白の少女
歩道橋で白い少女を見た。
透き通った、少女。
光を飲み込んでしまうような、淡い影を持った白いはだ。
そのはだが見えるような、透けるような、ふわりとした生地をいくつも重ねた、白いワンピース。
それが彼女を構成する全て。
私にはそう見えた。
手すりに両腕をのせて道路を眺める少女。
彼女はこれから、どこかへ向かうのだろう。
たそがれている少女の姿を見ているのに、なぜかそう思った。
どこかへ飛んでいきそうだ。
ふらりと、ゆったりと、弾むように、のらりと。
そうか、綿毛だ。
何かがストンとはまった気がした。
風が吹いてきて、彼女は歩き出す。
彼女は振り返って私を見た。
笑った、ように見えた。
そして飛んでいく。
その様子を、行先を、ずっと見ていたかったが、すぐに見失ってしまった。
空へと飛んでいってしまった。
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白いワンピースを着て外に出る。
なにをするでもなく、足の赴くままに。
白を着ると、赦された気がする。
そして何もかも無くなったように感じる。
初期状態まで消されたような。
私の目に映るものは全て、初めてで、新しく、綺麗で、美しく、奇妙で、素晴らしいのだ。
高いところから眼下の道を眺めていた。
黒の塊がひっきりなしに通っている。
楽しい、と思った。
例えば、ここへ飛び込んだらどうなるのだろうか。
もっと楽しくなるだろうか?
全て消えてしまえるだろうか?
行ってみようかしら。
なんとなく、飛んでみようか。
ふと、振り返ると男の人がこっちを見ていた。
やっぱり行ってみよう。
私は飛んだ、ふわりと。