人が出た時は、こんなアニメやってたかしらと首を傾げたが、その時はまだアニメ化していなかった。単行本を買って笑うやら懐かしいやらで、良い出会いだったと思っている。ただ、その同人誌は結局買うことができなかったが……。
 妹が教えてくれたことから始めた某シューティングゲームや戦艦擬人化ゲーム、朝の魔法少女ものも、新キャラやシリーズが続々と出てきてその度に薄い本(一般と十八禁)が賑わっていく。最近だと、魔法使いをモチーフにした作品はかなりよかったと、声優さん好きでもある妹が大興奮していた。でも俺、仕事の関係で観られたのは最初あたりと最後だけなんだ。今度録画した奴を見せてもらうとしよう。追加メンバーが仲間になった経緯を見たいし。
 閑話休題。
 そんな、楽しくも混沌とした、少しだけ買うのを躊躇う気恥ずかしさを抱え、いざ、確認をば!!
 そして今日こそ、今日こそは、最高のエロ漫画をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおっ!!

 で、

「はい、またのお越しをお待ちしております~」

 随分と人懐っこさを感じさせる店員さんの接客スマイルに見送られ、俺は物を手に店を出る。レジ袋はいらないと言ってある。カバーもつけていない。だが、俺が持っているものを見て、誰も咎めない。
 何故なら、それは、

「うん、またなんだ……」

 最近知った絵師さんが担当している新作、そして以前から追っているシリーズの最新作。それはライトノベル。
 エロ要素は多分ないに等しい、心のエンターテイメント。
 けれど、俺は今日、ラノベを買うつもりは全くなかった。いや、いつかは買うつもりだったけれど。作者や出版社に大変失礼極まりない。でも応援してるよ!
 ……ふぅ、落ち着いた。
 リュックに本を大切にしまって、歩き出す。
 いつもそうだ。
 エロ漫画が買いたいのに、読みたいのに、欲しいのに、どうしてか買うことができない。下手をすればコーナーの入り口でブレーキがかかるときだってある。
 そして、今みたいにコーナーに入り、あれこれ手に取って、悩んで悩んで悩みぬいて、これだッッ!! と思ったものでも、その瞬間、何故か買うのはいいかなってなってしまう。または気恥ずかしさか。両方か。
 ともかく、また買えなかったのだ。いつもの事だとは言え、もう一年半近くエロ本の類を買っていない。いい話だ。経済的だ(家計簿に優しい意味で)。だが(精神的に)無意味だ。

「仕方ない。また明日来よう……」

 帰ったら飯の用意をして、家族に晩飯をふるまって、今日買ったラノベを読んで寝よう。
 きっとそれはそれで楽しい。むしろ、エロ漫画が無かった時代はそれが楽しみだったのだ。よしよし、そう考えたら落ち込んだ気分もマシになってきた。
 それに、別に買えなくったっていいのだ。家にはエロ本がある。随分読みこんで、セリフや展開も覚えてしまっているが。妹の分じゃなくて自前のだ。
 ともかく、さっさと帰るか、とそこそこ軽やかな足運びで家路に着いたときだった。

「あれ?」

 目の前の光景が一瞬だけ世界が原色の渦巻きめいた景色に変わったような、何と言うか、眩暈とは違うのだが、もしくは立ちくらみのような、わけのわからないぐちゃぐちゃな視界にヤバいかなと思った。

―今……異世……飛ば……―……準備は……いか?!―
「え……界に戻れ―か……?! 後……能……もら……―せん?!」
―わか―……ます。()……()はそ……界の魔……ルでも覚―…………でしょう? ……時間がないのでこ……う! 後どの世……も生…………で!!―
「あざぁす!!(泣」

 今何かあった気がする。
 おっと、いけない。立ち止まって腰を落とそうとしたところで、目の前の景色が再び安定したものに変わった。
 ふぅ、ちょっと寝不足気味な日々がだめだったか。今日はいつもよりも少し早く寝よう。
 そんなあやふやな意思で決意した直後。

「あ?」

 突然、目の前に、綺麗な女の人たちが現れた。
 一瞬で捉えた情報を並べていくと、すっごく美人で顔立ちは外人さん。とてもグラマラスなボディで、それを包むのは薄手のなんというか服? いやあれ下着とか水着の類だろう、多分。それでいて、両側頭部に髪飾りを付けている。羊の角みたいなの。可愛い。

「え?」
「まぁ、お姉さま、すごいわ!」
「急に召喚されたから何かと思ったけれど、これはこれは」
「若いわねぇ。ちょっと幼い気もするけれど、二次性徴は終わっているみたい」
「ふふふ、今夜は楽しいことになりそう」

