2話 親父が死んだそうです
「さてレオナート、まだこちらについて一晩しか過ごしていないところ申し訳ないが一度お前の実家に戻ってくれ。」
今俺は朝食を自室で楽しみにしていたところグレアラン様から声がかかったのでグレアラン様の部屋に来ている。すると何故か実家に帰れといわれてしまった。
「理由をお聞きしてもいいでしょうか。」
「勿論だ。お前の父親が死んだそうだ。」
「それは本当ですか?」
俺は悲しくはない。これは強がりでもなんでもない。何故なら最後に話したのが2年前だし、いつも兄弟から虐められているのをみても無視され続けたからだ。
「ああ。朝早くに手紙が届いた。」
「そうですか・・・。」
「泣いてもいいんだぞ?」
「御冗談を。」
グレアラン様は俺の置かれていた境遇を知っているために俺の心情をはっきりと把握しているようだ。
「それで兄弟はなんといってきましたか?」
「この手紙を読んでくれ。その方が速い。」
「では、失礼して。」
グレアラン様から渡された手紙に書かれていた内容を簡単にまとめるとこんな感じだ。
・父が死んだため葬儀に俺も参加するように
・その際俺の奥さんつまりリアもつれてくるように
・その代わりに香典、兄弟なのだから金を沢山出せよということだ
「すみません。兄弟が迷惑をかけて。」
この場合の兄弟がかけた迷惑というのは寄付金を高くしろという命令だ。具体的な金額が書いてないだけにこちらから意図的に少なくすることもできるが、それをすると甘く見られる。逆に多く払い過ぎると何かある度にこちらに頼ってくることになる。
「気にするな。金に関しては俺が用意しておく。この家に来るときに貰った支度金はもうないだろう?」
「いえ、そもそも支度金を貰っていません。」
「おい、じゃあどうやってこの家まで来たんだ?」
「親しかった家来たちが俺の知らないところで金を集めていたようでそれを貰いました。」
「そうか。まぁいい。お前には朝食を取ったらリアと一緒に出てもらう。」
「そんなに早くですか?」
ここは辺境とはいっても足の速い馬に馬車を引かせれば少なくとも20日あればつく場所に位置している。
「ああ、偶然にも葬儀にギリギリ間に合うかどうかのタイミングに手紙が届いたんでな。」
明らかに兄弟の仕業である。この世界における葬儀に遅れるとその分金を払わなければいけない。これは死体の保存を行っている魔道具の使用料だ。
「本当にすみません。」
「いい。それよりも速く支度をしてこい。」
「はい。失礼しました。」