4話 アラスター領に到着
かんそーぎぶみー
「さてとまた暇になったけど何かリアはしたいことある?」
「これと言ってはありませんね。」
今俺とリアはターボンドを出て俺が昔住んでいた領地アラスター領に向かっている。因みに俺の昔の名前がアラスター・レオナートで今はヴィアベル・レオナートに変わっている。
「じゃあ、僕は貰った武器を練習してみます。」
「そうですか。なら私は少し寝させていただきます。実は昨日の夜よく寝付けなくて。」
俺が昨日ターボンドの魔道具店で買った武器は3つある。
一つ目はハンドガンだ。このハンドガンはやはり俺と同じで転生者がこの世界に伝えたと思って間違えないだろう。ただ、トリガーを普通に引いても弾が出ない。
どうやら魔力を込めなければいけないみたいだ。
込める魔力の属性は空気だ。おかげで攻撃方法ゼロだった俺にようやく攻撃方法ができた。
そしてもう1つは刀の柄だけ。
これもハンドガン同様に魔力を込めて使う。
込める魔力はこれも同様に空気だ。魔力を込めると刀の刀身が出てくる。
そしてこの刀の凄い所は俺が意識すると刀の属性を空気から他の属性に変えることができるのだ。
俺が空気属性を刀に送りながら火をイメージすると刀の刀身が真っ赤になる。
もう1つは魔力で火がつくライターだ。
これは某錬金術アニメでやっている酸素を一か所に集めてそこに火をつけるというのを思いついたためだ。
「レオナート様そろそろアラスター領が見えてまいります。」
「分かった。ならそろそろリア起こした方がいいかな?」
「そうしていただけると助かります。」
なんで家来がリアを起こしたがらないのかというとリアは寝起きが兎に角悪い。決して機嫌が悪いというわけではなく全然起きてくれないのだ。
「リア起きてください。もう着きますよ。」
「んー。眠いから無理・・・。」
また寝息をかきながら寝てしまった。
「起きないともうプリン作ってあげませんよ?」
「はい。起きました。」
リアが背筋をピシッと伸ばして目を大きく見開いて俺の方を見つめてくる。やっぱりプリンは偉大だ。これは近いうちにゼラチンを作らなくては。
アラスター領は林業でなりたっているといってもおかしくない。その土地にある木の量は莫大であり、未だにその森の奥まで行けた者はおらず、その先には何があるのか分かっていない。
俺がここに来た理由は父親の葬儀だが、その父親とは殆ど話したことがない。
今の時刻は午後6時でこれから兄弟たちに挨拶に行き、明日葬儀が執り行われることになる。
「お久しぶりですね。ケール兄さん。イザージ兄さん。」
「ああ。久しぶりだな。」
「ヘヘッ、。」
今俺はアラスター家の屋敷にいる。そして目の前に立っている二人が俺の兄弟だ。
長男が厳しそうな顔をしたケール。次男がバカっぽい顔をしたイザージ。
「初めまして。レオナート様の妻となりましたヴィアベル・リアです。今後ともよろしくお願いいたします。」
「こちらこそ初めまして。アラスター・ケールです。こっちが弟のイザージです。」
「イザージです。よろしくお願いいたします。」
バシッ!
イザージがリアの手にキスをしようとしたので俺が手を弾く。
そもそも手の甲にキスをするという行為は決して男からするものではない。女性が右手を差し出したときに男性がキスをするものだ。それをイザージが自分からした。それはつまりあなたのことを愛しています、という意味がこもった暗喩だ。
「すみません。イザージ兄さん。蚊がいたもので。」
「チッ!そうかよ。」
イザージは美人を見るとすぐにベッドに連れ込もうとするクズだ。事実あいつが平民の女を連れて行くのを見たことがあるし、その件で領民に嫌われている。ケールの方はこれといって嫌われてもいなければ好かれてもいない。
「いやーレオナートは幸せ者ですね。こんなに可愛い奥さんを貰えるだなんて、俺が貰いたいぐらいですよ。」
こんなことをケールが言っているが勿論お世辞である。ケールはまだ結婚はしていないが既に婚約相手が3人決まっている。一人は王族、他には公爵家と繋がりを持ちたがった伯爵家の長女などが婚約している。
ちなみにケール兄さんは今こそこんなまともな感じだが昔はひどかった。勿論俺に対するいじめがだ。
「アラスター公爵にそう言ってもらえるとは光栄ですわ。」
「それで兄さん。明日は朝から葬儀があると思っていいんだよな?」
「それで構わない。」
「ああ、それとこれが弔慰金です。」
ケールに渡そうとしたのだがイザージが手紙を横からとった。そして革袋の中に入ってある金額を確認している。本来目の前で革袋を開けて金額を確認する行為はご法度だ。だがイザージは俺が本当にお金を持ってくると思ってもみなかったようでそれに驚き革袋を横からとったのだ。それほどに要求されたお金が高かった。
「ケッ!まさか本当に持ってくるとはな。」
「それはどういう意味ですか?イザージ兄さん。」
「いや、何でもない。」
「そうですか。それじゃあ俺とリアはもう宿に戻ってもいいですか?」
「ああ構わ「ちょっと待て。」
ケールの声を遮ったのはイザージだった。さっきから考え込むような仕草をしていたから嫌な予感がしていたのだがどうやら予感が的中したようだ。
「お前に決闘を申し込む。」
「決闘ですか?それはまたなんで。」
「リアを賭けてだ。」
「はい?もう一度言ってもらえませんか?」
「聞こえなかったのか?リアを賭けてだ。」
何を言っているんだこいつは。そもそもイザージには婚約者が5人もいるし、人の妻を賭ける決闘だなんて聞いたことがない。決闘自体は貴族の間で時々行われることのあるものだが、妻を賭けてのものは行われたことはない。それに決闘には対等と思えるものを賭けなければいけないのだ。
「では、お断りします。」
「は?何を言ってるんだお前は。」
「それはこちらのセリフです。そもそもリアに見合うものがあるはずがないでしょう。」
「あなた・・・。」
「勿論決闘なんかするわけないよ。」
今俺とリアの気分はうなぎ登りに高まっているだろう。
だが、イザージは明らかに気分を悪くしている。それもそうだろう目の前のカップルがイチャイチャしていたら非リア充は腹を立てるのと同じだ。
「ならお互いの妻を賭けて決闘だ。」
「断ります。」
イザージがここまで粘るほどリアは可愛いのだ。そして性格はよく、魔法も一流と来れば誰しも彼女との結婚を望むことだろう。
「もう、用事もないようなので失礼しますね。」
「待て!お前が決闘を受けないのならばお前と親しかった家来を全員クビにするぞ。」
「おい、イザージいい加減にしろ。」
「兄さんは黙っててくれこれは男と男の問題だ。」
「男と男の問題というわりには他の人を巻き込むんですね。」
「うるせぇ!それで受けんのか受けねぇのかどっちだ!」
イザージが目を充血させて俺のことをにらんできている。こんなに睨まれる覚えはないのだが。
「なら・・・受けます。」
「あなた。本当にいいんですか?」
「ああ。ここの家来たちには世話になったしね。」
「言ったな。なら明日の葬儀の後に中庭にこい。」
「え!明日ですか。」
「ああ明日だ。」
明日の終わった後ということはまだ葬儀に参加している貴族もいるはずだ。多分俺を笑いものにでもしたいのだろう。
「分かりました。」