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短編集

白の少女

作者: 宛路マリ



歩道橋で白い少女を見た。

透き通った、少女。

光を飲み込んでしまうような、淡い影を持った白いはだ。

そのはだが見えるような、透けるような、ふわりとした生地をいくつも重ねた、白いワンピース。

それが彼女を構成する全て。

私にはそう見えた。


手すりに両腕をのせて道路を眺める少女。

彼女はこれから、どこかへ向かうのだろう。

たそがれている少女の姿を見ているのに、なぜかそう思った。

どこかへ飛んでいきそうだ。

ふらりと、ゆったりと、弾むように、のらりと。


そうか、綿毛だ。


何かがストンとはまった気がした。


風が吹いてきて、彼女は歩き出す。

彼女は振り返って私を見た。

笑った、ように見えた。

そして飛んでいく。

その様子を、行先を、ずっと見ていたかったが、すぐに見失ってしまった。

空へと飛んでいってしまった。


......................................................


白いワンピースを着て外に出る。

なにをするでもなく、足の赴くままに。

白を着ると、赦された気がする。

そして何もかも無くなったように感じる。

初期状態まで消されたような。

私の目に映るものは全て、初めてで、新しく、綺麗で、美しく、奇妙で、素晴らしいのだ。


高いところから眼下の道を眺めていた。

黒の塊がひっきりなしに通っている。

楽しい、と思った。

例えば、ここへ飛び込んだらどうなるのだろうか。

もっと楽しくなるだろうか?

全て消えてしまえるだろうか?






行ってみようかしら。

なんとなく、飛んでみようか。




ふと、振り返ると男の人がこっちを見ていた。


やっぱり行ってみよう。


私は飛んだ、ふわりと。


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