 おぉ、言葉がわかる。口元としゃべっている日本語がほとんど合ってないけど。
 これは何かのドッキリだろうか。あれか、同人ショップから出てきた客を捕まえてどんな反応を試そうというのか。その企画は色々と没だろう、なんて現実逃避して心を落ち着かせる。
 こういうコントロールには慣れたものだ。十八禁コーナーに行くならば必須スキルだ。
 さて、状況を整理しよう。
 まず俺のいる場所だが、さっきまで都市部の道路ではなく、どこかの洞窟のような場所だ。ソファや箪笥、食器棚などの調度品が置いてあり、自然をそのまま利用した別荘と言わんばかりの雰囲気を醸し出している。しかも素人目で見てもかなりいい物ばかりだ。壁には明かりがいくつか設置されているが、蝋燭でもなければ電球でもない。ガス灯かとも考えたが、よくわからなかった。ただ、洞窟をカシスオレンジだかサーモンピンクだかわからない色合いで照らしている。まずいだろ、この色。
 目の前のお姉さん方に注意を向けながら少しだけ視線を動かす。どこを見てもごつごつとした壁面しか見えない。ヒヤッとした空気が背中の方から流れてきた。生理的な怖気ではなく、風の流れによるものだ。
 まずい。
 俺の直感が、告げている。もうこれが夢でないことはわかっている。目の前にお姉さんたちが見えた直後、理解できてしまった。それでも頬を叩き、改めて確認してみるが、結果は変わらず。
 そして、問題のお姉さんたちの正体が何となくわかってしまい、俺は半歩後ずさってしまう。

「あれ? 怖がらなくてもいいのに」
「普通なら狂喜乱舞して飛び込んでこないかしら?」
「うーん、まだしたことないみたいだから、照れてるんじゃないかしら?」

 確かに照れはしたけれど違うわ!!
 よし、突っ込みができるということはまだ少しでも心に余裕があるということだ。
 流石は俺、突然妹に「お兄ちゃん、サツキのお願い聞いて欲しいな」とか欲望塗れの目で見上げられながら素早く関節を極められるという拷問を日々受け続け、不測の事態に対応できる精神を身につけておいてよかった。でも結局妹の欲望=コンシューマー版ゲームの割り勘を断れないんだがな!! 俺もたまに遊んでるからいいんだけどな!!!

「あぁ、他の女のこと考えてるわよ!」
「何故わかったし?!」
「女はそういう生き物よ!」
「まぁでも、すぐにその子の事を忘れさせてあげるけれど」
「今宵は私たちに溺れなさいね? 私たちも久しぶりの、それも若い男の子なんて……じゅるり」
「お姉さんたちといい事しない?」
「だが断る」
「あら、私たちから逃げられると思う?」

 妖艶な笑みを浮かべる彼女たちの小悪魔めいた微笑。
 そうだよな。彼女たちの姿、そしてこのシチュエーションからして、その正体はあれしかない。
 男を魅了し、支配し、そして夢にて精気を吸い取っていく。
 その名はサキュバス。
 エロい魔物さん第一位(当者比())で、魔法や魔術を得意としている設定が多いかもしれない。
 魅力度はダントツで高い。主にエロい方面で。その次は個人的にラミアさんがおススメなんですがどうっしょ?!
 よし、まだ精神面は余裕がありそうだな。
 でも、目の前でサキュバスさんたちが魔法を使おうとしているみたいなんだけれどな! 手から炎みたいなのが出て揺らめいている。脅しのつもりか?!
 絶対絶命だ。
 一人でもアレだが、あんな人数……ざっと視界に捉えただけで八名。たまに奥でちらちらと動いたりする影や忍び笑いからもっといるのがわかってしまった。
 このままでは朝日を拝む前に干からびてしまう。
 冗談じゃないぞ、おい。俺は好きな人と一緒に添い遂げたいんだよ! 好きでもない会ったばかりの女(複数)に据え膳されてもガチで困るだけなんだよマジで!!

「最初は誰からイく?」
「おい、今、述語がおかしくなかったか?」
「あ、私! 私がいい!」
「こらぁ、私に譲りなさいよぅ」
「アタイが一番ノリで!」
「俺様によこせよ!」

 あ、一人俺っ娘いた! 勝気で実際気が強うそう! だけど胸の前で恥ずかしそうにこそこそ指を突き合わせてる? たまにこっち見て獰猛そうな笑みを浮かべ、一瞬だけ恥ずかしそうに目を逸らした!? おい何それ何だかわからんがすっごく可愛いなおい!
 よし、揉めてる今のうちに逃げるか。でもおい全員視線が俺に向いたままで今にもとびかかってきそうだおいおいいいいいい?! 一人抜け駆けしたら皆来ちゃったよ!
 何とか避ける。こいつら、身体能力的には日本人一般青年とあまり変わらないよう、

「それは残像よ」
「だニィッ?!」

 はいっミッスゥ~!!? と楽しそうに笑うサキュバスさん(ブロンドでお嬢様っぽい)がいつの間にか背後に立っていた。
 バックアタックだ!
お読みいただきありがとうございました!

ぎるてぃせぶん、およびコンビニチートも近いうちに新作をあげます。

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